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第2章

2-55祭りは晴れやかに ☆

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 十日なんてあっという間で、毎年恒例の市内のお祭りが開催される八月第三土曜・日曜を迎えた。

 深町姉妹との待ち合わせ時間よりかなり前に家を出た。場所は二人ともにリュヌ前と伝えている。
 鉢合わせてそのまま店内を使う計画だけど、来る時間がずれたら先に来たどちらかとしばらく歩き、遅く来た方は草壁か木庭から伝えてもらえることになっている。
 店の鍵を借り、感謝するついでにリュヌが出店する屋台の様子を見ようと思っていた。

 売り出す商品はかき氷で、よくあるシロップではなく自家製ジャムなどを使うらしい。卯月さん曰く、「だって色が違うだけで同じ味とか悲しいんだもん」とのこと。

 屋台が立ち並ぶ通りを少し歩き、いつもの喫茶店の前に屋台が見えた。
 そこはここまで見てきた中でも繁盛しているようだった。店長のこだわりのおかげか、それとも……

 仲の良さそうな二人の店員のおかげか。
 ただ揃いの法被を着ているからというだけじゃない。その息の合った連携は、どこか親子連れや同じような男女二人組を引き寄せるものがあるのかもしれない。……なんとなくだけど、同年代ぐらいのカップルと比べると草壁・木庭の方が熟れた関係のような気がする。

 一旦落ち着いたところで声を掛けた。
「お疲れ様。今日は協力してくれてありがとう」

「お、きたきた。えっと、鍵……」

「これぐらいならな。……まあ、頑張れよ」
 そう言った木庭も、鍵を渡そうとした草壁も、真剣な面持ちだった。

 僕は頷いて応えた。



 いよいよ時間も近付いて来た。
 周りを探して……待ち人を見つけた。
 二人揃ってこちらに向かって来ていた。
 もう一人も同じ場所で待ち合わせをしていると知って、一緒にここに来ることにしたのだろう。二人が二人とも、自分が僕、相手が宮国と行くことを疑わずに。

 僕は呼吸を整えた。
「……久し振り」

「ええ。待たせたわね」

「「はい。お待たせしました」」
 同時に弾んだ声で言った。

 そして、同様の反応を見せた。
「……宮国はいないのかしら?」
「……宮国さんは来てないですか?」

 同じような目を向けられ、同じような声で訊かれた。
 こんな感情を向けられるほど……いや、こんな感情を抱くほど、最初は深入りするつもりは無かった。

「ごめん。今日はここに来ないよ」

 僕は二人を裏切った。
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