僕(じゃない人)が幸せにします。

暇魷フミユキ

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第4章

4-16嘘吐きのきっかけと少年の素性 ☆

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「好きです付き合ってください!」

 尻上がりに大きくなっていった声で赤堀くんから言われたことを今でも覚えているという。
 それが本当に最初だったらしい。

「え? ごめんうちきみのことあんまり知らないし今は無理かな」

 当然と言えば当然の反応である。ただ真顔かつ早口で言うことはなかったと反省していた。
 そこで姿を消したわけではないのだけど、特に接点があったわけでもなかったそうだ。

 その間に赤堀くんのことを女子同士で話したことがあった。高校一年の時、僕から勉強を教わっていた草壁を含む四人組だ。

「いや怖。なんで? いつから?」「何考えてるか分かんないもんね~」「まあ美頼可愛いから仕方ないか」
 そんなことを言われた。

 そして――

「好きです、付き合ってください」

 今度は落ち着いた声で言われたという。

「やっぱり無理だよ。だって何考えているか分からなくて怖いもん」

「すみません。分かりました」

 それが最後の会話となった。翌日から学校に来なくなり、やがて転校した。その間、理由として学校に居づらさを感じたからという噂が流れたそうだ。



 草壁から一連の出来事を聴いた僕たちはその場で解散し、僕は部屋に戻ろうとしていた。

 草壁、影響されやすすぎでしょ……。

 断るときの言葉もそうだし、噂を信じた結果木庭との仲を失おうとしていたのもそう。単純に引っ越し時期が決まっていたから、焦って告白したとも考えられるだろうに。

 まあ確かに? 火の無い所に煙は立たぬと言うし、すぐに離ればなれになるのに告白したのはおかしいし、時間的に告白が本当に最後だったから自分が原因と思い込むのも無理はないけど。

 所詮は噂、中学生男子なんてそんなもん、最後だったのは……なんでだろう?
 “登校しなくなった”ということは学校に在籍はしていたということ。本当に不登校になったというのか。いや、凛紗さんのような保健室登校などのようなものも考えうる。でもなんだろうか……。

 影響されやすかろうがなんだろうが、過去に草壁に告白した人物、赤堀くんがいたと聴いたときに考えた通りなのは確かだ。その人物に纏わる出来事こそ、嘘を吐くようになり、僕たち三人が巻き込まれたきっかけということは。多分であろう誤解を解ければ良いのだけど……。

 僕は長浜との部屋を開けてもらった。

「お帰り。告白でもされた?」

「中学生みたいなこと言うじゃん。草壁が中学時代に転校した男子に会ったんだってさ。ここに泊まっていた別の高校の生徒らしい」

「それって赤堀?」

「ん? 知ってるの?」

「同じ中学だからな。そうか、高校に通っていたか」

「どんな人だった?」

「いや、わからん」

「え?」

「いわゆる“ぼっち”だったんだ。話したことはほとんどなかったし、誰かと話しているところもあまり見たことなかった。体育祭とかで一応関わりはあったけどな」

 そんな赤堀くんが草壁と接することがあって……といった感じかな。

「熱心だな。草壁の過去まで調べようとするとか」

「ん……? ああ、そういうこと。違うよ。草壁が不安に思っていたことが僕も気になったってだけ」
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