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第3章
3-36麗人と遊戯を
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「またどうぞ」と挨拶してくれた油井を後に、隣の四組を訪ねた。
「ようこそ。二人とも」
迎え入れてくれた冴羅さんはスーツ姿――ジャケットにスラックスを着ていた。
「おお……」
草壁は感嘆していた。そうなるのも頷けるほど優美な雰囲気だった。
「あなたたちのような間柄の人物が一番気恥ずかしいわね」
そう言ってはにかんだ。
僕はその表情に、見たことがないはずなのに見慣れているように思えるという不思議な感覚を覚えた。
そして草壁はその表情に、喰らっていた。僅かに赤くなっていた。
四組の衣装は男女共通でこれを着ることになっているらしい。鍛えている男子は別物に見えるけど……。
「君島とは全然違う」
「そうなの?」
「ああ……うん。みんなから似合わないって言われてる」
「あらそう。お邪魔しようと思っていたのだけれど」「来て来て!」
食い気味に答える草壁。
「僕に対する遠慮とかはいいから寄ってよ」
「そう。君島は君島ね」
ゆったりとした言い方だった。
ただそれだけで、なんとなくでしかなくて、すぐに元通りになったから気のせいかもしれないけど。
その言い方にどこか違和感があった。
「せっかく来てくれたのだから、一試合どうかしら?」
「あ、はい是非!」
そんな勢いの良い返答に冴羅さんは少し戸惑いながら草壁を座席へと導いた。草壁はこのままお姉様とか言いそうだ。
ポーカー最強の座を争った四人は絶対に五戦することになっていて、その内一回でも勝てれば景品が貰えるようにらしい。
水を差すことになりそうなので止めなかったけど、四十人の頂点に立った実力は伊達ではなく――。
草壁は五連敗した。小難しいことはできないし、見惚れたり悶えたりしていたからね……。今はぼーっと、と言うよりぽーっとしていた。
「えへへ~。冴羅に勝てる人なんていないね~」
「ありがとう。正直なところが美頼の長所ね」
呆れてはいたけど……本気で言っているようにも見えた。本心なのか、ポーカーのために鍛えたのか……。
「そんなそんな! 私なんて」
「……君島」
「はい」
「前から美頼はこうだったかしら」
「いいえ」
カシャ。
「……お客さん?」
「うん?」
「勝手な撮影はやめてくださいね」
「ようこそ。二人とも」
迎え入れてくれた冴羅さんはスーツ姿――ジャケットにスラックスを着ていた。
「おお……」
草壁は感嘆していた。そうなるのも頷けるほど優美な雰囲気だった。
「あなたたちのような間柄の人物が一番気恥ずかしいわね」
そう言ってはにかんだ。
僕はその表情に、見たことがないはずなのに見慣れているように思えるという不思議な感覚を覚えた。
そして草壁はその表情に、喰らっていた。僅かに赤くなっていた。
四組の衣装は男女共通でこれを着ることになっているらしい。鍛えている男子は別物に見えるけど……。
「君島とは全然違う」
「そうなの?」
「ああ……うん。みんなから似合わないって言われてる」
「あらそう。お邪魔しようと思っていたのだけれど」「来て来て!」
食い気味に答える草壁。
「僕に対する遠慮とかはいいから寄ってよ」
「そう。君島は君島ね」
ゆったりとした言い方だった。
ただそれだけで、なんとなくでしかなくて、すぐに元通りになったから気のせいかもしれないけど。
その言い方にどこか違和感があった。
「せっかく来てくれたのだから、一試合どうかしら?」
「あ、はい是非!」
そんな勢いの良い返答に冴羅さんは少し戸惑いながら草壁を座席へと導いた。草壁はこのままお姉様とか言いそうだ。
ポーカー最強の座を争った四人は絶対に五戦することになっていて、その内一回でも勝てれば景品が貰えるようにらしい。
水を差すことになりそうなので止めなかったけど、四十人の頂点に立った実力は伊達ではなく――。
草壁は五連敗した。小難しいことはできないし、見惚れたり悶えたりしていたからね……。今はぼーっと、と言うよりぽーっとしていた。
「えへへ~。冴羅に勝てる人なんていないね~」
「ありがとう。正直なところが美頼の長所ね」
呆れてはいたけど……本気で言っているようにも見えた。本心なのか、ポーカーのために鍛えたのか……。
「そんなそんな! 私なんて」
「……君島」
「はい」
「前から美頼はこうだったかしら」
「いいえ」
カシャ。
「……お客さん?」
「うん?」
「勝手な撮影はやめてくださいね」
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