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ライゼン通りの錬金術師さん5 ~黒の集団の襲来~
三章 国からの依頼
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これはいつもと変わらない午後の一時を過ごしていた時の事である。
「邪魔するぜ」
「隊長。如何したの?」
いつもと違って真面目な雰囲気のレイヴィンがやって来てその様子にポルトが首をかしげる。
「ソフィー。ちょっといいかな」
「えぇ。何かしら」
彼の言葉に答える事無くソフィアへと尋ねる隊長へと彼女も不思議に思いながらも返事をした。
「国王様からの依頼を預かって来た」
「それはとても重要な依頼なのかしら」
レイヴィンの言動にただ事ではないと思ったソフィアも真剣な顔をして問いかける。
「あぁ。国からの依頼だと思ってくれ」
「それで、どんな内容なの」
頷く隊長へと彼女は先を促す。
「……悪魔のペンダントの件は覚えているか」
「ハンスさんが謎の商人から買ったって言うあのペンダントの事よね。えぇ。覚えているわ」
レイヴィンの言葉に小さく頷くと続きを聞くために黙る。
「俺は独自でその悪魔のペンダントの出どころについて調べていたんだ。そして調べていくうちにある大きな組織に繫がった」
「組織?」
隊長の話にポルトが首をかしげた。
「ここ数年前から問題視されていた組織だ。聞いた話だとどこの国にも属さない自由の集団だと自分達で言っているらしい。その集団は自由という文字を掲げていろんな国で好き勝手に商売をしては問題を起こしているそうだ。それでこの周辺の国々でも危険な組織として指名手配されている」
「そんなに危険な存在なの?」
レイヴィンの話を聞いて険しい顔になったソフィアは尋ねる。
「指名手配をしてはいるが奴等どこの国にも属さないから法でも裁けないって事で好き勝手に暴れているんだ」
「なんて奴等だ」
隊長の言葉にポルトが激怒した。
「そいつら何とかならないの?」
「黒の集団自体を叩くのは難しいが、奴等は普段仮の姿で日常生活を送っているらしい。学者とか商人とか肩書をつけてな。そして仮の姿で生活するという事は当然住民登録票だってある。だからその辺りから調べて組織を束ねるリーダーを捕まえようって話になったんだ」
「今の話と私への依頼がどう関係あるの」
彼の言葉にレイヴィンが説明する。話を聞き終えた彼女は尋ねるように言う。
「そこで、悪魔のペンダントの件に関わったソフィア達にも協力してもらおうという事で依頼を頼まれたんだ。奴等を捕まえる時に抵抗されても錬金術のアイテムがあればなんとかなるかもしれないからな」
「具体的にどういう類の物を作ればいいのかしら」
「捕まえるなら呪縛系のアイテムとか、探知アイテムとか?」
隊長の話にソフィアは呟く。ポルトも一緒になって考えながら首を傾げた。
「まぁ、その辺りは近いうちに考えてまた納品してもらう品を作ってもらう予定だからあんまり心配しなくていいぞ」
「一つ確認するのだけれど、この依頼は国家秘密だと思っていいのかしら」
レイヴィンへと彼女は考えていたことを聞く。
「ま、そうだな。ソフィア達は関わる事になったが基本は王宮の外に漏らさない話しだから。二人もそのつもりで携わってもらいたい」
「分かったわ」
「了解」
小さく頷く隊長の様子に二人も神妙な面持ちで返事をした。
「それじゃあ、俺はこれで失礼する。二人ともくれぐれも内密に頼むぞ」
「分かっているわ」
「おいらだって話したりしないよ」
「あぁ、信じてるぜ。それじぁあな」
話を終えるとレイヴィンが帰って行き残った二人は顔を見合わせる。
「何か、とんでもない事になってしまったね」
「そうね。国家秘密級の依頼。無事に果たせるかしら」
ポルトの言葉にソフィアも頷く。
「お姉さんの腕なら問題ないよ。だけどおいらちょっとだけ心配」
「何が?」
彼が不安そうな顔をするのを見て彼女は首をかしげる。
「だって、黒の集団って奴等と戦うんだろう。こんなのおいら昔読んだ本の中でしか見た事ないよ。スパイかおいらがスパイになって組織をめためたのぎちぎちにしてやるのか」
「スパイもめためたもしなくていいから。私達はあくまでサポートよ。錬金術のアイテムを作ってそれを国に納品するだけなんだからね」
始めのうちは不安そうに話していたポルトだが後半から何故かうきうきした様子で語るそんな彼へとソフィアは止めるように口を開く。
「え~。コードネーム甘いもの大好きに任せてよ~」
「そんなコードネーム却下です」
唇を尖らせ不満げに話すポルトへと彼女はずばりと斬り捨てる。
「半分は冗談だけどねソフィー。これから何が起こるか分からないから気をつけようね」
