僕(じゃない人)が幸せにします。

暇魷フミユキ

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第4章

4-14気遣い ☆

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 高校から空港までは二時間半、そこからさらに空を三時間弱。

「おお。なんか違う」

 渋山高校二年一行は那覇空港に予定通り到着した。草壁の言うように、十一月にはあまり感じたことのないような湿気が漂っていた。
 僕らはここでしばらくバスの待機となった。

「こういう所で集団で待つのってちょっと嫌なんだよね」

「え? 君島にしては珍しいこと言うじゃん。待つって言ってもちょっとでしょ?」

「あ、待つこととか時間とかじゃなくて、集団で待つのが。邪魔になっていそうで。時間の関係とかがあったり当然許可は取ってあったりっていうのは分かるんだけどね」

「…………」

「草壁?」

「ごめん、大丈夫。飛行機のせいかな、ちょっとぼんやりしちゃった」

「そっか。草壁丈夫そうに見えて意外と弱いところもあるから気を付けて」

「はあ……。うん。ありがと」

 その後に何か続けて言ったように見えたけど、丁度先生が動き始めるように指示する声と重なって聴こえなかった。
「ごめん、何か言った?」

「あ……えっと、頭悪くて体弱いとか何も良いところないよね!」

「え? 料理ができるっていうのは駄目なの?」

 草壁は僕の肩に無言で拳を振り下ろした。リュックのベルトで緩衝できないほどの威力だった。

「あと力は強いです……」

「飲食店の仕事は重労働ですから」

 なるほど。料理のところは確かにたらし発言だったかもね。



 君島はずっと何言ってんの!? 他人気使いすぎ! 体が弱いとか言われてから前に倒れたこと思い出したわ! それで自然に良いところ言うとか何!? も~本っ当に!

「――い。美頼?」

 隣に座っていた麗奈に声をかけられていたらしい。

「へ? え? あ、着いた?」

「ううん、あとちょっとだけど。いやなんか顔赤いから」

「そ、そう?」

「君島くんと何かあった? いきなり殴ってたし」

「まあ、うん。めちゃくちゃ気を遣ってたから」

「あ~。君島くんってそういうの自然にやるよね」

「そうなんだよね~」

「泣かせた女数知れずとかだったり」

「なるほど……」

「え? ちょっ、うそうそ。冗談だって」

「あ、いやごめん。分かってるって。そこまで器用じゃないもん」

 そっか。うちって純粋に君島のことが好きじゃなかったのかも。
 純粋に好きなら、引き離そうとしているって知ったとき、ただ悲しくなったんだろうな。

 悲しくなかったわけじゃないけど、君島っぽいって思ったのが一番大きくて、なんならちょっと嬉しかったりもして。
 ああ、そっか。
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