ライゼン通りのパン屋さん ~看板娘の日常~

水竜寺葵

文字の大きさ
上 下
11 / 77
ライゼン通りのパン屋さん ~看板娘の日常~

九章 休日の過ごし方

しおりを挟む
 今日はパン屋がお休みの日。この日ミラは上機嫌で出かける準備をしていた。

「ふんふんふ~ん♪ よし、準備できたわ」

姿見の前でくるりと一回りすると白いワンピースがふわりと舞う。

「ミラ、ベティーちゃんが迎えに来ているわよ」

「はーい」

ミランダの声に反応して玄関へと向かった。

「おはよう」

「おはよう。それじゃあ早速行きましょうか」

挨拶を交わすとベティーと並んで街を歩く。

「まずは教会広場でやっているバザーを見に行くわよ」

「えぇ。あそこにはいろんなものがあるから楽しみだわ」

彼女の言葉に返事をしながらにこりと笑う。

教会広場ではバザーをやっているためか人で賑わっていた。

「さ~て。掘り出し物を見つけるわよ」

「腕がなるわね」

ベティーが力拳を作り意気込む横でミラも笑顔で話す。

「あら、このワンピース可愛いわね」

「こっちのリボン良い色だわ」

洋服やアクセサリーの山を漁りながら二人は何かいい品はないかと探す。

そうして暫くするとお互い欲しい物を買い朝日ヶ丘テラスの方へと向かって行った。

「ここのチーズケーキやっぱり美味しいわね」

「焼き立てほやほやのチーズケーキが食べられるのもここだけだからね」

テラス席に座り注文したチーズケーキを頬張りながらミラは言う。それにベティーも相槌を打った。

「それにこのハーブティー。チーズケーキとよく合うのよね」

「そうね。優雅なティータイムだわ」

彼女の言葉にミラは返事をするとそっと視線を外へと向ける。

「あら、あんな所にお店が出来ているわ」

「え、どこどこ?」

彼女の言葉に体を傾け外へと身を乗り出しながらベティーが尋ねた。

「ほら、バーの隣よ」

「あ、本当だ。何のお店かしら」

ミラが指差し話すとようやくお店を見つけたらしい彼女が不思議そうに首をかしげる。

「行ってみましょうよ」

「そうね」

二人はお茶を楽しんでから店を出て足を進めた。

「インテリアと雑貨のお店?」

「何ですって? 雑貨屋を名乗るなんていい度胸ね。ミラ敵地視察よ。乗り込むわよ」

「え、ええっ!?」

息巻くベティーに手を引かれお店の中へと入る。

「いらっしゃいませ」

中には家具や鉢植え等の品物が並んでおりその一角に雑貨コーナーが設置されていた。

「ふん。雑貨屋を名乗る割には小さなスペースだ事」

「もう、いいじゃないの。雑貨屋の一つや二つあっても問題ないでしょ」

「うちのお店に人が来なくなったら困るのよ」

「はいはい。それなら好きなだけ視察して頂戴」

彼女の言葉に飽きれてしまったミラはそっと一歩引いて壁際でベティーが満足するのを待つ。

「ふふん。こんな小さな雑貨のコーナーだけなら家のお店がつぶれる心配はないわね。さ、ミラ行きましょう」

「ちょっと待って。その手に持っている物は?」

「て、敵地視察の証拠品よ」

「ただ単にあなたが欲しいだけでしょ」

彼女の手に握られている白いハンカチを見ながら言うとベティーが冷や汗を流しながら答えた。それに溜息を吐いてミラは呆れる。

こうして休日の日は友人と遊んで過ごすのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

偏屈な辺境伯爵のメイドに転生しましたが、前世が秋葉原ナンバーワンメイドなので問題ありません

八星 こはく
恋愛
【愛されスキルで溺愛されてみせる!伯爵×ぽんこつメイドの身分差ラブ!】 「私の可愛さで、絶対ご主人様に溺愛させてみせるんだから!」 メイドカフェ激戦区・秋葉原で人気ナンバー1を誇っていた天才メイド・長谷川 咲 しかし、ある日目が覚めると、異世界で別人になっていた! しかも、貧乏な平民の少女・アリスに生まれ変わった咲は、『使用人も怯えて逃げ出す』と噂の伯爵・ランスロットへの奉公が決まっていたのだ。 使用人としてのスキルなんて咲にはない。 でも、メイドカフェで鍛え上げた『愛され力』ならある。 そう決意し、ランスロットへ仕え始めるのだった。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

【完結】パンでパンでポン!!〜付喪神と作る美味しいパンたち〜

櫛田こころ
キャラ文芸
水乃町のパン屋『ルーブル』。 そこがあたし、水城桜乃(みずき さくの)のお家。 あたしの……大事な場所。 お父さんお母さんが、頑張ってパンを作って。たくさんのお客さん達に売っている場所。 あたしが七歳になって、お母さんが男の子を産んだの。大事な赤ちゃんだけど……お母さんがあたしに構ってくれないのが、だんだんと悲しくなって。 ある日、大っきなケンカをしちゃって。謝るのも嫌で……蔵に行ったら、出会ったの。 あたしが、保育園の時に遊んでいた……ままごとキッチン。 それが光って出会えたのが、『つくもがみ』の美濃さん。 関西弁って話し方をする女の人の見た目だけど、人間じゃないんだって。 あたしに……お父さん達ががんばって作っている『パン』がどれくらい大変なのかを……ままごとキッチンを使って教えてくれることになったの!!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

私のアレに値が付いた!?

ネコヅキ
ファンタジー
 もしも、金のタマゴを産み落としたなら――  鮎沢佳奈は二十歳の大学生。ある日突然死んでしまった彼女は、神様の代行者を名乗る青年に異世界へと転生。という形で異世界への移住を提案され、移住を快諾した佳奈は喫茶店の看板娘である人物に助けてもらって新たな生活を始めた。  しかしその一週間後。借りたアパートの一室で、白磁の器を揺るがす事件が勃発する。振り返って見てみれば器の中で灰色の物体が鎮座し、その物体の正体を知るべく質屋に持ち込んだ事から彼女の順風満帆の歯車が狂い始める。  自身を金のタマゴを産むガチョウになぞらえ、絶対に知られてはならない秘密を一人抱え込む佳奈の運命はいかに―― ・産むのはタマゴではありません! お食事中の方はご注意下さいませ。 ・小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 ・小説家になろう様にて三十七万PVを突破。

処理中です...