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ライゼン通りの錬金術師さん2 ~人情物語~
四章 セイレーンの森
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二日がかりでセイレーンの森までやって来たソフィア達は早速錬金術に使えそうな素材を探す。
「ねぇ、この木の実とかは使えるかしら?」
「どれどれ……あぁ。ククルコッギの実ね。これは錬金術でもよく使うんです」
リーナが何かを見つけて声をかけてくるので、そちらへと近寄り樹の実を見た彼女がそう言った。
「ソフィーさん。この木の葉とかはどうですか?」
「ルースギの葉ね。それも使えるわ」
今度はローリエが何かを見つけたようでソフィアを呼ぶ。その声に急いで駆け付けた彼女が笑顔で答える。
「これは……きゃっ。けほ、けほ……」
「あぁ……それは爆弾茸っていって。触ると胞子を吹き出すキノコなのよ」
ユリアが見つけたキノコに手を触れた途端粉が噴き出てむせ返ってしまう。その様子にソフィアが苦笑して説明した。
「あの……ちなみに爆弾茸の爆弾とはどこから来ているのですか?」
「これはね、摘み取ると数秒後に爆発するの。自爆茸とも呼ばれているわ」
「「「……」」」
ユリアが恐る恐る問いかけると彼女が答える。その言葉に三人はさっと爆弾茸から離れた。
そうしてしばらく採取をしているとふと辺りが急に静かになる。
「あれ、さっきまで鳥や虫の鳴き声が聞こえていたのに……」
「如何したのかしら?」
急に無音になった空間にリーナが首をひねり話すと、ローリエも不思議そうに呟く。
【ぐるるるぅ……】
「「「「!?」」」」
遠くから地の底から木霊するような低い唸り声が聞こえ四人の間に緊張が走る。
「今、何か聞こえた?」
「き、気のせいよね。この辺りには危険な動物も化物もいないはず……」
【ぐぅおおおぉぉっ!】
「「「「!?」」」」
ソフィアが不安そうな顔で言うとリーナがそう言いかけて聞こえてきた声に言葉を飲み込む。
「気のせいなんかじゃない。何かがこっちに近づいてきている?」
ソフィアの言葉に三人はいつでも戦えるようにと各々身構えた。
【ぐぅあああっ!!】
「っ……り、り、竜!?」
「この森の主? それとも……」
飛来音が聞こえて来たかと思うと光のごとき速さで紫色の竜がこちらへと向かって突っ込んでくる様子にソフィアは呆気にとられた顔で呟く。リーナも混乱する頭で何とか言葉を紡いだ。
「これは、逃げた方がいいのでは?」
「そうよね。さすがに冒険者様も騎士様もいらっしゃらない状況で対峙するのは危険すぎるわ」
ローリエのもっともな判断にユリアも同意する。
「逃げるよ……えぃ!」
【ぐるぁ?】
突っ込んでくる竜へと目くらましの為光球を投げつけると、陽の光よりも眩しい白く痛い輝きが相手を錯乱させた。
その隙に彼女達はなるべく遠くへと逃げ出す。
「はぁ、はぁ……はぁ、はぁ」
「わ、私もう走れません……」
ソフィア達は息を切らせながら走り続けていたが、ローリエがダウンしてしまった為立ち止まる。
「追いかけてきていないわよね?」
「でも、どうしてこんなところに竜が……」
「兎に角皆無事でよかったです」
リーナが背後を振り返り確認する横でソフィアは呟く。ユリアが胸に手を当て安堵の吐息を出した。
「帰ったらレイヴィンさんに話しておかないと」
「それなら武器屋さんにもね」
彼女の言葉にリーナが口を開く。
「武器屋さん?」
「えぇ。あそこの店主は冒険者に仕事を紹介しているのよ。だからこの事を話せば討伐隊を組んでくれると思うわ」
「騎士様か冒険者様かどちらがさきに竜を倒すかでまたもめそうだけれどね」
ソフィアは首をひねって不思議そうにすると彼女が説明してくれる。ローリエが苦笑を零した。
「騎士様と冒険者様はそれぞれの組織に属しているのです。騎士団は王宮に、冒険者は町の武器屋兼冒険者の宿に」
「そうだったんだ。まだまだ自分が住んでいる町の事知らないことだらけだわ」
ユリアの言葉に呆気にとられた顔で頷く。
「ソフィーはまだ来たばかりだもの、知らなくて当然よ。そのうちなんでも分かるようになるわ」
「そっか。早くコーディル王国の住人ですって胸を張って言えるくらい物知りになりたいな」
リーナの言葉に納得するとにこりと笑った。
「それで、これからどうするの?」
「竜がいるんじゃまたいつ襲われるか分かった物じゃないし、セイレーンの森の探索はここまでね。帰りながらセイレルヤ高原に行きましょう」
