僕(じゃない人)が幸せにします。

暇魷フミユキ

文字の大きさ
上 下
205 / 281
第4章

4-18コールインスコール ☆

しおりを挟む
 僕たちが乗るタクシーはアメリカンビレッジの駐車場に到着した。少し遅れて横にもタクシーが停まった。降りてきたのは新城たちだ。
 各々が運転士さんに感謝を述べた後、二班で一緒に行動することにできた。草壁は落ち着かない様子だった。

「おお、すげぇ。遊園地みたいじゃん」

 新城の言う通り、異国情緒のある建物が建ち並んでいる様子は壮観で、立ち入るだけでも料金を取れそうなほどだった。そういったテーマパークと違うのは、これらのほとんどが店として経営されている点。
 ここを時間まで見て回ろうと、建物の一つに入って少し経ったところ……。

「あ、君島くん。降ってきたみたい」
 清家さんが寄ってきて言った。

「ついに来ちゃったか。分かった、すぐ集めてホテルに戻ろう」

 まずは草壁に電話をかけた。
 しばらく呼び出し音が鳴り、声が聴こえた。

「おかけになった電話は、電波の届かない――」
 草壁ではなく、予め用意されたアナウンスの声が。

「清家さん、草壁に繋がらなかったよ……」



 電池、切れたーー!
 まじか確かに使ったわバッテリーも無いし! ……どうしよう。探すか、待つか、かな。いや~どっち?
 本当に雨すごいじゃん。

 ……寂しい。

 いやいやだめだめ! よし! 探す! まずは入った所に
「いた」

 馴染みのある声が聞こえて振り返った。
 思った通り優哉だった。

「今何をしようとしていた?」

「え? みんなを探そうとしてた!」

「胸張って言うな。余計なことしないでくれ。迷惑だから」

「う……。じゃあそう言う優哉はなんでここにいるの!?」

「君島から、集合場所に行く途中で美頼を見つけたら連れてくるように言われたから」

「やっぱり電話かけてきてたか……。ま、まあ、大丈夫だよね!」

「俺が知るか。行くぞ」

 優哉はうちの横を通り過ぎていった。こっちには見向きもせず真っ直ぐに。

 急いで振り返った。
 そして、
 咄嗟に、
 優哉の腕を掴んでいた。

 なんでそんなことをしたのか自分でも分からなかった。
 なんだろうこれ。怖い? 寂しい? 辛い? 苦しい?……何か違う。前にも似たようなことがあったような気もする。でもいつのこと?
 え……? 涙が出るほど……? ちょっと待って優哉振り返っちゃう!

「どうした?」

 良かった。優哉が振り返りきる前に拭えた。……と思う。
 ……あ、今質問されたんだった。えーと……

「バッテリー!……貸してくれる?」

「分かった」

 それから君島や新城くんたちが見えたらすぐに謝って、運転士さんに言われて買っておいた合羽を着てすぐにホテルに戻った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

幼馴染が昼食の誘いを断るので俺も一緒に登校するのを断ろうと思います

陸沢宝史
恋愛
高校生の風登は幼馴染の友之との登校を断り一人で歩きだしてしまう。友之はそれを必死に追いかけるのだが。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

処理中です...