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第3章

3-35文化祭初日/巨大ピンボールの実態

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 遂に文化祭当日を迎えた。

「別府くん~? 始めるよ~い。ふふ~い」

 今のは二年のもう一人、女子の実行委員会の人だ。昨日の撮影や前夜祭の取り仕切りが上手くいったりいかなかったりのせいなのか、その頃からあんな感じだ。大丈夫かな?

 一組での準備を終えてしばらく経つと、お客さんがまばらながらも入ってきた。僕の担当は正午前後なので、ここからは午前の人たちに任せよう。

 そう思って教室を出ていこうとして、
「君島」
 と呼び止められた。

「……まだ何かありましたか? 草壁リーダー」

「敬語も『リーダー』もやめてほしいんだけど」
 低い声で言い放った。

 そうかと思えば、
「それに……仕事のことじゃないし」
 小さな声で囁いた。

 こんな草壁を見るのも久し振りだ。
「もしかして、一緒に回ろうとか……」

「うっ。……まあ? どうせ君島は一人で回ろうと思ってたんだろうし? それなら着いていこうかな~って」

「それで迷惑じゃないならいいけど……。木庭とか新城とも予定があったりしないの?」

「……ない」
 小さく低い声で言った。

「あっ……いやごめ――」

「優哉は二組の裏方とバスケ部! 新城くんは劇の出演とテニス部! 全っ然予定が合わなかったの!」

「そう……なんだ」
 それを聴くと確かに忙しそうだけど、本当は譲り合った結果だったりして……。

「だからほら、行くよ!」
 そう怒鳴って勝手に行ってしまった。

「あれ? 着いていくんじゃないの!?」



 二組の前を通り過ぎて、まずは三組に入った。
 巨大ピンボールの宣伝は初期に撮影だったから、その全貌を全く知らなかったけど……

 本当に大きかった。
 片側の出入口から伸びる空間が確保されているだけ。後は教室全体をぎりぎりまで埋め尽くすように|造られていた(・・・・・・)。木造であることや、その塗装も相まってどこか古めかしい見た目だ。

「おや。いらっしゃい、二人とも」
 僕らは油井に出迎えられた。

「観覧は自由、遊ぶなら並んでもらうよ」

「丁度やる人がいるみたいだし、まずは見るよ」

 この学校の三年生と思しき男性が、両手でプランジャーを引いてバレーボールを打ち出した。
 ボールは円弧を描いている頂点で速度が下がり、フリップの方へと転がり落ちてきた。その間にプレイヤーはプランジャーから歯車の付いたグリップへと持ち変える。
 フリップは機敏に動いた。カサカサとした木同士の摩擦音も微かに聞こえるけど、ボールが当たる音の方が大きい。

 校内にある大きいボールの中でも比較的軽い物を使って負荷を減らし、全ての部品はやすりがけと塗装でできる限り滑らかにしているそうだ。

 草壁が油井に訊いた。
「柱とか矢印の所で点が増えるの?」

「その通り」

「どうやって数えてるの?」

「中の人たちがそれぞれカウンターで」

「……冗談?」

 ベキッ

 そんな危うい音に不意を突かれた。
 矢印の所は細い通路状になっていたのだけど、そのガイドが曲がっていた。
 結構衝撃的だったので……当人でもないのに落ち込んだ。草壁も落ち込んでいた。

「すみません!」

「いえ、気にせず!」

 そう油井は言うけど、転がってきたボールは左右どちらのフリップも届かない所を通過してゲームオーバーとなった。
 それから間もなくしてピンボールの盤面の向こうから物音が聞こえ……。
 盤の奥の方に点が表示された。

「本当に裏にいたんだ……」
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