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第3章

3-20「二年四組ポーカー最強決定戦」前編

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 その日の放課後は後輩と一緒に冴羅さんや宮国の四組で撮影していた。出し物はトランプゲーム。独自のポーカーやババ抜きをお客さんと遊ぶというものとのことだ。

 僕は最初大がかりなものではないから撮影順は早めになると思っていた。でも実際の時期は中盤になった。
 その主な理由が四組の内の一人から台詞として告げられた。

「渋山高校二年四組四十名、その全員がポーカー勝負をしてきました。本日はこれより、総当たり形式による勝ち点争い。その結果決まった上位四名の決勝を執り行います!」

 役の強弱で勝負するルールで、一戦につき四人の組を作りながらとは言え、本当に必ず全員と当たるようにしたらしい。そりゃ時間もかかりますわ、とカメラを構えながら思う。
 今あった通り、今回の撮影内容は二年四組ポーカー最強決定戦だ。
 四位、三位のプレイヤーが紹介され、次に移った。

「一位はなんと同率で二人! 一人はぁ、現生徒会長! 学内において右に出る者がいないその信頼性がぁ、その戦果を挙げさせたのか!? 宮国宗壱!!」

「どうぞよろしくお願いいたします」
 宮国はにこやかに会釈した。なんだその煽りみたいな顔を一瞬見せたけど。

「そしてもう一人の一位はぁ、こちらも現生徒会ぃ、その副会長! さらに輪をかけて文武両道! 今回の勝負も欲しいままにするのか!? 深町冴羅!」

「よろしくお願いします」
 ほとんど表情を変えずに挨拶する。口調からは僅かに呆れが感じられたけど。

 これまでの戦績や今の印象、それぞれの意気込みが語られた後……
「それではぁ、いよいよ開始です!」

 僕は宮国の手札やそれと向かい合うように座った冴羅さんの表情を写した。後輩はその隣の人の手札や表情を撮っている。映像部はいずれも無言・無表情を徹底している。
 装着したイヤホンからは先ほどまでプレイヤーを紹介していた人の実況が聞こえ、僕はそれに合わせてズーム。

「宮国手札を入れ替えてぇ……なんとかワンペアに持ってこられた!」

 別室で四組の数人が観戦していて、映像部だけには聞こえるようになっている。その別室の様子も同時に撮影している状態だ。

「宮国は……どうかしら」

「まあ、序盤だからね。一応Aが揃ったよ」

 プレイヤーは手札入れ替えの前後含めて必ず一度、手札について本当のことを言わなければならない。今の宮国の発言は嘘ではない。

「……そう」

 それを聴いた上で揺さぶりを掛けても良い……はずだけど、ゲームの時も距離を置く冴羅さんと、

「……」

「宮国ここは本当のことだけ言って会話を終らせた」

 もう嘘をつくこともできるのに何もしない宮国だった。

 手札を変え、役を揃え、余裕を演じ、強気で攻め、棄権を選び。盤上をカードと疑心が交錯した。
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