「半分てことはもう半分は本気だったのね……」
彼の言葉に盛大に溜息を零すとこれからどうなるのだろうと少し不安になったソフィアであった。
「邪魔するぜ」
「隊長。如何したの?」
いつもと違って真面目な雰囲気のレイヴィンがやって来てその様子にポルトが首をかしげる。
「ソフィー。ちょっといいかな」
「えぇ。何かしら」
彼の言葉に答える事無くソフィアへと尋ねる隊長へと彼女も不思議に思いながらも返事をした。
「国王様からの依頼を預かって来た」
「それはとても重要な依頼なのかしら」
レイヴィンの言動にただ事ではないと思ったソフィアも真剣な顔をして問いかける。
「あぁ。国からの依頼だと思ってくれ」
「それで、どんな内容なの」
頷く隊長へと彼女は先を促す。
「……悪魔のペンダントの件は覚えているか」
「ハンスさんが謎の商人から買ったって言うあのペンダントの事よね。えぇ。覚えているわ」
レイヴィンの言葉に小さく頷くと続きを聞くために黙る。
「俺は独自でその悪魔のペンダントの出どころについて調べていたんだ。そして調べていくうちにある大きな組織に繫がった」
「組織?」
隊長の話にポルトが首をかしげた。
「ここ数年前から問題視されていた組織だ。聞いた話だとどこの国にも属さない自由の集団だと自分達で言っているらしい。その集団は自由という文字を掲げていろんな国で好き勝手に商売をしては問題を起こしているそうだ。それでこの周辺の国々でも危険な組織として指名手配されている」
「そんなに危険な存在なの?」
レイヴィンの話を聞いて険しい顔になったソフィアは尋ねる。
「指名手配をしてはいるが奴等どこの国にも属さないから法でも裁けないって事で好き勝手に暴れているんだ」
「なんて奴等だ」
隊長の言葉にポルトが激怒した。
「そいつら何とかならないの?」
「黒の集団自体を叩くのは難しいが、奴等は普段仮の姿で日常生活を送っているらしい。学者とか商人とか肩書をつけてな。そして仮の姿で生活するという事は当然住民登録票だってある。だからその辺りから調べて組織を束ねるリーダーを捕まえようって話になったんだ」
「今の話と私への依頼がどう関係あるの」
彼の言葉にレイヴィンが説明する。話を聞き終えた彼女は尋ねるように言う。
「そこで、悪魔のペンダントの件に関わったソフィア達にも協力してもらおうという事で依頼を頼まれたんだ。奴等を捕まえる時に抵抗されても錬金術のアイテムがあればなんとかなるかもしれないからな」
「具体的にどういう類の物を作ればいいのかしら」
「捕まえるなら呪縛系のアイテムとか、探知アイテムとか?」
隊長の話にソフィアは呟く。ポルトも一緒になって考えながら首を傾げた。
「まぁ、その辺りは近いうちに考えてまた納品してもらう品を作ってもらう予定だからあんまり心配しなくていいぞ」
「一つ確認するのだけれど、この依頼は国家秘密だと思っていいのかしら」
レイヴィンへと彼女は考えていたことを聞く。
「ま、そうだな。ソフィア達は関わる事になったが基本は王宮の外に漏らさない話しだから。二人もそのつもりで携わってもらいたい」
「分かったわ」
「了解」
小さく頷く隊長の様子に二人も神妙な面持ちで返事をした。
「それじゃあ、俺はこれで失礼する。二人ともくれぐれも内密に頼むぞ」
「分かっているわ」
「おいらだって話したりしないよ」
「あぁ、信じてるぜ。それじぁあな」
話を終えるとレイヴィンが帰って行き残った二人は顔を見合わせる。
「何か、とんでもない事になってしまったね」
「そうね。国家秘密級の依頼。無事に果たせるかしら」
ポルトの言葉にソフィアも頷く。
「お姉さんの腕なら問題ないよ。だけどおいらちょっとだけ心配」
「何が?」
彼が不安そうな顔をするのを見て彼女は首をかしげる。
「だって、黒の集団って奴等と戦うんだろう。こんなのおいら昔読んだ本の中でしか見た事ないよ。スパイかおいらがスパイになって組織をめためたのぎちぎちにしてやるのか」
「スパイもめためたもしなくていいから。私達はあくまでサポートよ。錬金術のアイテムを作ってそれを国に納品するだけなんだからね」
始めのうちは不安そうに話していたポルトだが後半から何故かうきうきした様子で語るそんな彼へとソフィアは止めるように口を開く。
「え~。コードネーム甘いもの大好きに任せてよ~」
「そんなコードネーム却下です」
唇を尖らせ不満げに話すポルトへと彼女はずばりと斬り捨てる。
「半分は冗談だけどねソフィー。これから何が起こるか分からないから気をつけようね」
「半分てことはもう半分は本気だったのね……」
彼の言葉に盛大に溜息を零すとこれからどうなるのだろうと少し不安になったソフィアであった。
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