僕(じゃない人)が幸せにします。

暇魷フミユキ

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第3章

3-53対抗相手の言葉 ☆

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「……負けた、と」

 凛紗は君島の言葉に痛がる顔を見せた。

「ええ。勝負にもなってなかったのよ」

 彼は何か言いかけて口を閉じた。

「良いわよ。何を言ってもらっても」

「余計なことだとしても?」

「今更気にしなくて良いわよ」

「それなら……。幸恵さんと冴羅さんの話をしたことがあって。そこでたまに恐いと思う時があったと言っていて。今思えば冴羅さんの意識を幸恵さんは感じ取っていたんだと思う」

「そう。本当に敵わないわ。それともやっぱり分かりやすいのかしら?」

「それからもう一つ、言っていたことがあって……」

「何?」

「理想のお姉さん、と。凛紗さんのことが羨ましいとも」

「……ふふっ。何それ。幸恵も立派な姉じゃない」

「だからこそなんだろうね」

 僅か、本当に僅かだけれど、幸恵に及ばないと思わせることができたのかしらね。

「冴羅ちゃん……」
 か細い声だった凛紗の方を向くと、今にも泣き出しそうだった。

「何? 大丈夫?」

「生徒会は辞めるんですか? それだけじゃないです。今後どうするんですか!?」

「こんな個人的なことで辞めないわ。たとえ幸恵の方が相応しいとしても、副生徒会長になったのは私よ。それ以外も元通り……元って言っても難しいけれど、ありのままでいるわ」

「冴羅ちゃん……!」
 そう言って抱き着いてきた。

「感極まり過ぎよ。ありがとう、君島。聴いてくれて」

 言われた当人はまた驚いた顔を見せた。

「いや、感謝するのはこっちの方だよ。本心は分からずじまいになるとばかり思っていたし、赤の他人の僕に話すなんて覚悟の要ることだと思うから」

「そうね……」

 頷く君島。

「けれどこんな話を真剣に聴いてくれるでしょ?」

「それは……もちろん」

「今のこと、幸恵にも話すわ。それで謝る」

「うん。……じゃあ、また何かあったら」「君島さん!」
 君島は振り返ろうとして凛紗の呼び掛けに立ち止まった。

「一緒に心配してくれたりちゃんと冴羅ちゃんのことを見ていてくれたり、本当にありがとうございます!」

「大したことはできなかったけど、役に立てたなら良かった。戻るね。草壁リーダーに怒られちゃいそうなんで」

「ありがとう」「ありがとうございます」
 私たちは頭を下げた。

 君島を見送りながら凛紗に話した。
「本当に私たち、何度君島に助けられるのかしらね」

「はい。君島さんは断るでしょうけど、やっぱり何か返してあげたいです」
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