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第2章
2-63散り際 ☆
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「も、もちろんすぐに考えを改めましたよ! 私たちはお互いに大切だったので!」
凛紗が焦って否定している間も、冴羅は落ち着いてこちらを見据えていた。
「そう。大切だったの。だから次に考えたのが、お互いを宮国と近付かせること。そうすれば相手は一緒にいられて幸せ、自分は宮国への思いを断ち切れて幸せ。最初はいわゆる口車に乗せようとしたのだけれど、駄目ね。久し振りに話したことがそれでは。すぐに衝突してしまったわ」
「それで、自分が誰か他の男性といるところ見てもらえれば、心置きなく付き合ってくれると考えました」
「……今、凛紗が話したところまで全部冴羅と凛紗がそれぞれ自分で考えたこと?」
「ええ」
「はい」
「そうか。それで、それも上手くいかなかった」
「そうよ。だって私たちがその相手に選んだのは同じ人、君島奏向なんだもの。ここまで同じだと笑ってしまうわよね」
「なら、君島とは何もしなかったのかな」
「巧い方で、一緒にお出かけしたりと、途中まで乗せられていました。最後は私たちを向き合わせるところまでしてくれて」
「そうか……」
「それで……いろいろ考えたわ」
二人が改まったようにこちらを向いた。
「私たち、あなたから距離を置かせてほしいの。生徒会としては活動するけれど、それ以上関わりをなくしてもらえないかしら」
冴羅が目を伏せて言った。
「……本当に身勝手でごめんなさい」
凛紗が頭を下げた。
「でもこのままだと、宮国さんのことも、冴羅ちゃんのことも、自分のことも、嫌いになってしまいます」
「あ……。うん。よく分かったよ」
僕のことなんてどうでもいい。僕は冴羅が話す凛紗のことも、凛紗が話す冴羅のことも好きだったから。お互いのことが嫌いな二人なんて、見たくなかった。
僕は息を吐き出して、落ち着かせてから話をした。
「ごめん。僕が全部悪かったんだ。……病弱な凛紗とは保健室に行けば話すことができるし、冴羅とはそれに付け込んで話す機会ができる。二人にとっての不都合を利用して、楽しんでいた僕が。だから謝るべきなのは冴羅でも凛紗でもなく、僕なんだ。申し訳ありませんでした」
そう話してから頭を下げた。
「宮国」「宮国さん」
二人の優しい声を聴いて顔を上げると、一緒に切なそうに笑っていた。
「素直に教えてくれたわね。謝らないでほしいのなら感謝するわ。私たちと過ごす時間を楽しいと思ってくれて、ありがとう」
「私なんかに会って宮国さんはどう思っているのか不安でしたが、ここで聴けて良かったです。ありがとうございました」
「え? あれ?」
「最後に言うつもりだったけれど、今言うわ。宮国! あなたは素敵な人と幸せになりなさい!」
「そうです! 優しくて頼りになって楽しい宮国さんならきっと大丈夫です!」
「うん。ありがとう」
僕、二人が好きで良かった。
「……終わりの感じもあるけれど、花火観ていくかしら」
「あ、ああ。忘れかけていたよ」
もう既に周囲は混みあっている。断ってもすぐ立ち去れる状況じゃないし、今の話の後でも断るつもりはなかった。
「それにしてもどうして花火大会に?」
「……好きな人と花火大会、ありがちでしょう?」
「最後だけでも、良い思い出にしたかったんです」
僕はただ頷いた。
「あ、始まるみたいよ」
僕はそれを何度もみたはずだ。
でも、間近でみるそれは今までで一番綺麗に見えた。
「二人こそ、幸せに」
僕のそんな言葉は大きく爆ぜる音に掻き消された。
凛紗が焦って否定している間も、冴羅は落ち着いてこちらを見据えていた。
「そう。大切だったの。だから次に考えたのが、お互いを宮国と近付かせること。そうすれば相手は一緒にいられて幸せ、自分は宮国への思いを断ち切れて幸せ。最初はいわゆる口車に乗せようとしたのだけれど、駄目ね。久し振りに話したことがそれでは。すぐに衝突してしまったわ」
「それで、自分が誰か他の男性といるところ見てもらえれば、心置きなく付き合ってくれると考えました」
「……今、凛紗が話したところまで全部冴羅と凛紗がそれぞれ自分で考えたこと?」
「ええ」
「はい」
「そうか。それで、それも上手くいかなかった」
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「なら、君島とは何もしなかったのかな」
「巧い方で、一緒にお出かけしたりと、途中まで乗せられていました。最後は私たちを向き合わせるところまでしてくれて」
「そうか……」
「それで……いろいろ考えたわ」
二人が改まったようにこちらを向いた。
「私たち、あなたから距離を置かせてほしいの。生徒会としては活動するけれど、それ以上関わりをなくしてもらえないかしら」
冴羅が目を伏せて言った。
「……本当に身勝手でごめんなさい」
凛紗が頭を下げた。
「でもこのままだと、宮国さんのことも、冴羅ちゃんのことも、自分のことも、嫌いになってしまいます」
「あ……。うん。よく分かったよ」
僕のことなんてどうでもいい。僕は冴羅が話す凛紗のことも、凛紗が話す冴羅のことも好きだったから。お互いのことが嫌いな二人なんて、見たくなかった。
僕は息を吐き出して、落ち着かせてから話をした。
「ごめん。僕が全部悪かったんだ。……病弱な凛紗とは保健室に行けば話すことができるし、冴羅とはそれに付け込んで話す機会ができる。二人にとっての不都合を利用して、楽しんでいた僕が。だから謝るべきなのは冴羅でも凛紗でもなく、僕なんだ。申し訳ありませんでした」
そう話してから頭を下げた。
「宮国」「宮国さん」
二人の優しい声を聴いて顔を上げると、一緒に切なそうに笑っていた。
「素直に教えてくれたわね。謝らないでほしいのなら感謝するわ。私たちと過ごす時間を楽しいと思ってくれて、ありがとう」
「私なんかに会って宮国さんはどう思っているのか不安でしたが、ここで聴けて良かったです。ありがとうございました」
「え? あれ?」
「最後に言うつもりだったけれど、今言うわ。宮国! あなたは素敵な人と幸せになりなさい!」
「そうです! 優しくて頼りになって楽しい宮国さんならきっと大丈夫です!」
「うん。ありがとう」
僕、二人が好きで良かった。
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僕はただ頷いた。
「あ、始まるみたいよ」
僕はそれを何度もみたはずだ。
でも、間近でみるそれは今までで一番綺麗に見えた。
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僕のそんな言葉は大きく爆ぜる音に掻き消された。
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