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第2章
2-44道中:名前の理由
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「あ、意外と大丈夫そう!」
「くれぐれも安全運転でお願いしますよ?」
「は~い」
「ところで、僕らに必要以上に目を向けられているのでそろそろ……」
「その……卯月っていうのはあだ名みたいなもので、いや、本当は旧姓なんだけど」
大丈夫そうと宣言された車が蛇行を始めた。車内大騒ぎ。
「すみません……。説明も運転も疎かになっているのである程度僕が話します」
「そうして……」
「今言った通り『卯月』は旧姓だそうで、本名は結婚して『子日』に変わっているんだよね。それでも『卯月』を名乗り続けているのは、店を通して付き合いもあったけど、一番はあの店の名前が『リュヌ』だから」
「ん? 何それ? どういうこと?」
草壁が疑問を口にする。
「『リュヌ』はフランス語とかで『月』のこと。だからその店の店長が『子日』になることに違和感があったらしいんだよね。あと単に『卯月茉白』っていう名前が好きらしい。それが店で『卯月』を名乗っている理由だそうだよ。こんな感じでいいですか?」
「ありがとう。説明上手で助かるよ」
僕の問いかけに前を向いたままそう返す卯月(子日)さん。
「こんな風に騙すようなことしてごめんね。ただ、私のことと一緒にお店のことも覚えてもらえるのは都合が良くて。そのおかげか分からないけど今でも雑誌とかに載せてもらえるし」
……車内には「その見た目のおかげもありそうだな~」とか思っていそうな雰囲気が漂った。「え? 何?」
「その……もしかして、あのお店で今の旦那様に出会ったのでしょうか?」
凛紗さんこの手の話も好きでしたか。
「ああ~……あれ? 卯月さんが高校の頃に会った方じゃなかったでしたっけ」
「も~どんどん私のことがみんなに知られちゃう」
九人から笑いやら謝罪やらがあって、卯月さんは恥ずかしがりながら話し始めた。
「リサちゃんの話も合ってる。ミラちゃんが言ってくれたことも私が伝えた通り。確かに高校で会ったけど、卒業後に別れ別れになって連絡も取れなくなっちゃって、それでもまた会いたくて、なら有名人になろうと思ったんだけどアイドルとかにはなれないだろうしってことで得意だった料理、レストランにしようと決めたの。その時はソナくんのお母さんに沢山協力してもらったな~」
聴いたことが無いと思えば自分が絡むからか、お母さん。
「その後は開店して、会えて、結婚したってこと」
「すごい人生ですね……」
新城は感嘆していた。
「そうだよね~。あ! 見習っても良いけど真似しちゃ駄目だよ? 運が良かっただけでどうなってたか分からないんだから。まずはいきなり連絡取れなくならないようにすること!」
今度は「は~い」なんて声が響いたけど、正に僕が、ここにいる同級生たちにそうするつもりだった。
卯月さんに言われたらな……。
「くれぐれも安全運転でお願いしますよ?」
「は~い」
「ところで、僕らに必要以上に目を向けられているのでそろそろ……」
「その……卯月っていうのはあだ名みたいなもので、いや、本当は旧姓なんだけど」
大丈夫そうと宣言された車が蛇行を始めた。車内大騒ぎ。
「すみません……。説明も運転も疎かになっているのである程度僕が話します」
「そうして……」
「今言った通り『卯月』は旧姓だそうで、本名は結婚して『子日』に変わっているんだよね。それでも『卯月』を名乗り続けているのは、店を通して付き合いもあったけど、一番はあの店の名前が『リュヌ』だから」
「ん? 何それ? どういうこと?」
草壁が疑問を口にする。
「『リュヌ』はフランス語とかで『月』のこと。だからその店の店長が『子日』になることに違和感があったらしいんだよね。あと単に『卯月茉白』っていう名前が好きらしい。それが店で『卯月』を名乗っている理由だそうだよ。こんな感じでいいですか?」
「ありがとう。説明上手で助かるよ」
僕の問いかけに前を向いたままそう返す卯月(子日)さん。
「こんな風に騙すようなことしてごめんね。ただ、私のことと一緒にお店のことも覚えてもらえるのは都合が良くて。そのおかげか分からないけど今でも雑誌とかに載せてもらえるし」
……車内には「その見た目のおかげもありそうだな~」とか思っていそうな雰囲気が漂った。「え? 何?」
「その……もしかして、あのお店で今の旦那様に出会ったのでしょうか?」
凛紗さんこの手の話も好きでしたか。
「ああ~……あれ? 卯月さんが高校の頃に会った方じゃなかったでしたっけ」
「も~どんどん私のことがみんなに知られちゃう」
九人から笑いやら謝罪やらがあって、卯月さんは恥ずかしがりながら話し始めた。
「リサちゃんの話も合ってる。ミラちゃんが言ってくれたことも私が伝えた通り。確かに高校で会ったけど、卒業後に別れ別れになって連絡も取れなくなっちゃって、それでもまた会いたくて、なら有名人になろうと思ったんだけどアイドルとかにはなれないだろうしってことで得意だった料理、レストランにしようと決めたの。その時はソナくんのお母さんに沢山協力してもらったな~」
聴いたことが無いと思えば自分が絡むからか、お母さん。
「その後は開店して、会えて、結婚したってこと」
「すごい人生ですね……」
新城は感嘆していた。
「そうだよね~。あ! 見習っても良いけど真似しちゃ駄目だよ? 運が良かっただけでどうなってたか分からないんだから。まずはいきなり連絡取れなくならないようにすること!」
今度は「は~い」なんて声が響いたけど、正に僕が、ここにいる同級生たちにそうするつもりだった。
卯月さんに言われたらな……。
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