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第3章

3-61上 ☆

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「よほど疲れていたとかではなく?」

「どうなんだろう。何かあったか訊くと天音が幸恵と二人で幸恵の同級生の男の子に会ったとは言ってたけど」

 その時期は憔悴していた頃か。ただその一回というのは少し気になる。もう堪え切れなくなったのだろうか。

「その後何か変わったことはありましたか?」

「その後……って言っていいか分からないけど、元気になっていったと思う。高校上がってすぐぐらいからしばらく元気がなかったんだよね。そこから段々と、って感じで」

 ――――そうか。
 堪え切れなくなったわけではなさそうだ。

 幸恵さんは憔悴していた時期だった。
 そんな彼女が天音ちゃんと一緒にいる所に同級生の男子が居合わせた。つまり幸恵さんは自分の家族の前での彼の立ち居振る舞いを見た。
 以前から天音ちゃんと面識があると言っていたのことだ。幸恵さんに伝わることがあったはずだ。
 だから、眠った。彼の存在を安心に感じて。

 もし合っていて、今も同じ条件を満たしているというのであれば――。

「ん? あ、寝ちゃってた」

「今は半分を越えたぐらいだ。まだ休んでいても構わない」

「ありがとう。でも大丈夫かな」



 目的地の駐車場で車が止まった。

「ありがとうございます」「ありがと~」

「いいえ~。じゃあ、後は任せるね。何かあったら連絡して。電波繋がりにくいと思うけど」

「分かりました」

 上を見ると本館のある場所までの階段は長そうだった。

「半ば山登りだね」

「無理せず頑張ろうか」

 私たちは歩調を合わせ、ゆっくりと昇った。



 昇り切り、建物外の構造物が目に入る。

「お~。これが」

「手前が古代のインドで使われていた、黄道座標と惑星の位置を測定できる施設、ジャンタル・マンタル。奥がストーンサークル。日の出・日の入りで現在の暦を知ることができる」

「遠い昔にこれと同じ物が造られたんだよね」

「当時使い方が周知されていたのだろうか」

「う~ん、まあ、楽しそうとか思われたんじゃないかな。人が両腕を上げているように見えるから」

「なるほど。私には天に祈りを捧げているように見えたな」

「本当? やっぱりどうしても人に見えちゃうよね」

 話しながら十二基のジャンタル・マンタルの間を抜け、ストーンサークルの中に入った。

「これは……」
 そう言って幸恵さんは太陽の方を見上げた。それからしゃがんだり立ったりした。

「やっぱりこの時間帯じゃうまく使えない……」

「そうなのか?」
 私もしゃがんでみた。

 ……位置も変えてみた。

「……そうだな」
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