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第3章
3-54無謀かどうか ☆
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あんなことを言って、今は生徒会室に向かっているけれど、正直生徒会に対してこれまでのように取り組めるかどうかは別問題だった。
「止むのにもうしばらくかかりそうだな」
宮国の声だった。
「……ああ、そうね」
雨のことなんて忘れていて、最初はなんの話か分からなかった。
「どうした? 大丈夫か?」
「ええ……」
宮国にも話しておくべきね。
「聴いてもらえるかしら。私が生徒会に入った理由についてなのだけれど」
「私は大丈夫だが、いきなりどうした?」
「まずは謝らせて。その理由というのが幸恵に対する対抗意識だったの。こんな私的なことで参加していてごめんなさい」
「……そうか。いや、それは問題無いが、なるほど。そうだったのか」
「何?」
「これまで冴羅はどこか焦っていると思っていたんだ。特に最近は。とはいえ会った時からなのでそういう性格なのかとそのままにしていたのだが」
「そう。やはり分かりやすいのかしら。さっき凛紗と君島にも話したのだけれど、その二人と幸恵も勘づいていたの」
「まさか対抗意識で、しかも相手が西沖だったとは思わなかったが」
「けれど、もうそれが無くなったの。だからどうしようかと思っていて」
「辞める……のか?」
そう言ってこちらに向けた表情は複雑そうだった。
「大丈夫。辞めないわよ。それ自体はどうでもよくなって自分で捨てたの。ただどうすべきか迷っているというか、それが無くなった影響がどう出るのか分からなくて。そうね……どう思うかしら? 無謀だとか結果は自明だとか思った?」
「いや? どちらかと言うとなぜ捨てたのかの方が気になる」
「そう。なら、長くなるけれど聴いてもらえるかしら」
生徒会室に入って、私は宮国に経緯を伝えた。
宮国はしばらく考えて、口を開いた。
「無謀かどうか、だったか」
「ええ」
「それについては、もし過程も同じにして競わなければ意味が無いのならそうだと答える。だが、もし結果だけで見るのならそんなことはないと答える」
「そう……なのかしら?」
宮国が窓の外に目を遣った。
そこではまだ雨が振り続いていた。
「今度は私から話してもいいか? 私が生徒会に参加した理由」
「参考になりそうね。聴かせてもらえるかしら」
「そうは思えないが。生徒会に参加して、私に何をどこまでできるのか知りたかったから。それが理由だよ」
「へえ。素晴らしいじゃない」
その私の感想は宮国を少し落胆させたようだった。
「止むのにもうしばらくかかりそうだな」
宮国の声だった。
「……ああ、そうね」
雨のことなんて忘れていて、最初はなんの話か分からなかった。
「どうした? 大丈夫か?」
「ええ……」
宮国にも話しておくべきね。
「聴いてもらえるかしら。私が生徒会に入った理由についてなのだけれど」
「私は大丈夫だが、いきなりどうした?」
「まずは謝らせて。その理由というのが幸恵に対する対抗意識だったの。こんな私的なことで参加していてごめんなさい」
「……そうか。いや、それは問題無いが、なるほど。そうだったのか」
「何?」
「これまで冴羅はどこか焦っていると思っていたんだ。特に最近は。とはいえ会った時からなのでそういう性格なのかとそのままにしていたのだが」
「そう。やはり分かりやすいのかしら。さっき凛紗と君島にも話したのだけれど、その二人と幸恵も勘づいていたの」
「まさか対抗意識で、しかも相手が西沖だったとは思わなかったが」
「けれど、もうそれが無くなったの。だからどうしようかと思っていて」
「辞める……のか?」
そう言ってこちらに向けた表情は複雑そうだった。
「大丈夫。辞めないわよ。それ自体はどうでもよくなって自分で捨てたの。ただどうすべきか迷っているというか、それが無くなった影響がどう出るのか分からなくて。そうね……どう思うかしら? 無謀だとか結果は自明だとか思った?」
「いや? どちらかと言うとなぜ捨てたのかの方が気になる」
「そう。なら、長くなるけれど聴いてもらえるかしら」
生徒会室に入って、私は宮国に経緯を伝えた。
宮国はしばらく考えて、口を開いた。
「無謀かどうか、だったか」
「ええ」
「それについては、もし過程も同じにして競わなければ意味が無いのならそうだと答える。だが、もし結果だけで見るのならそんなことはないと答える」
「そう……なのかしら?」
宮国が窓の外に目を遣った。
そこではまだ雨が振り続いていた。
「今度は私から話してもいいか? 私が生徒会に参加した理由」
「参考になりそうね。聴かせてもらえるかしら」
「そうは思えないが。生徒会に参加して、私に何をどこまでできるのか知りたかったから。それが理由だよ」
「へえ。素晴らしいじゃない」
その私の感想は宮国を少し落胆させたようだった。
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