198 / 204
第4章
4-11班行動の密談
しおりを挟む
沖縄での修学旅行における班行動は予め決められた五種類の中から選ぶことになる。
行き先はそれぞれのテーマに沿った三か所と、途中に首里城、美ら海水族館ときて、最後に宿泊するホテル近くのアメリカンビレッジ。
でも同じ種類を選んだ班が同じ順番で巡るわけではなく、学校の教員とタクシー会社や行き先とで混まないように取り決めているらしい。
「単純計算で百二十通り、制約があって減ったとしても十通りまでとかはないと思う」
僕は新城とどの種類を選ぶことにするかを話し合っていた。新城が言うに密談だ。
「とは言え二班合同で案内を受けることもあるらしいし、同じの選ぶよな」
そう問いかけられて僕は簡単には答えられなかった。
「どうした?」
「行き先は衣・食・住と北部中部と中部南部だったよね」
「これ教育機関として最初の三つは良いと思うけど最後の二つやっつけだよな?」
「ゆっくり色々観られるのが利点だよ」
「それはそうかもしれんけども。で、それが?」
「実は文化祭で衣装の下絵担当だった清家さんも同じ班なんだ」
「つまり衣になるかもしれないと」
「それが清家さん自身はそれじゃなくても良いらしくて……」
「え? ならいい……いや、駄目だな。その清家さんだって草壁ちゃんとあまり変わらないよな」
新城は考え込む。
「そうなんだよね。実物は他のどこかで見られそうとか見られなくても良いとか言うけど、直接見るのは違うと思うし、そう考えると確実に見てほしいし」
「またなんで同じ班に?」
「文化祭で草壁と意気投合したからね」
「そういうことか。というか宍戸は?」
「そっちには衣を選んでほしいから別の班だって。ちなみに別府がいるよ」
「どっちでもいい情報ありがとう。いや~二人とも沖縄独特のに触れてほしいよな~」
「うん。そうなると場所で分けられたどっちかにしたいんだけど、これもまたさっき言った利点で人気だと思うし」
「組の中でそれぞれの行き先に二班ずつって決まりだったな。これはもうその場の流れに任せるしかないだろ。逆に五分の四が当たりって考えよう」
「さすがに強引じゃない? あとそれから、最後のアメリカンビレッジ、ここなら一緒に行動できそうだけどどうする」
「これも難しいよな~。それぞれの場所での滞在時間とタクシー運転手に依って到着時刻が変わると思うんだよ。無理に引っ張ったり長い時間待たせたりするのは他のメンバーにも悪いし、あの二人もそこまでされたくないだろうし。できる限りで良いか?」
「うん。連絡を取り合いながら考えるよ」
「当日落ち着かないんだろうな……」
「忘れててもいいよ。それはそれってことで」
◇
「三人は本当にそれで良いのか?」
班での行き先打ち合わせの際、木庭が食ルートに対して念を押した。
……なんで?
行き先はそれぞれのテーマに沿った三か所と、途中に首里城、美ら海水族館ときて、最後に宿泊するホテル近くのアメリカンビレッジ。
でも同じ種類を選んだ班が同じ順番で巡るわけではなく、学校の教員とタクシー会社や行き先とで混まないように取り決めているらしい。
「単純計算で百二十通り、制約があって減ったとしても十通りまでとかはないと思う」
僕は新城とどの種類を選ぶことにするかを話し合っていた。新城が言うに密談だ。
「とは言え二班合同で案内を受けることもあるらしいし、同じの選ぶよな」
そう問いかけられて僕は簡単には答えられなかった。
「どうした?」
「行き先は衣・食・住と北部中部と中部南部だったよね」
「これ教育機関として最初の三つは良いと思うけど最後の二つやっつけだよな?」
「ゆっくり色々観られるのが利点だよ」
「それはそうかもしれんけども。で、それが?」
「実は文化祭で衣装の下絵担当だった清家さんも同じ班なんだ」
「つまり衣になるかもしれないと」
「それが清家さん自身はそれじゃなくても良いらしくて……」
「え? ならいい……いや、駄目だな。その清家さんだって草壁ちゃんとあまり変わらないよな」
新城は考え込む。
「そうなんだよね。実物は他のどこかで見られそうとか見られなくても良いとか言うけど、直接見るのは違うと思うし、そう考えると確実に見てほしいし」
「またなんで同じ班に?」
「文化祭で草壁と意気投合したからね」
「そういうことか。というか宍戸は?」
「そっちには衣を選んでほしいから別の班だって。ちなみに別府がいるよ」
「どっちでもいい情報ありがとう。いや~二人とも沖縄独特のに触れてほしいよな~」
「うん。そうなると場所で分けられたどっちかにしたいんだけど、これもまたさっき言った利点で人気だと思うし」
「組の中でそれぞれの行き先に二班ずつって決まりだったな。これはもうその場の流れに任せるしかないだろ。逆に五分の四が当たりって考えよう」
「さすがに強引じゃない? あとそれから、最後のアメリカンビレッジ、ここなら一緒に行動できそうだけどどうする」
「これも難しいよな~。それぞれの場所での滞在時間とタクシー運転手に依って到着時刻が変わると思うんだよ。無理に引っ張ったり長い時間待たせたりするのは他のメンバーにも悪いし、あの二人もそこまでされたくないだろうし。できる限りで良いか?」
「うん。連絡を取り合いながら考えるよ」
「当日落ち着かないんだろうな……」
「忘れててもいいよ。それはそれってことで」
◇
「三人は本当にそれで良いのか?」
班での行き先打ち合わせの際、木庭が食ルートに対して念を押した。
……なんで?
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる