僕(じゃない人)が幸せにします。

暇魷フミユキ

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第2章

2-36させたくなかったこと ☆

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 ……まあ、怖いと言えば怖いんだけど、大体分かっているからというだけじゃなくて、話が分かりづらいのもあって細かいところが最後まで気になってしまった。昨日のこの映画に対する違和感は間違っていなかったらしい。

 凛紗さんはというと、驚いているというよりは感心しているかのようだった。客席に明るさが戻って見えた表情も満足そうだ。やっぱり、双子でも違う。

 人が減るのを待ちつつ質問した。
「良かった?」

「はい! 君島さんは?」

「すみません、正直に言います。怖くはあったけど、話がちょっと……」

「あ……確かにそうですね。そういう監督さんだったので……。私こそすみません、先に言えば良かったですね」

「大丈夫。それより、凛紗さん本当に好きなんだね」
 何気無く訊いたつもりだった。

 でも、凛紗さんは答えに迷っているかのように、一度開けた口をまた閉じた。

「……はい」
 遂に聴けた答えは意外と短かった。

 僕たちも外に出る。
 その間にも、まだ何か話したそうに見えて僕は黙っていた。
 エントランスに出て、同じ映画を観ていた覚えのある人たちを凛紗さんは眺めているようだった。

「……変だと、思っていました。ホラー映画が好きなこと。人を怖がらせる作り物ですし、現に姉は嫌いですし」

 情けなさそうに笑って話し続ける。
「よく考えればそうじゃなければ何本も作られないって分かりますけど、でも、好きな人が多いことを今日ここに来て実感できました。あと前の方とかではない観やすい位置を選んでくださったこととか、一緒に観てくださったこととか。……本当にありがとうございます!」

 僕は凛紗さんにあまり気を遣わせたくないと思っていた。けど、こうして気を遣わせてしまった。
 でもその気遣い以上に、本気で言っていることも伝わってきた。こんなに喜んでもらえたことが本当に嬉しかった。

「こちらこそ、楽しんでもらえて何よりです」

 映画館を出たところで、気になっていたことを訊いた。
「凛紗さん、最初にホラー映画を観た理由って覚えてる?」

「……度胸を付けるためです。見ての通り失敗しました」

「ああ……。いや、趣味が出来たのは良かったんじゃないかな!」



「何か食べようか」

「はい」

「どこか行きたい所ある? これが一覧だけど」
 地図を見つけてそれを凛紗さんに渡した。

「あ……すごい数ですね。そうですね……」
 悩んでいるというより数の多さに当てられているらしい唸り方だった。

 それを見かねて一緒に見て、
「パン屋でもいいかな」
 と提案した。

 凛紗さんは当然快諾した。
 僕に付き添う――すなわち僕の選択に従う。凛紗さんは嫌だろうし僕も嫌だからそんなことをさせたくなかったけど、こうして役に立つとは思わなかった。
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