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第4章

4-5二択

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 試験期間に入り、隣席の人含め多くの人が唸っていた。
 僕はというと、ここまでくると足掻くのも無駄だと思うことがたまにあったりした。そういうわけで教室を出て歩き回ることが度々あって、今もその途中だ。
 三組の前に見覚えのある後ろ姿の女子生徒がいて、話しかけることにした。

「幸恵さん、調子はど……」

 呼びかけに応じて振り向いてくれたのだけど、その表情にたじろいでしまった。

 ……どういう感情?
 泣きそうなの? くしゃみかあくびでも出そうなの? それでも平静を保とうとしているのかな? いや全然分からない。

「あ、奏向くん久し振り」
 話し出すといつも通りだった。
 ……話し終えるとさっきの顔に戻っていった。

「大丈夫?」

「う~ん。ちょっと考え事をしていて」

「どんな?」

「右と左の違いとか」
「実はかなり難しいことだそれ」

「あけびとあけみのどっちかとか」
「誰よその女」

「時か空かとか」
「壮大すぎない?」

 これ、全部二つの間で悩んでいる辺り進路の悩みだろうか。考古学と天文学、それらを別のものに置き換え……置き換えられているかなぁ? 最後の時と空は置き換えられているかな?

「もしかして、それで試験の方はあまりよくないとか?」

「ううん。悪いってことは無いよ」

「その辺を落とさないのが幸恵さんだよね……。とはいえ、表情には出ているから。あまり考え込みすぎないで」

「え? そっか~。顔に出てたか」

「こういうのを恥ずかしがらないのも幸恵さんの持ち味だと思う」

「よし、じゃあ考えないでおこう。探しものは忘れた頃に出てくるっていうし。ありがとう、奏向くん」

 話し終えた後の表情から変わっていくことはなく、幸恵さんは教室へと戻っていった。……大丈夫かな?
 いや、大丈夫なはず。幸恵さん、それから油井なら唐突に二人が納得できる方を選ぶんだろうから。なんなら全然別のものを出してきそうな気もする。



 幸恵さんはこれまでの僕の行動を話したら何か変わるのだろうか。
 ただ聴いて終わり……かなり衝撃を受ける……僕が考えつかないことを言い出す……どれもあり得そうだし、もっと別の行動を取るかもしれないし……。やっぱりどうなるかは分からない。
 けど、僕に、自分自身に、向き合うことは確かだと分かる。

 草壁は……まずは考えることもできなくなりそう。それから怒るか、悲しむか、失望するか、かな。でもそれで良い。それで自分の将来を決めることに繋がれば。

 うん。
 言おう。
 言うことで傷つけるとしても、ここで終わらせるべきなんだ。
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