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第3章

3-30「二年二組『姫君の一生』 裏方から一部演目まで公開!」2

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 木庭を含めて裏方の撮影は無事終わった。

「あ、みんな。ようこそ~」
 幸恵さんから和やかに出迎えられた。

 机や椅子が端に寄せられた教室では今も演技の打ち合わせをしているようで、幸恵さんや新城が台本を片手にしていた。

「映像部も来たんで始めようか」
 新城の声で準備が始まった。発案者且つ準主役だけあってすっかり周りを引っ張る立場だ。

 新城と幸恵さんは共演しない別の班に分けられていた。まずは新城たちの班の練習を撮影する。



「ありがとう」
 包帯を巻かれた新城が主役の姫君に声をかけた。

「また……向かいますよね」

「……ああ」

 物語はここ渋山市を中心に、この県全体を舞台にした姫君の伝説を元にしている。
 母との死別を契機に当時の慣習から迎え入れた継母迎え入れたものの、彼女の嫉みにより姉たちや父との別れという目に遭う姫。

 その後匿い育てた大夫(たいふ)一家や優しい夫、その夫との間に産まれた娘に恵まれる。しかし、その姫君の美しさに心奪われた男によって、またも兄弟も同然の大夫の息子たち、そして夫が失なわれてしまう。今演じているのはこの夫が最期の戦(いくさ)に挑む前の場面だ。

 大夫の働きによって姫は国司となって政(まつりごと)を取り仕切り、人々に慕われる存在になる。
 時が経ち、大夫夫妻が亡くなる。夢枕に立った大夫夫妻と夫の話を聴き、その姫は湖に身を投げ、大明神として顕れる。そして今現在も多くの人たちに親しまれている。

 ……この話、幸恵さんにとてつもない影響与えて当然じゃないですか……。他人に多くを奪われても尚、他人のために生きる。見た目にも周りにも恵まれるところは端から見れば幸せな、ともすれば妬ましいことだけど、もしかするとこの姫自身は幸恵さんと同じように、それよりも他人の幸せこそが自分の幸せだったのかもしれない。

 撮影は続く。その夫がなだめるように妻に話していた。

「気恥ずかしくて伝えていなかったんだがな。これは私がしたくてしていることだ。お前に私の側からいなくなられる方が堪らないからこうするんだ」
 優しく、ゆったりと、僅かに不器用さも垣間見えるような話し方だった。

 新城良い演技するな……。いつもの馬鹿やっているところを知っていても格好良いって思えたよ。そうだこの人格好良い人だったね。
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