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第3章
3-16コンセプトムービー撮影2
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ドッ!
「「うっ!」」
僕の考えは杞憂だった。
冴羅さんは二人同時に支えていた。すごい力だ。足も速いし泳ぎも速かったし何者なんだ冴羅さん……。
「あ、ごめんなさい……」
そう言いながら冴羅さんが宮国を軽く押すのが見えた。
「いや、ありがとう! 何とも無い!」
自分が謝られたと思った別府のはっきりとした声が聞こえた。
「ああ、いや……」
胸を圧されたからというだけではなさそうな宮国の微かな声が聞こえた。
◇
「失礼」
「あ、じゃあ部屋の奥で録るからね~」
映像部部長の西沖さんがこちらの気が抜けそうな声で出迎えてくれた。君島くんはマイクが置かれた場所にいた。
週明けの放課後、俺はコンピューター室に来た。動画に当てる声の録音するためだ。
動画についての議論の際、ナレーションを入れるということになり、その場で俺に決まった。拒む理由もない。冴羅も応援してくれるしな!
撮影を経て少し変えられた台本を読む。慣れるまで時間がかかるかと思ったが、案外すぐに調子が出て順調に進んだ。これを書いた生徒会書記の後輩のおかげだ。
「はい。ありがとうございます。以上ですね」
「こちらこそありがとう。良い経験になった。完成を楽しみにしている」
退室し時刻を確認する。約束に間に合いそうだ。
「冴羅」
生徒会室に着いて呼びかけた。
「録音終わったのね」
「ついさっきな」
すぐ近くに台本を書いた書記の子がいたので、俺は感謝を告げつつ会話を交わした。
そこまで長くはなかったはずだが、いつの間にか生徒会長は帰っており、代わるように深町の双子の妹がいた。
「直接凛紗と会うのは初めてだったわね」
「は、はじめまして! 妹の双子の冴羅ちゃんの凛紗です!」
「落ち着いて? 意味不明よ」
「ごめんなさい! 冴羅ちゃんの、双子の、妹の、凛紗です」
「はじめまして。本当によく似ている。話し始めなければ分からなかった」
「そう……ですよね。見た目だけですけど」
「違う部分もあるところが双子の良いところよ」
深町凛紗は情けなさそうな笑顔を見せる。
「ところで別府、今日は凛紗も一緒に良いかしら?」
「そ、そんな悪いですよ!」
「俺は構わない。是非話させてほしい」
「そうですか……。では、お言葉に甘えて。お願いします」
戸惑いと申し訳なさと嬉しさが混ざったような表情で頭を下げた。
やはり二人は似ていると思う。
「「うっ!」」
僕の考えは杞憂だった。
冴羅さんは二人同時に支えていた。すごい力だ。足も速いし泳ぎも速かったし何者なんだ冴羅さん……。
「あ、ごめんなさい……」
そう言いながら冴羅さんが宮国を軽く押すのが見えた。
「いや、ありがとう! 何とも無い!」
自分が謝られたと思った別府のはっきりとした声が聞こえた。
「ああ、いや……」
胸を圧されたからというだけではなさそうな宮国の微かな声が聞こえた。
◇
「失礼」
「あ、じゃあ部屋の奥で録るからね~」
映像部部長の西沖さんがこちらの気が抜けそうな声で出迎えてくれた。君島くんはマイクが置かれた場所にいた。
週明けの放課後、俺はコンピューター室に来た。動画に当てる声の録音するためだ。
動画についての議論の際、ナレーションを入れるということになり、その場で俺に決まった。拒む理由もない。冴羅も応援してくれるしな!
撮影を経て少し変えられた台本を読む。慣れるまで時間がかかるかと思ったが、案外すぐに調子が出て順調に進んだ。これを書いた生徒会書記の後輩のおかげだ。
「はい。ありがとうございます。以上ですね」
「こちらこそありがとう。良い経験になった。完成を楽しみにしている」
退室し時刻を確認する。約束に間に合いそうだ。
「冴羅」
生徒会室に着いて呼びかけた。
「録音終わったのね」
「ついさっきな」
すぐ近くに台本を書いた書記の子がいたので、俺は感謝を告げつつ会話を交わした。
そこまで長くはなかったはずだが、いつの間にか生徒会長は帰っており、代わるように深町の双子の妹がいた。
「直接凛紗と会うのは初めてだったわね」
「は、はじめまして! 妹の双子の冴羅ちゃんの凛紗です!」
「落ち着いて? 意味不明よ」
「ごめんなさい! 冴羅ちゃんの、双子の、妹の、凛紗です」
「はじめまして。本当によく似ている。話し始めなければ分からなかった」
「そう……ですよね。見た目だけですけど」
「違う部分もあるところが双子の良いところよ」
深町凛紗は情けなさそうな笑顔を見せる。
「ところで別府、今日は凛紗も一緒に良いかしら?」
「そ、そんな悪いですよ!」
「俺は構わない。是非話させてほしい」
「そうですか……。では、お言葉に甘えて。お願いします」
戸惑いと申し訳なさと嬉しさが混ざったような表情で頭を下げた。
やはり二人は似ていると思う。
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