185 / 204
第3章
3-61上 ☆
しおりを挟む
「よほど疲れていたとかではなく?」
「どうなんだろう。何かあったか訊くと天音が幸恵と二人で幸恵の同級生の男の子に会ったとは言ってたけど」
その時期は憔悴していた頃か。ただその一回というのは少し気になる。もう堪え切れなくなったのだろうか。
「その後何か変わったことはありましたか?」
「その後……って言っていいか分からないけど、元気になっていったと思う。高校上がってすぐぐらいからしばらく元気がなかったんだよね。そこから段々と、って感じで」
――――そうか。
堪え切れなくなったわけではなさそうだ。
幸恵さんは憔悴していた時期だった。
そんな彼女が天音ちゃんと一緒にいる所に同級生の男子が居合わせた。つまり幸恵さんは自分の家族の前での彼の立ち居振る舞いを見た。
以前から天音ちゃんと面識があると言っていた彼のことだ。幸恵さんに伝わることがあったはずだ。
だから、眠った。彼の存在を安心に感じて。
もし合っていて、今も同じ条件を満たしているというのであれば――。
「ん? あ、寝ちゃってた」
「今は半分を越えたぐらいだ。まだ休んでいても構わない」
「ありがとう。でも大丈夫かな」
◇
目的地の駐車場で車が止まった。
「ありがとうございます」「ありがと~」
「いいえ~。じゃあ、後は任せるね。何かあったら連絡して。電波繋がりにくいと思うけど」
「分かりました」
上を見ると本館のある場所までの階段は長そうだった。
「半ば山登りだね」
「無理せず頑張ろうか」
私たちは歩調を合わせ、ゆっくりと昇った。
◇
昇り切り、建物外の構造物が目に入る。
「お~。これが」
「手前が古代のインドで使われていた、黄道座標と惑星の位置を測定できる施設、ジャンタル・マンタル。奥がストーンサークル。日の出・日の入りで現在の暦を知ることができる」
「遠い昔にこれと同じ物が造られたんだよね」
「当時使い方が周知されていたのだろうか」
「う~ん、まあ、楽しそうとか思われたんじゃないかな。人が両腕を上げているように見えるから」
「なるほど。私には天に祈りを捧げているように見えたな」
「本当? やっぱりどうしても人に見えちゃうよね」
話しながら十二基のジャンタル・マンタルの間を抜け、ストーンサークルの中に入った。
「これは……」
そう言って幸恵さんは太陽の方を見上げた。それからしゃがんだり立ったりした。
「やっぱりこの時間帯じゃうまく使えない……」
「そうなのか?」
私もしゃがんでみた。
……位置も変えてみた。
「……そうだな」
「どうなんだろう。何かあったか訊くと天音が幸恵と二人で幸恵の同級生の男の子に会ったとは言ってたけど」
その時期は憔悴していた頃か。ただその一回というのは少し気になる。もう堪え切れなくなったのだろうか。
「その後何か変わったことはありましたか?」
「その後……って言っていいか分からないけど、元気になっていったと思う。高校上がってすぐぐらいからしばらく元気がなかったんだよね。そこから段々と、って感じで」
――――そうか。
堪え切れなくなったわけではなさそうだ。
幸恵さんは憔悴していた時期だった。
そんな彼女が天音ちゃんと一緒にいる所に同級生の男子が居合わせた。つまり幸恵さんは自分の家族の前での彼の立ち居振る舞いを見た。
以前から天音ちゃんと面識があると言っていた彼のことだ。幸恵さんに伝わることがあったはずだ。
だから、眠った。彼の存在を安心に感じて。
もし合っていて、今も同じ条件を満たしているというのであれば――。
「ん? あ、寝ちゃってた」
「今は半分を越えたぐらいだ。まだ休んでいても構わない」
「ありがとう。でも大丈夫かな」
◇
目的地の駐車場で車が止まった。
「ありがとうございます」「ありがと~」
「いいえ~。じゃあ、後は任せるね。何かあったら連絡して。電波繋がりにくいと思うけど」
「分かりました」
上を見ると本館のある場所までの階段は長そうだった。
「半ば山登りだね」
「無理せず頑張ろうか」
私たちは歩調を合わせ、ゆっくりと昇った。
◇
昇り切り、建物外の構造物が目に入る。
「お~。これが」
「手前が古代のインドで使われていた、黄道座標と惑星の位置を測定できる施設、ジャンタル・マンタル。奥がストーンサークル。日の出・日の入りで現在の暦を知ることができる」
「遠い昔にこれと同じ物が造られたんだよね」
「当時使い方が周知されていたのだろうか」
「う~ん、まあ、楽しそうとか思われたんじゃないかな。人が両腕を上げているように見えるから」
「なるほど。私には天に祈りを捧げているように見えたな」
「本当? やっぱりどうしても人に見えちゃうよね」
話しながら十二基のジャンタル・マンタルの間を抜け、ストーンサークルの中に入った。
「これは……」
そう言って幸恵さんは太陽の方を見上げた。それからしゃがんだり立ったりした。
「やっぱりこの時間帯じゃうまく使えない……」
「そうなのか?」
私もしゃがんでみた。
……位置も変えてみた。
「……そうだな」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる