僕(じゃない人)が幸せにします。

暇魷フミユキ

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第2章

2-38この関係でなければ、言っていた ☆

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 僕らはショッピングモールを後にし、来た道を戻った。
 凛紗さんは俯きながら歩いていた。ただ、元気が無いわけではなく、何か考えている様子だった。

「君島さん」

「はい?」

 僕の返答を聴いてから、こちらを向いて立ち止まった。

「今日はありがとうございました。楽しかったです」

「こちらこそ。そう言ってもらえて嬉しいです」

 僕の答えを受けて、凛紗さんの口角が上がった。
「やっぱり、そうですよね」

 清々しい表情で話を続ける。
「ごめんなさい。最初、私が楽しいと思えるようにしたいと君島さんは言っていましたけど、どんな意味で言っているのか理解していませんでした。私は邪魔者だと思っていました。でも、私が君島さんに合わせて我慢していなかったことを君島さんが安心されていたのを見て、やっと理解できました。私の遠慮こそ、君島さんには邪魔だったんですね」

 その目は輝いているように見えた。
 今度は、面と向かって話せそうだ。 

「気を遣ってもらえるのは当然嬉しいけど、それより僕を気にせず楽しんでもらえた方が嬉しい。僕は手を引いてあげられたり好き勝手したかったりするわけじゃないから。強く引っ張れる人の方が頼りになるとは思うけどね」

 凛紗さんが首を横に振った。
「すごく頼りになりました! それに、君島さんより強かったら怖くなっていたと思います。優しくしてくれたこともありがたかったです」

「ありがとう。凛紗さんのこと、今日で分かってきた気がするよ」

「私も……沢山のことを知ることができました」

 凛紗さんは、一度開けた口をまた閉じた。
 何を言いたかったのか、分かってしまった。
 この関係でなければ、僕が言っていた。
 例え手を引いてあげられないような性格であっても。

「……今度、プールに行くんだよね」

「はいっ! 楽しみです!」

 近い言葉に代えて訊くと、凛紗さんも元気に答えてくれたけど、効果は無かった。
 凛紗さんはまた俯きながら歩いた。

「……我慢してほしくないとのことでしたので、正直に言います」

 僕たちの顔が見合う。

「こういう時間は、やっぱり寂しいですね」
 凛紗さんは照れも交えてそう言った。
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