120 / 278
第2章
2-60いいよ
しおりを挟む
一昨日の深町さんたちからの連絡には驚かされた。
なるほど。最初に二人のことを幸恵さんから聴いた時は厄介なことになっていると思ったものだが、そこから変わろうとしているようだ。
私としても協力することはやぶさかではない。
>私は構わないよ
さて、幸恵さんは……。
>いいよ~
>明日とかどう?
二言目に日取りとは話が早い。
その後やり取りの末、二日経った今日に予定が決まった。我々としてはいつもの場所、学習室がある施設の外で待っていた。
やがて前方によく似た二人組が見えた。
「ごめんなさい。待たせたわ」
「すみません。今日はよろしくお願いします」
先に謝りながらこちらに近寄ってきたのが冴羅さんで、そのあとに頭を下げたのが凛紗さん……で良いはず。先日は確かに間近で見てはいたのだがあやふやで、幸恵さんに教えられてやっと違いを理解できた。
「うん。いいよ」
妙に力強く幸恵さんが言った。
「その……許してくれたってことよね?」
「許す? そうだね~なんでも許しちゃうね~」
二人は約束の時間に遅れたわけではない。ならば待ったことに対して怒ったのかと言えば、幸恵さんがそんな無責任な感情は抱くようなことはしない。旧来の友人なら尚更だ。
「なんでも……」
凛紗さんが幸恵さんの胸を見詰めていた。
「凛紗?」
冴羅さんはどこか冷たさのある声で呼んで、凛紗さんは頭を振る。
幸恵さんはいつの間にか両手を使って姉妹二人の手を握っていた。
そして、驚く双子に言った。
「すごく良いよ! 今の二人が今までで一番良い!」
これで冴羅さんの誤解も解けたことだろう。
冴羅さんと凛紗さんとの仲をずっと見てきた幸恵さんの言葉は、誰が言うより深いはずだ。
「ふふっ。ありがとう」
「えへへ。ありがとう」
同時に感謝を述べた。
「それから、今日は急にお願いした無理を聞いてくれたことも感謝しているわ」
「全然。むしろ嬉しかったよ」
「――そう。とても助かるわ」
「油井さんがあんなにすんなり許してくれるとは思っていなかったです。私たちとあまり関わりがないので難しいと思っていました」
「そうでもない。幸恵さんからはこれまでのことを聴いて、君島からは近況を聴いていた。嫌味に聴こえるだろうが、君島を選んだから、私は君たちのことを知り、見届けたくもなった、と言える。そこで今回の話が来たのでね、喜んで引き受けさせてもらった」
「そうでしたか……。本当にありがとうございます。なんというか、頑張ります!」
「頑張るとも違う気がするけれど……ありがとう。どうお礼すれば良いか」
「あ、じゃあアイス買ってもらおうかな」
「……それで良いの幸恵? もう少し違うものを想定していたのよ?」
「うん。良いよ」
「分かったわ。買ってあげるわよ」
仕方なさそうに言う冴羅さんだった。
なるほど。最初に二人のことを幸恵さんから聴いた時は厄介なことになっていると思ったものだが、そこから変わろうとしているようだ。
私としても協力することはやぶさかではない。
>私は構わないよ
さて、幸恵さんは……。
>いいよ~
>明日とかどう?
二言目に日取りとは話が早い。
その後やり取りの末、二日経った今日に予定が決まった。我々としてはいつもの場所、学習室がある施設の外で待っていた。
やがて前方によく似た二人組が見えた。
「ごめんなさい。待たせたわ」
「すみません。今日はよろしくお願いします」
先に謝りながらこちらに近寄ってきたのが冴羅さんで、そのあとに頭を下げたのが凛紗さん……で良いはず。先日は確かに間近で見てはいたのだがあやふやで、幸恵さんに教えられてやっと違いを理解できた。
「うん。いいよ」
妙に力強く幸恵さんが言った。
「その……許してくれたってことよね?」
「許す? そうだね~なんでも許しちゃうね~」
二人は約束の時間に遅れたわけではない。ならば待ったことに対して怒ったのかと言えば、幸恵さんがそんな無責任な感情は抱くようなことはしない。旧来の友人なら尚更だ。
「なんでも……」
凛紗さんが幸恵さんの胸を見詰めていた。
「凛紗?」
冴羅さんはどこか冷たさのある声で呼んで、凛紗さんは頭を振る。
幸恵さんはいつの間にか両手を使って姉妹二人の手を握っていた。
そして、驚く双子に言った。
「すごく良いよ! 今の二人が今までで一番良い!」
これで冴羅さんの誤解も解けたことだろう。
冴羅さんと凛紗さんとの仲をずっと見てきた幸恵さんの言葉は、誰が言うより深いはずだ。
「ふふっ。ありがとう」
「えへへ。ありがとう」
同時に感謝を述べた。
「それから、今日は急にお願いした無理を聞いてくれたことも感謝しているわ」
「全然。むしろ嬉しかったよ」
「――そう。とても助かるわ」
「油井さんがあんなにすんなり許してくれるとは思っていなかったです。私たちとあまり関わりがないので難しいと思っていました」
「そうでもない。幸恵さんからはこれまでのことを聴いて、君島からは近況を聴いていた。嫌味に聴こえるだろうが、君島を選んだから、私は君たちのことを知り、見届けたくもなった、と言える。そこで今回の話が来たのでね、喜んで引き受けさせてもらった」
「そうでしたか……。本当にありがとうございます。なんというか、頑張ります!」
「頑張るとも違う気がするけれど……ありがとう。どうお礼すれば良いか」
「あ、じゃあアイス買ってもらおうかな」
「……それで良いの幸恵? もう少し違うものを想定していたのよ?」
「うん。良いよ」
「分かったわ。買ってあげるわよ」
仕方なさそうに言う冴羅さんだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる