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ライゼン通りの錬金術師さん5 ~黒の集団の襲来~
九章 不安な夏祭り 後編
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王宮へとやって来た三人は演習場へと向かっていた。
「ソフィー」
「あ、アル」
声をかけられ振り返るとアルフォンスが立っていてソフィアは笑顔で近寄る。
「保護者同伴でデートか?」
「ち、違うわよ。ハンスさんとはお友達」
三人の姿を見た彼女が笑顔で冷やかすとソフィアは慌てて否定する。
「否定するところを見ると怪しいがな」
「保護者同伴か。うん、うん。アルは分ってるね~」
「もう、ポルトも茶化さないの」
疑ってかかるアルフォンスへとポルトが力強く頷き答えた。その様子に彼女は少し怒って注意する。
「冗談だ。それよりお祭りを楽しんでいるみたいだな」
「えぇ。これから剣舞を見に行くところなの」
「アルも一緒に行かない?」
彼女の言葉にソフィアとポルトがそれぞれ話した。
「そうしたいところだがこれから国王陛下直々に接待してくれてお祭りを見聞しに行くところなんだ」
「そっか、国からの使者としてのお仕事があるものね。分かったわ」
アルフォンスの言葉に彼女は少し残念そうにしながらも頷く。
「それじゃあそろそろ行かないと。じゃあな」
「ソフィー今の人は一体?」
彼女が言うと立ち去っていく。その背中を見詰めながらハンスが尋ねた。
「アルはねオルドーラで働いていた頃の同僚なの」
「心配しなくてもアルは女の子だから大丈夫だよ」
「別に気になんかしていません!」
ソフィアの言葉に続けてポルトがにこりと笑い話す。彼が少し語尾を強めて言い切った。
「何の話?」
「何でもありませんよ。それよりそろそろ行かないと剣舞が始まってしまいますよ」
不思議がる彼女へと気にするなと言いながら先を促す。
そうしてやって来た演習場の閲覧席は既に人で一杯になっていた。
「凄い人……」
「座るところがあるかな?」
驚くソフィアにポルトが辺りを見回しながら呟く。
「お、三人とも見に来てくれたんだな」
「いや~。嬉しいですね」
「レイヴィンさん、ディッドさん」
声が聞こえそちらを見るとレイヴィンとディッドがいてソフィアは驚く。
「隊長達どうしてここに? 剣舞をするんだろう」
「剣舞中全ての閲覧席からちゃんと見えるかどうかの最終確認をしていたところだ」
「それよりもさっき見た時南側の方の客席ならまだ空いていたのでそちらに行くと良いですよ」
ポルトの質問に二人が答える。
「有難う御座います」
「あぁ、剣舞楽しみにしていていくれよ」
ソフィアがお礼を述べると隊長が笑顔でそう答えた。
南側の閲覧席は確かに空いていて三人が座ってもまだ十分に余裕があった。
「座れて良かったね」
「そうね」
「そろそろ始まりますよ」
ポルトの言葉に答えているとハンスが演習場の扉が開かれる様子を見て告げる。
「あ、隊長達発見!」
「私達といる時はいつも優しい微笑を浮かべているけれど、あんなに真剣な顔のレイヴィンさんを見るのはここくらいじゃないかしら」
「そうですね。いつもと違って真面目な顔をしています」
国王付き、王子付き、王女付きの第一部隊が先導して入場してくるとポルトがレイヴィン達を見つけて叫ぶ。
ソフィアの言葉にハンスも同意した。
そうして音楽部隊に続けて最後尾にいる旗を持った騎士達が入って来ると剣舞が始まる。
「改めて騎士団を見るとこんなに沢山の人が王宮に仕えているのかって思うと凄いことだわ」
「えぇ、これだけ沢山の騎士を見るのもこのお祭りくらいですから。騎士団にとっても市民達に安心を与えるいい機会なのでしょう」
彼女の言葉に彼が答えた。そうして剣舞は終了し閲覧席から盛大な拍手と歓声が上がる。
「すっごいかっこよかったね!」
「本当に圧巻の剣舞だったわ」
「私もあまりに凄い剣舞で興奮してしまいましたよ」
三人はそれぞれ感想を述べるとそろそろ次の場所へ移動しようと立ち上がった。
「さて、次は……」
「あ!」
ハンスがどうするか聞こうとした時ポルトが大きな声をあげる。
「如何したの?」
「見て、あそこにいるのってお姉さんが遭遇したって言う黒の集団じゃない?」
ソフィアの言葉に彼が指である方角を示し話す。
「確かにこの真夏に黒のローブ姿は怪しいですね」
「ポルト、ハンスさん。私が見張っているのでこの事をレイヴィンさん達に伝えてきて」
ハンスの言葉を聞きながら真剣な表情になったソフィアは話す。
「一人では危険です。私も残ります」
「いいえ。私一人なら怪しまれることはないと思うからだから二人は早くレイヴィンさん達を連れてきて」
彼のもっともな言葉に首を振って彼女は言う。
「分かりました。絶対に私達が戻って来るまでここを動かないでくださいね」
「それじゃあ行ってくるよ」
ハンスが折れて頷くとポルトと一緒にレイヴィン達の下へと向かった。
「あ、どこかに行っちゃう。でもここを動くわけには……っぅ」
黒いローブの人物がどこかへと移動する様子にソフィアはハンスとの約束を守るかどうか悩んだが後を追いかける。