彼女の言葉にソフィアは答えると町に向けて帰りながらセイレルヤ高原へと寄り道していった。
「ねぇ、この木の実とかは使えるかしら?」
「どれどれ……あぁ。ククルコッギの実ね。これは錬金術でもよく使うんです」
リーナが何かを見つけて声をかけてくるので、そちらへと近寄り樹の実を見た彼女がそう言った。
「ソフィーさん。この木の葉とかはどうですか?」
「ルースギの葉ね。それも使えるわ」
今度はローリエが何かを見つけたようでソフィアを呼ぶ。その声に急いで駆け付けた彼女が笑顔で答える。
「これは……きゃっ。けほ、けほ……」
「あぁ……それは爆弾茸っていって。触ると胞子を吹き出すキノコなのよ」
ユリアが見つけたキノコに手を触れた途端粉が噴き出てむせ返ってしまう。その様子にソフィアが苦笑して説明した。
「あの……ちなみに爆弾茸の爆弾とはどこから来ているのですか?」
「これはね、摘み取ると数秒後に爆発するの。自爆茸とも呼ばれているわ」
「「「……」」」
ユリアが恐る恐る問いかけると彼女が答える。その言葉に三人はさっと爆弾茸から離れた。
そうしてしばらく採取をしているとふと辺りが急に静かになる。
「あれ、さっきまで鳥や虫の鳴き声が聞こえていたのに……」
「如何したのかしら?」
急に無音になった空間にリーナが首をひねり話すと、ローリエも不思議そうに呟く。
【ぐるるるぅ……】
「「「「!?」」」」
遠くから地の底から木霊するような低い唸り声が聞こえ四人の間に緊張が走る。
「今、何か聞こえた?」
「き、気のせいよね。この辺りには危険な動物も化物もいないはず……」
【ぐぅおおおぉぉっ!】
「「「「!?」」」」
ソフィアが不安そうな顔で言うとリーナがそう言いかけて聞こえてきた声に言葉を飲み込む。
「気のせいなんかじゃない。何かがこっちに近づいてきている?」
ソフィアの言葉に三人はいつでも戦えるようにと各々身構えた。
【ぐぅあああっ!!】
「っ……り、り、竜!?」
「この森の主? それとも……」
飛来音が聞こえて来たかと思うと光のごとき速さで紫色の竜がこちらへと向かって突っ込んでくる様子にソフィアは呆気にとられた顔で呟く。リーナも混乱する頭で何とか言葉を紡いだ。
「これは、逃げた方がいいのでは?」
「そうよね。さすがに冒険者様も騎士様もいらっしゃらない状況で対峙するのは危険すぎるわ」
ローリエのもっともな判断にユリアも同意する。
「逃げるよ……えぃ!」
【ぐるぁ?】
突っ込んでくる竜へと目くらましの為光球を投げつけると、陽の光よりも眩しい白く痛い輝きが相手を錯乱させた。
その隙に彼女達はなるべく遠くへと逃げ出す。
「はぁ、はぁ……はぁ、はぁ」
「わ、私もう走れません……」
ソフィア達は息を切らせながら走り続けていたが、ローリエがダウンしてしまった為立ち止まる。
「追いかけてきていないわよね?」
「でも、どうしてこんなところに竜が……」
「兎に角皆無事でよかったです」
リーナが背後を振り返り確認する横でソフィアは呟く。ユリアが胸に手を当て安堵の吐息を出した。
「帰ったらレイヴィンさんに話しておかないと」
「それなら武器屋さんにもね」
彼女の言葉にリーナが口を開く。
「武器屋さん?」
「えぇ。あそこの店主は冒険者に仕事を紹介しているのよ。だからこの事を話せば討伐隊を組んでくれると思うわ」
「騎士様か冒険者様かどちらがさきに竜を倒すかでまたもめそうだけれどね」
ソフィアは首をひねって不思議そうにすると彼女が説明してくれる。ローリエが苦笑を零した。
「騎士様と冒険者様はそれぞれの組織に属しているのです。騎士団は王宮に、冒険者は町の武器屋兼冒険者の宿に」
「そうだったんだ。まだまだ自分が住んでいる町の事知らないことだらけだわ」
ユリアの言葉に呆気にとられた顔で頷く。
「ソフィーはまだ来たばかりだもの、知らなくて当然よ。そのうちなんでも分かるようになるわ」
「そっか。早くコーディル王国の住人ですって胸を張って言えるくらい物知りになりたいな」
リーナの言葉に納得するとにこりと笑った。
「それで、これからどうするの?」
「竜がいるんじゃまたいつ襲われるか分かった物じゃないし、セイレーンの森の探索はここまでね。帰りながらセイレルヤ高原に行きましょう」
彼女の言葉にソフィアは答えると町に向けて帰りながらセイレルヤ高原へと寄り道していった。
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