僕(じゃない人)が幸せにします。

暇魷フミユキ

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第2章

2-26終業式の後

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 明くる日、終業式を迎えた。
 本当にいろんなことがあった一学期だった。

 通知表が返ってきたわけだけど、僕たちの苦労の甲斐もあって草壁の成績が高校入って一番だったそうだ。
 そのことは一緒になって喜んだものの、正直成績としてはそこまで良くないので複雑だった。変わったのは一学期の途中だったし厳しいことは木庭に任せよう。

 いつも気が向いたときに寄る喫茶店のリュヌに、終業式の日は必ず行くことにしていた。僕が夏休みに入るとほとんど行かなくなるから挨拶目的だ。
 僕と草壁のところに新城と木庭が一旦集まり、「また後で」と草壁・木庭を先に行かせた。これまでは僕だけが草壁だけにその言葉を掛けていたのに、この一学期で変わったんだと思うと感慨深かった。

「そういや君島。この夏休みお前忙しすぎない?」

「……草壁と卯月さんから聴いた?」

「話しちゃったからには本当のことも話しておきたいってことで。悪い。そもそも最初に草壁ちゃんと店長さんが話していることが気になって俺が訊き出したんだ。木庭も聴いてる」

「最初に知った経緯が考えてた通りすぎてたよ……。でも草壁らしいよ。本当のことまで伝えるところも」

「だよな~。正直で良いよな~」

「隠し事が出来ない……」

「いやあるだろ! 隠し事の一つや二つ!」

「でも教えてって頼んだら?」

「教えてくれそうな気がする」

 僕たちは吹き出して笑った。

「な? 正直な子だろ?」

「うん。そうだと思う」

「それでさ、草壁ちゃんは心配もしていて、なら四人で話し合おうってことになったってわけ。ありがたく思え」

「うんありがとう。……え今から?」

「ああ」

 棒読みの感謝だけで済まそうと思ったのにあまりの唐突さに驚いてしまった。



 僕たちが再び落ち合ったリュヌ。
 そこに珍客もいた。

「櫓?」

「やあ、待っていたよ」

「あ、僕に用だった?」

「いや。皆にも聴いてもらう方がいいだろう」

 僕たちは顔を見合せ、カウンター席に櫓、僕、新城と並んで座った。

「それで?」

「これを」
 差し出されたのはチケットだった。

「ああ、あの大きいプールの施設か」
 木庭は心当たりがあったらしい。

「知ってるの?」

「たまにドラマの撮影とかに使われたりするぐらい有名なところだ。南東の方だったか」

「そう。そんな所のを手に入れる機会があって、是非使ってほしいんだ」

「櫓は?」
 新城は気を遣う。

「ああ。卯月店長と君島にはお世話になったからな。関係する人たちにも恩返しだ」

「ありがたいけど遠くないか? 電車とバスで行くのか」

「あ、いらっしゃい。みんな来たね」
 卯月さんが厨房から出てきた。

「その話してるね」

「ええ。交通手段について話そうとしていたところです」

「分かった。じゃあ言っちゃうけど、私が送るね」
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