一体夏祭りの日に何をしようとしているのか分からないが兎に角相手を見失わないように必死に走っていった。
「ソフィー」
「あ、アル」
声をかけられ振り返るとアルフォンスが立っていてソフィアは笑顔で近寄る。
「保護者同伴でデートか?」
「ち、違うわよ。ハンスさんとはお友達」
三人の姿を見た彼女が笑顔で冷やかすとソフィアは慌てて否定する。
「否定するところを見ると怪しいがな」
「保護者同伴か。うん、うん。アルは分ってるね~」
「もう、ポルトも茶化さないの」
疑ってかかるアルフォンスへとポルトが力強く頷き答えた。その様子に彼女は少し怒って注意する。
「冗談だ。それよりお祭りを楽しんでいるみたいだな」
「えぇ。これから剣舞を見に行くところなの」
「アルも一緒に行かない?」
彼女の言葉にソフィアとポルトがそれぞれ話した。
「そうしたいところだがこれから国王陛下直々に接待してくれてお祭りを見聞しに行くところなんだ」
「そっか、国からの使者としてのお仕事があるものね。分かったわ」
アルフォンスの言葉に彼女は少し残念そうにしながらも頷く。
「それじゃあそろそろ行かないと。じゃあな」
「ソフィー今の人は一体?」
彼女が言うと立ち去っていく。その背中を見詰めながらハンスが尋ねた。
「アルはねオルドーラで働いていた頃の同僚なの」
「心配しなくてもアルは女の子だから大丈夫だよ」
「別に気になんかしていません!」
ソフィアの言葉に続けてポルトがにこりと笑い話す。彼が少し語尾を強めて言い切った。
「何の話?」
「何でもありませんよ。それよりそろそろ行かないと剣舞が始まってしまいますよ」
不思議がる彼女へと気にするなと言いながら先を促す。
そうしてやって来た演習場の閲覧席は既に人で一杯になっていた。
「凄い人……」
「座るところがあるかな?」
驚くソフィアにポルトが辺りを見回しながら呟く。
「お、三人とも見に来てくれたんだな」
「いや~。嬉しいですね」
「レイヴィンさん、ディッドさん」
声が聞こえそちらを見るとレイヴィンとディッドがいてソフィアは驚く。
「隊長達どうしてここに? 剣舞をするんだろう」
「剣舞中全ての閲覧席からちゃんと見えるかどうかの最終確認をしていたところだ」
「それよりもさっき見た時南側の方の客席ならまだ空いていたのでそちらに行くと良いですよ」
ポルトの質問に二人が答える。
「有難う御座います」
「あぁ、剣舞楽しみにしていていくれよ」
ソフィアがお礼を述べると隊長が笑顔でそう答えた。
南側の閲覧席は確かに空いていて三人が座ってもまだ十分に余裕があった。
「座れて良かったね」
「そうね」
「そろそろ始まりますよ」
ポルトの言葉に答えているとハンスが演習場の扉が開かれる様子を見て告げる。
「あ、隊長達発見!」
「私達といる時はいつも優しい微笑を浮かべているけれど、あんなに真剣な顔のレイヴィンさんを見るのはここくらいじゃないかしら」
「そうですね。いつもと違って真面目な顔をしています」
国王付き、王子付き、王女付きの第一部隊が先導して入場してくるとポルトがレイヴィン達を見つけて叫ぶ。
ソフィアの言葉にハンスも同意した。
そうして音楽部隊に続けて最後尾にいる旗を持った騎士達が入って来ると剣舞が始まる。
「改めて騎士団を見るとこんなに沢山の人が王宮に仕えているのかって思うと凄いことだわ」
「えぇ、これだけ沢山の騎士を見るのもこのお祭りくらいですから。騎士団にとっても市民達に安心を与えるいい機会なのでしょう」
彼女の言葉に彼が答えた。そうして剣舞は終了し閲覧席から盛大な拍手と歓声が上がる。
「すっごいかっこよかったね!」
「本当に圧巻の剣舞だったわ」
「私もあまりに凄い剣舞で興奮してしまいましたよ」
三人はそれぞれ感想を述べるとそろそろ次の場所へ移動しようと立ち上がった。
「さて、次は……」
「あ!」
ハンスがどうするか聞こうとした時ポルトが大きな声をあげる。
「如何したの?」
「見て、あそこにいるのってお姉さんが遭遇したって言う黒の集団じゃない?」
ソフィアの言葉に彼が指である方角を示し話す。
「確かにこの真夏に黒のローブ姿は怪しいですね」
「ポルト、ハンスさん。私が見張っているのでこの事をレイヴィンさん達に伝えてきて」
ハンスの言葉を聞きながら真剣な表情になったソフィアは話す。
「一人では危険です。私も残ります」
「いいえ。私一人なら怪しまれることはないと思うからだから二人は早くレイヴィンさん達を連れてきて」
彼のもっともな言葉に首を振って彼女は言う。
「分かりました。絶対に私達が戻って来るまでここを動かないでくださいね」
「それじゃあ行ってくるよ」
ハンスが折れて頷くとポルトと一緒にレイヴィン達の下へと向かった。
「あ、どこかに行っちゃう。でもここを動くわけには……っぅ」
黒いローブの人物がどこかへと移動する様子にソフィアはハンスとの約束を守るかどうか悩んだが後を追いかける。
一体夏祭りの日に何をしようとしているのか分からないが兎に角相手を見失わないように必死に走っていった。
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