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第4章

4-12行き先の希望

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「いや遠慮すんなって。こっちは木庭の事情は分かってんだから」

「……かなり言いたくなかったが、新城がそう言うのなら言わせてもらおう」「俺のせい?」

 木庭は深呼吸して言った。
「沖縄に行ってまでお菓子を作りたくない……」

「なるほど……」
 そういえば確かに食ルートで行く場所の一つにお菓子作り体験があった。日々そんなことをしてばかりいるだろうからこんな時ぐらい忘れたいか……。

「い……いいのか!? そんなんで!? 腕落ちるぞ!?」

「心配はありがたく受け取るが、高校受験の前後でそこまで変化がなかったから大丈夫だ」

「そうか……」

「そう言われるとこれじゃなくてもいいし。ね?」
「うん。じゃあ別のか」

 同じ班の女子、中塔さんと佐橋さんによってついに切り替えられた。……まあ、木庭自身からの申し出だし、君島も納得するだろ。

「これが良いっていうのは?」

「食ルートを否定しておいて申し訳ないが、市場は気になっている」

「じゃあ第一候補は中部南部だな。二人はどう?」
「良いよ~」「良いと思う」

 君島の言っていた通り人気があると思い、第二、第三候補もその後しっかり決めたが、行き先は中部南部にあっさり決まった。
 ……文化祭が劇になったことを思い出した。
 まさか、な。



 僕たちの班は最初にそれぞれの希望を紙に書いて見せ合うことにした。
 草壁は食か中部南部、清家さんは食、そしてもう一人の男子の長浜も清家さんの話を聴いていたため食だった。僕は北部中部と中部南部にした。

「あ~。これはもう食かな? 君島は希望してないけど」

 草壁からそれ言うの?

「いやいや中部南部に二票は入ってるし話しておこうよ」

「それ選んだ理由? まあ、希望っていう希望と言えば市場に行きたいってことぐらいなんだよね。結局どこ行っても沖縄っぽいものが見られるんだろうけど。だから色々見られるのもいいかな~って」

「え? 市場? それだけ?」
 清家さんは驚いた様子だった。

「うん。ていうか麗奈は衣装系のなんか見なくていいの?」

「あ~……えっと……そればっかりじゃなくてもいいって思ってたんだけど……。そうだね、色々見られるのもいいよね! じゃあ私も中部南部に一票!」

「これで三対三? 長浜は変えたりする?」

「俺もどこ行ってもいいかな~って思ってたし。いいじゃん、中部南部」

「なんか適当~」「さっき草壁が言ったことと同じだろ~?」

「まあいいや。君島は? 動き回りたくないっていう強い意志を感じるけど」

「そんなつもりはないけどね? 僕は食も衣も見られたらっていうのが一番かな」

「なるほどね」
 清家さんは納得の声を出した。何も伝えずに食を希望に挙げなかったけど、今ので伝わっただろうか。

 僕を含む班長同士の調整の結果、僕たちの班は無事中部南部に決まった。草壁というか長浜みたいなことを考える人が多くて助かった。



 その後僕と新城は結果を伝えあった。

「……こっちで一致するとは思わなかったね」

「よく考えてみれば分かりそうなものだったけどな……」

「まあ、いいか。草壁と木庭の希望だし」

「た、確かにな! 希望ならどこでもいいよな!」

 僕たちも似たようなものかもしれない。
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