僕(じゃない人)が幸せにします。

暇魷フミユキ

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第3章

3-14それからの四日間

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 祝日を挟みながら今週が過ぎていった

 草壁はあらゆることに身が入らなくなったみたいだ。徐々に持ち直したものの、最近はちゃんと受けていた授業はおろかバイトまでもがそんな調子でよほど衝撃的だったと窺えた。

 凛紗さんからは引き続き冴羅さんの様子を見守るようお願いされて当然引き受けた。今はどう思っているのか分からないと言っていたことが印象的だった。その際、本当に双子で考えが違うと改めて分かった。

 そして冴羅さんは……怖いほど何も変わらなかった。変わったことと言えば別府と話しているところをよく見かけるようになったぐらい。ただその会話の様子も他の人との違いを感じられなかった。……自慢みたいになるけど、僕と話している時の方が表情があったと思う。

 そうして撮影は遂に明日に迫った。
 あれから会議も無かったから、僕は初めて冴羅さんと別府が長時間近くにいるところに立ち会うことになる。ついでに宮国も。どうなるんだ明日一体……。

「副部長さん。緊張しているのかな?」

 心配してくれる声がやけに染みた。
 後輩たちが来る前のコンピューター室で、幸恵さんが僕の顔を覗き込んできていた。

「まあ……うん」

「大丈夫! なんとかなるよ!」

 なるようにしかならないと思う……あ、撮影の方か。

「それとも他の悩み事? 例えば……冴羅ちゃんのこととか?」

 幸恵さんは本当に心が読めるのかもしれない。もう笑う他ない。
「うん。幸恵さんは聴いた? 別府と付き合ったって」

「聴いたよ」

「……聴いて、どう思った?」

「う~ん……。なんと言うか、ちょっと違うけど、嘘ついているみたいだとは思ったよ。それと、焦っているような感じもしたかな」

 僕は焦りについては分からなかったけど、少なくとも本音は別のところにあることに変わらなさそうだ。

「奏向くんは?」

「いつも通り過ぎると思った。それが聴いた時だけじゃなくて、今日までずっとなんだよね」

「ん? 最近の冴羅ちゃんってことだよね? 結構違うよ?」

「え? そうなの? 例えばどんなところが?」

「靴を履く時これまで右からだったのに左からになってるし、返事がいつもより少し遅いし、冴羅ちゃんが作るお弁当から茶色さ減ってたし」

「違いが微妙過ぎるよ……。偶然じゃないの? でも付き合いの長い幸恵さんが感じた違いだと考えると見逃しちゃいけないところなのかな……」

「奏向くんは夏休みの時とはまた違うって思ってるんだ?」

「……そうだね」

「そっか。なんでいつもと違うのかは分からないけど……今幸せだといいな、冴羅ちゃん」

 願うように呟く幸恵さんに、僕は頷いた。
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