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ライゼン通りの錬金術師さん2 ~人情物語~

七章 伝説の冒険者

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 翌日工房の扉にかけられた札をオープンに変えて部屋へと戻ってきた瞬間に、閉めたばかりのそれが開かれ誰かが入って来る。

「昨日頼んでいた回復薬もうできてるんでしょ。見せてよ」

「は、はい。今すぐにお持ち致します」

そこには昨日のお客が立っており、ソフィアは慌てて棚の中に置いておいた回復薬を持ってきた。

「こちらが、ご依頼の品になります」

「……ふ~ん。じゃあこれ貰っていくよ」

商品を見せるとお客はそう言ってお金を取り出し差し出してくる。

「はい。それではこちらお包み致しますね」

「消耗品だからこのままでいいよ。……」

(何だろう。じ~っとみられている気がする……)

お金を受け取るとそう伝えた。その言葉にお客は断ると無言になり双眸を彼女へと向け続ける。居心地の悪さを感じながらソフィアは冷や汗を流した。

「おはよう。ソフィーさんこの前は有り難う。貴女がカスタマイズしてくれた剣だけれど……っ! セツナさん?」

「お知り合いですか?」

そこに扉を開けてリゼットが入って来ると先客の姿に驚いて目を見開く。ソフィアは助かったと思いながら問いかけた。

「え、えぇ。冒険者の中で彼女の事を知らない人はおそらくいないと思うわ。この方は伝説の冒険者と呼ばれているセツナさんよ」

「伝説の冒険者?」

彼女がお客の姿に緊張した様子で戸惑いながらも説明してくれるが、いまいち理解できなかったソフィアは首をひねる。

「伝説上の生き物とされる竜や鬼といった存在と互角以上に渡り合い、その首をとった唯一の人物として有名な冒険者なのよ」

「り、竜や鬼と渡り合った!?」

リゼットの言葉に彼女は度肝を抜かれて冷や汗を流し呆気にとられた。

「そんな風に噂されているとはね。まぁ、気にはしないけど……自己紹介が遅れたね。僕はセツナ。旅の途中でこの町に立ち寄ったんだけれど、気に入ったからしばらくの間はここに滞在するから、また君のお店も利用させてもらうかもしれないからよろしく」

「は、はい。こちらこそご贔屓にしてくださると有り難いです」

セツナと名乗った人物の言葉に慌てて返事をするとお客がまだ何か言いたげにしていて目を瞬く。

「君は錬金術師として町の外にいくこともあるんでしょ。滞在している間であれば僕も手伝ってやってもいいよ。いつもゲートの前にいるから護衛が必要な時は声をかけて」

「は、はい。有難う御座います」

「じゃあね」

淡々とした口調で語られた言葉にソフィアは瞬きをした後頷く。セツナが帰っていくとリゼットが彼女の側へと近寄って来る。

「セツナさんに護衛してもらえるなんて凄い幸運ね」

「私よりも年下だと思うけれど、凄い人なんですね」

興奮した様子で彼女が話しかけてくるとソフィアは呆けた顔で呟く。

「セツナさんほど凄い冒険者はこのコーディル王国中……いいえ、世界中を探したって見つかりっこないわ。……そうだ。あまりの事に気が動転しすぎていて忘れていたけれど、この前カスタマイズしてもらった剣だけれどね。凄く使いやすいわ。素敵な剣に仕上げてくれて有難う。それを伝えたくて今日はお邪魔したの」

「いいえ。リゼットさんに喜んで頂けて私も嬉しいです」

話に区切りがつくとリゼットがそう言って微笑む。その言葉に彼女も嬉しくなって笑顔で答える。

「また何かあった時はお願いするわ」

「はい。またのご依頼お待ちいたしております」

二人は微笑み合い話し終えると彼女は店を出ていきソフィアも工房の奥へと向かった。

「と、いう事があったのよ」

「ふ~ん。おいらが朝食の準備をしている間にそんなドラマが展開されていたんだね。竜や鬼を倒しちゃう伝説の冒険者かぁ~。凄いなぁ。おいらも会ってみたかったよ」

朝食を食べながら彼女が先ほどあった出来事を伝えるとポルトが羨ましいといいたげに語る。

「しばらくの間はこの町にいるみたいだから、また会えると思うわよ」

「竜や鬼と戦った時のお話とか聞いてみたいな。……次に来た時はおいらにも教えてね」

「えぇ。勿論よ」

ソフィアの言葉に彼がお願いすると彼女はにこりと笑い頷く。

「それと、リゼットあの剣を喜んでくれたみたいでよかったね」

「わざわざお礼を言いに来てくれるほど気に入ってもらえたみたいで良かったわ」

ポルトの言葉に彼女も嬉しそうに微笑む。

「さっすがは、この国で唯一の錬金術師。お姉さんは凄いや」

「そんな、褒めすぎよ。私なんてまだまだ……私の腕がいいのかだって分からないのに」

彼の言葉に慌てて答えると俯く。

「そんな事ないよ。ソフィーの錬金術はこの町の人達をしっかりと助けているんだから。もっと自信を持って」

「そうだと良いけれど」

ポルトが胸を張れといいたげに語るもソフィアは俯いたまま呟いた。

「そうだよ。おいらお姉さんの弟子になって本当に良かったって思っているんだからね。ソフィーは尊敬できる師匠だよ。あれ、なんて言ったかなぁ……うぅんと。あ、そうだ。知恵ある鷲は爪をかくすってやつ?」

「それ間違って覚えちゃってるから。能ある鷹は爪を隠すよ」

彼の言葉の誤りに彼女は訂正するように話す。

「そう、それ。お姉さんはまさにその通りなんだよ」

「もう。褒めても何も出ませんからね」

ポルトの言葉に照れ隠しのように言うと視線を反らした。

どうやら二人で暮らしているうちにお互いが掛け替えのない家族のような存在となり始めているようである。
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