僕(じゃない人)が幸せにします。

暇魷フミユキ

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第3章

3-24プロデューサー

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 今日は幸恵さんが美術室、僕は二年五組の撮影となっていた。
 教室に入ると代表者と聴いていた女子が出迎えてくれた。

「今日」ドンダンダンダンダンダンダン「ます」

「はい?」

「あ~はは。ごめ」ギュイイイイイイウン「くて」

「…………」

「ここ」ガラガラガラガラ「撮らないんだよね?」バン

「……僕部屋間違えました?」

「……別の場所用意してるんで」
 カラン



 出し物はお化け屋敷。さっきの爆音は屋敷建設の工具の音だ……けど、あそこまでなんだ……。本当に一戸建てそうだった。

 出し物の内容を聴いた時最初に凛紗さんのことを思い浮かべた。さぞかし楽しんでいることだろう。いや、あれで意外と厳しいところあるし所詮文化祭程度とか言って不満が溜まっていたりして……。

「今日は私の他にあと二人いるんで」

「今回は小規模に見せるってことだったよね。その二人も中心的な役割の人なの?」

「そう。二人のおかげでかなり怖いものになった自信があって。どうぞ」

 僕は部屋に入って、そこにいた人を見た。

「お……お久し振りです……」

 深町凛紗さんだった。

「久し振り! そうなんだ。凛紗さんも制作の中心なら自信もあるよね」

「あれ、知り合いだった? ホラー好きも知ってるみたいだし。いや~凛紗がいなかったら今の形にならなかったんだから。本当プロデューサーみたいなものだから」

「言いすぎです……。皆さんがいなければ何もできていないですから」

 二人のやり取りを聞きながら僕は落ち着いた。そうか、五組の人たちに凛紗さんの怖いもの好きが知れ渡ったんだ。
 いや、本当に安心? 実は厄介な立場にあったりしない?

「相変わらず君は他人の懸念ばかりしているようだが、残念ながら杞憂だ」
 後ろからそんな声が聞こえた。

「櫓……。今の本当? というかなんで分かった?」

「質問の後者には無料で答えてやるが、前者は五百円いただこうか」

 すぐ出した。

 櫓は意味あり気に笑った。
「君という奴は分かり易過ぎるんだ。お化け屋敷はそこの下村を始めとした女子たちの提案によって決まったものだ。ただその魂胆は盛れた写真撮りたいだけとか。決まったからには本気で怖いものを作ろうとする男子との間で意見が食い違ってね」

 なんだろう、想像に難くない。

「そこで任意で案を募ったところ、彼女がどちらの要望も満たして、しかもホラー好きが判明したものだからあの扱いになっているわけだ」

「そうなんだ。馴染めているんだ、凛紗さん」

「そんなこと言って、君がたらし込む知恵でも着けたんじゃないのか」

「してないよ!? そもそもたらしじゃないよ!? そんなこと言って櫓の方こそ何かしてあげたんじゃないの?」

「さあ、どうだったかな」
 櫓は含みがあるかのような笑みを見せた。

「あざといところもあるが、人を立てる姿勢はそうそう嫌われないだろう」
 そこまで話して、なぜかその深く黒い色の瞳こちらに向けた。

「君のことじゃない」

「分かってるよ……」

 でもまあ、櫓から話を聴けて安心した。五百円の価値があったと思う。
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