僕(じゃない人)が幸せにします。

暇魷フミユキ

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第3章

3-38風景画/行列のできる屋台

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 僕と草壁は美術室を訪ねた。
 美術部の三年生に会釈し、絵画や彫刻が配置された室内を眺め回す。

「絵って分かんないけど、動画で見たから愛着?みたいなのはあるかな」

「良かった。それが油井の狙いだったんだよね」

「へ~」

 中でも一際暗めの絵。これが油井の作品だ。

「あ~。黒っぽいけど全部同じ色じゃないんだね」

「確かに。地味に難しい題材だったんだ」

 僕はこの絵をどんな顔で見ていただろうか。
 不思議そうに僕を見る草壁に説明できそうもない。



 一階に降りる途中のこと。

「なんか賑やかだね。外?」

「うん。ステージかな」

「おっ! だれだれ?」

「今は……なんもやってないはずだね」
 実行委員会製作のガイドではステージは三十分後になっていた。

「え? じゃあ屋台だけじゃん」

「ちょっと見てみる?」

 そうして出た校門から玄関までの間は草壁の言う通り単に屋台だけ……いや、よく見ると人が並んでいる?

「あ、新城くんだ」

 草壁の発言を受けて『たこ焼き』の屋台を見た。テニス部が開いた店の売りは“テニスボール大たこ焼き”だそう。
 主催する部活と上手くかかっているし物珍しいけど、見る限りどうも……この列は新城によるものだ。また伝説作っとるんか。

 ただ、その列だけではないみたいだ。もう一つの先を辿ると、そこはテニス部の隣にあった『ドリンク』の屋台だった。
 バスケ部、“ゴール・ドリンク”。プラカップにバスケットボールのゴールが描かれ、球状の氷が入ったものだ。バスケにかかっている……かな?
 そしてそこにいたのが。

「優哉……?」

「え?」
 木庭が新城に対抗しているってこと!? いや見た目としては引けをとらないと思うけどいつの間にそんな……。

 まさか。

「最近土曜のリュヌってどう?」

「え? 今? えっと、前よりお客様増えたとか店長言ってた。あと優哉のおかげとか。そう言えば女性が多いような……」

 人気になってる! やっぱり!? 人前に立つようになったから!?
 草壁も「そう言えば」じゃないよ! もっと焦った方が僕は良いと思うな!
 視線だけで伝わらないかな!と草壁に目を向けている時だった。

 ――殺気!――

 急いで感知した方を見ると、新城と木庭から鋭い視線を向けられていた。僕には視線だけで伝わらなくていいんだよ。

「草壁。たこ焼きとドリンクの所に並ばなくちゃならなくなった」

「何それ!? 義務なの!? いいけど!」

「ありがとう……。列長いから手分けしよう」
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