上 下
140 / 204
第3章

3-16コンセプトムービー撮影2

しおりを挟む
 ドッ!

「「うっ!」」

 僕の考えは杞憂だった。
 冴羅さんは二人同時に支えていた。すごい力だ。足も速いし泳ぎも速かったし何者なんだ冴羅さん……。

「あ、ごめんなさい……」

 そう言いながら冴羅さんが宮国を軽く押すのが見えた。

「いや、ありがとう! 何とも無い!」
 自分が謝られたと思った別府のはっきりとした声が聞こえた。

「ああ、いや……」
 胸を圧されたからというだけではなさそうな宮国の微かな声が聞こえた。



「失礼」

「あ、じゃあ部屋の奥で録るからね~」

 映像部部長の西沖さんがこちらの気が抜けそうな声で出迎えてくれた。君島くんはマイクが置かれた場所にいた。

 週明けの放課後、俺はコンピューター室に来た。動画に当てる声の録音するためだ。
 動画についての議論の際、ナレーションを入れるということになり、その場で俺に決まった。拒む理由もない。冴羅も応援してくれるしな!
 撮影を経て少し変えられた台本を読む。慣れるまで時間がかかるかと思ったが、案外すぐに調子が出て順調に進んだ。これを書いた生徒会書記の後輩のおかげだ。

「はい。ありがとうございます。以上ですね」

「こちらこそありがとう。良い経験になった。完成を楽しみにしている」

 退室し時刻を確認する。約束に間に合いそうだ。

「冴羅」
 生徒会室に着いて呼びかけた。

「録音終わったのね」

「ついさっきな」

 すぐ近くに台本を書いた書記の子がいたので、俺は感謝を告げつつ会話を交わした。
 そこまで長くはなかったはずだが、いつの間にか生徒会長は帰っており、代わるように深町の双子の妹がいた。

「直接凛紗と会うのは初めてだったわね」

「は、はじめまして! 妹の双子の冴羅ちゃんの凛紗です!」

「落ち着いて? 意味不明よ」

「ごめんなさい! 冴羅ちゃんの、双子の、妹の、凛紗です」

「はじめまして。本当によく似ている。話し始めなければ分からなかった」

「そう……ですよね。見た目だけですけど」

「違う部分もあるところが双子の良いところよ」

 深町凛紗は情けなさそうな笑顔を見せる。

「ところで別府、今日は凛紗も一緒に良いかしら?」

「そ、そんな悪いですよ!」

「俺は構わない。是非話させてほしい」

「そうですか……。では、お言葉に甘えて。お願いします」
 戸惑いと申し訳なさと嬉しさが混ざったような表情で頭を下げた。

 やはり二人は似ていると思う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?

おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。 『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』 ※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?

さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。 私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。 見た目は、まあ正直、好みなんだけど…… 「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」 そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。 「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」 はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。 こんなんじゃ絶対にフラれる! 仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの! 実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。 

処理中です...