111 / 216
第2章
2-51午後:会長、副会長 ☆
しおりを挟む
昼食後、僕は冴羅さんたちと、宮国は凛紗さんたちと行った。
僕と冴羅さんは幸恵さんと油井から離れ、一緒にベンチに座った。
「はあ……午前中はごめんなさい。妹の様子はどうだったかしら」
「泳ぎが苦手と言ってはいましたけど、楽しそうでしたよ」
「……そう。午後からはより楽しいと良いわ」
「そうだね。……凛紗さんと宮国はどんな関係なの?」
櫓に訊けば大方は分かるだろうけど、冴羅さんの口から聴いてみたくなった。
「元々は同じ中学校に通っていたのよ。でも一年の頃から知り合いというわけではなくて。三年になって私を含めて同じ組で席も近くになって、三人でよく話すようになったのよ」
「話すって、さっきみたいな?」
「あんな風になることなんてほとんどないわよ! 確かに少しはあったけれど……。まあ、でもだからこそかもしれないわね、私より妹の方と気兼ねなく話す仲になってくれたの。その上……」
冴羅さんは言葉を途切れさせ、考え込み、意を決したように頷き、また話を続けた。
「君島には伝えるけれど、妹は体が弱くて保健室登校することもあったのよ。それを彼は出来る限り会いにいってくれて。妹も喜んでいたわ。そこまでしてくれる人なんてそうはいないのに、どうして否定するのかしらね」
「……冴羅さんは宮国のことをどう見ているの?」
「生徒会の会長よ」
冴羅さんは迷いなく答えた。
「そのまんまですけど……」
「それは今結果としてそうなっているだけよ。自ら動いて、自ずと人が集まって、自然と先導して。中学三年の時、彼は学級委員で私は生徒会の書記だったけれど、その時の会長より相応しいと思ったものよ」
「そういうこと。もしかして直接伝えたりしたとか?」
「どうだったかしらね。向いているとは思うけれど、彼が会長になったことが本当にみんなのためになるとは限らないもの」
「宮国に何か気に入らないことでも?」
「確かにあるわね」
その言葉を真剣に言ったと思ったら、すぐにいたずらっぽく笑った。
「なんてね。そういう個人的なことではなくて、私たちが生徒会としてできることを生徒会みんなで模索する必要があるという意味よ」
「冴羅さん、生徒会副会長ですね」
「そのままじゃない」
二人して笑った。
これまで関わりがあまり無かったから勝手に無愛想なのかと思っていた。
もし文化祭で同じ目的の下で活動をしたとしても、これ程までにいろいろな表情を見ることができただろうか。
僕と冴羅さんは幸恵さんと油井から離れ、一緒にベンチに座った。
「はあ……午前中はごめんなさい。妹の様子はどうだったかしら」
「泳ぎが苦手と言ってはいましたけど、楽しそうでしたよ」
「……そう。午後からはより楽しいと良いわ」
「そうだね。……凛紗さんと宮国はどんな関係なの?」
櫓に訊けば大方は分かるだろうけど、冴羅さんの口から聴いてみたくなった。
「元々は同じ中学校に通っていたのよ。でも一年の頃から知り合いというわけではなくて。三年になって私を含めて同じ組で席も近くになって、三人でよく話すようになったのよ」
「話すって、さっきみたいな?」
「あんな風になることなんてほとんどないわよ! 確かに少しはあったけれど……。まあ、でもだからこそかもしれないわね、私より妹の方と気兼ねなく話す仲になってくれたの。その上……」
冴羅さんは言葉を途切れさせ、考え込み、意を決したように頷き、また話を続けた。
「君島には伝えるけれど、妹は体が弱くて保健室登校することもあったのよ。それを彼は出来る限り会いにいってくれて。妹も喜んでいたわ。そこまでしてくれる人なんてそうはいないのに、どうして否定するのかしらね」
「……冴羅さんは宮国のことをどう見ているの?」
「生徒会の会長よ」
冴羅さんは迷いなく答えた。
「そのまんまですけど……」
「それは今結果としてそうなっているだけよ。自ら動いて、自ずと人が集まって、自然と先導して。中学三年の時、彼は学級委員で私は生徒会の書記だったけれど、その時の会長より相応しいと思ったものよ」
「そういうこと。もしかして直接伝えたりしたとか?」
「どうだったかしらね。向いているとは思うけれど、彼が会長になったことが本当にみんなのためになるとは限らないもの」
「宮国に何か気に入らないことでも?」
「確かにあるわね」
その言葉を真剣に言ったと思ったら、すぐにいたずらっぽく笑った。
「なんてね。そういう個人的なことではなくて、私たちが生徒会としてできることを生徒会みんなで模索する必要があるという意味よ」
「冴羅さん、生徒会副会長ですね」
「そのままじゃない」
二人して笑った。
これまで関わりがあまり無かったから勝手に無愛想なのかと思っていた。
もし文化祭で同じ目的の下で活動をしたとしても、これ程までにいろいろな表情を見ることができただろうか。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる