162 / 281
第3章
3-38風景画/行列のできる屋台
しおりを挟む
僕と草壁は美術室を訪ねた。
美術部の三年生に会釈し、絵画や彫刻が配置された室内を眺め回す。
「絵って分かんないけど、動画で見たから愛着?みたいなのはあるかな」
「良かった。それが油井の狙いだったんだよね」
「へ~」
中でも一際暗めの絵。これが油井の作品だ。
「あ~。黒っぽいけど全部同じ色じゃないんだね」
「確かに。地味に難しい題材だったんだ」
僕はこの絵をどんな顔で見ていただろうか。
不思議そうに僕を見る草壁に説明できそうもない。
◇
一階に降りる途中のこと。
「なんか賑やかだね。外?」
「うん。ステージかな」
「おっ! だれだれ?」
「今は……なんもやってないはずだね」
実行委員会製作のガイドではステージは三十分後になっていた。
「え? じゃあ屋台だけじゃん」
「ちょっと見てみる?」
そうして出た校門から玄関までの間は草壁の言う通り単に屋台だけ……いや、よく見ると人が並んでいる?
「あ、新城くんだ」
草壁の発言を受けて『たこ焼き』の屋台を見た。テニス部が開いた店の売りは“テニスボール大たこ焼き”だそう。
主催する部活と上手くかかっているし物珍しいけど、見る限りどうも……この列は新城によるものだ。また伝説作っとるんか。
ただ、その列だけではないみたいだ。もう一つの先を辿ると、そこはテニス部の隣にあった『ドリンク』の屋台だった。
バスケ部、“ゴール・ドリンク”。プラカップにバスケットボールのゴールが描かれ、球状の氷が入ったものだ。バスケにかかっている……かな?
そしてそこにいたのが。
「優哉……?」
「え?」
木庭が新城に対抗しているってこと!? いや見た目としては引けをとらないと思うけどいつの間にそんな……。
まさか。
「最近土曜のリュヌってどう?」
「え? 今? えっと、前よりお客様増えたとか店長言ってた。あと優哉のおかげとか。そう言えば女性が多いような……」
人気になってる! やっぱり!? 人前に立つようになったから!?
草壁も「そう言えば」じゃないよ! もっと焦った方が僕は良いと思うな!
視線だけで伝わらないかな!と草壁に目を向けている時だった。
――殺気!――
急いで感知した方を見ると、新城と木庭から鋭い視線を向けられていた。僕には視線だけで伝わらなくていいんだよ。
「草壁。たこ焼きとドリンクの所に並ばなくちゃならなくなった」
「何それ!? 義務なの!? いいけど!」
「ありがとう……。列長いから手分けしよう」
美術部の三年生に会釈し、絵画や彫刻が配置された室内を眺め回す。
「絵って分かんないけど、動画で見たから愛着?みたいなのはあるかな」
「良かった。それが油井の狙いだったんだよね」
「へ~」
中でも一際暗めの絵。これが油井の作品だ。
「あ~。黒っぽいけど全部同じ色じゃないんだね」
「確かに。地味に難しい題材だったんだ」
僕はこの絵をどんな顔で見ていただろうか。
不思議そうに僕を見る草壁に説明できそうもない。
◇
一階に降りる途中のこと。
「なんか賑やかだね。外?」
「うん。ステージかな」
「おっ! だれだれ?」
「今は……なんもやってないはずだね」
実行委員会製作のガイドではステージは三十分後になっていた。
「え? じゃあ屋台だけじゃん」
「ちょっと見てみる?」
そうして出た校門から玄関までの間は草壁の言う通り単に屋台だけ……いや、よく見ると人が並んでいる?
「あ、新城くんだ」
草壁の発言を受けて『たこ焼き』の屋台を見た。テニス部が開いた店の売りは“テニスボール大たこ焼き”だそう。
主催する部活と上手くかかっているし物珍しいけど、見る限りどうも……この列は新城によるものだ。また伝説作っとるんか。
ただ、その列だけではないみたいだ。もう一つの先を辿ると、そこはテニス部の隣にあった『ドリンク』の屋台だった。
バスケ部、“ゴール・ドリンク”。プラカップにバスケットボールのゴールが描かれ、球状の氷が入ったものだ。バスケにかかっている……かな?
そしてそこにいたのが。
「優哉……?」
「え?」
木庭が新城に対抗しているってこと!? いや見た目としては引けをとらないと思うけどいつの間にそんな……。
まさか。
「最近土曜のリュヌってどう?」
「え? 今? えっと、前よりお客様増えたとか店長言ってた。あと優哉のおかげとか。そう言えば女性が多いような……」
人気になってる! やっぱり!? 人前に立つようになったから!?
草壁も「そう言えば」じゃないよ! もっと焦った方が僕は良いと思うな!
視線だけで伝わらないかな!と草壁に目を向けている時だった。
――殺気!――
急いで感知した方を見ると、新城と木庭から鋭い視線を向けられていた。僕には視線だけで伝わらなくていいんだよ。
「草壁。たこ焼きとドリンクの所に並ばなくちゃならなくなった」
「何それ!? 義務なの!? いいけど!」
「ありがとう……。列長いから手分けしよう」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?
みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。
普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。
「そうだ、弱味を聞き出そう」
弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。
「あたしの好きな人は、マーくん……」
幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。
よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
コミュ障な幼馴染が俺にだけ饒舌な件〜クラスでは孤立している彼女が、二人きりの時だけ俺を愛称で呼んでくる〜
青野そら
青春
友達はいるが、パッとしないモブのような主人公、幸田 多久(こうだ たく)。
彼には美少女の幼馴染がいる。
それはクラスで常にぼっちな橘 理代(たちばな りよ)だ。
学校で話しかけられるとまともに返せない理代だが、多久と二人きりの時だけは素の姿を見せてくれて──。
これは、コミュ障な幼馴染を救う物語。
毎日更新します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる