僕(じゃない人)が幸せにします。

暇魷フミユキ

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第2章

2-20いつものお礼 ☆

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 その日の放課後、後輩たちが帰り君島と西沖が残ったコンピューター室。
 君島は動画投稿サイトを確認する。

「あ、動画公開されてる」

「もう? 今引き渡したのに早いんだね」

「これで一学期の部活は全部終わりか~」

「早いね~。光陰矢の如しだね。矢より光の方が速いと思うけど」

「故事成語だから目を瞑ってあげて? 矢の方が速さを捕らえやすかっただろうし」

「それもそうだね。こうも早いと何かやっていないことあるような気になっちゃうよね」

 君島は思うところがあるような顔を見せ、目を逸らす。
 もう一度西沖の方を見て、口を開く。
「いや、大丈夫だよ。気にせず油井のこと手伝うのが良いよ」

「本当? じゃあそうする。ありがとう」

 西沖は小さく頷いて意を決する。
「奏向くんは? 何か思い残しとか、迷っていることとか。例えば、冴羅ちゃんのこと」

 君島、狼狽える。

「あ、いや、ごめんね。そうなのかなって思うことがあっただけだから」

「やっぱりすごいな。本当にその通り。もしかしてこの間の会議の時?」

 西沖は首肯する。

「そうなんだ……。でも、ごめん。気になると思うけど、詳しくは言えない」

「ううん、大丈夫。詮索したり問い詰めたりしたいわけじゃない。ただ、もし奏向くんが悩んでいるなら力になりたいって思って」

 呆然とする君島。
「いいの?」

「もちろん! 奏向くん、福成くんが私に相談できるようにしてくれたんでしょ。冴羅ちゃんもいつも気を遣ってくれて相談に乗ってくれるし。そのお礼に、今度は二人からの相談に乗りたいんだ」

 君島は感じ入るように、息を深く吐いた。
「ありがとう。その気持ちだけで嬉しいよ」



 草壁も幸恵さんも、彼女たちらしい思いをそれぞれに打ち明けてくれた。そしてそれは僕の浅はかな憂慮や期待なんか追い付きもしないものだった。
 対して、冴羅さんにも凛紗さんにも草壁にも幸恵さんにも、僕は曖昧に返している。

 僕はいよいよ決断を下さなければならない。
 どちらも断るのが無難なんだろう。これ以上事を複雑にすることは無い。……ということを理由にはできない。なら方法が間違っていて、直接話し合うべきだからとか? そんなこと僕には言えない。
 ならば一方だけ引き受けるか。……一番無い。どっちかに肩入れする理由も意味も無いのに誤解を招きそうなことできません。
 そうなると、両方引き受ける……。絶対僕の手に負えない。バレると思う。バレた方が良いのか。僕が姉妹にどちらも同じことを考えていたと話してしまう方が早くない?

 それに、いずれを選んだとしても草壁と幸恵さんは何を思うのだろう。僕の考えは及ばないけど、二人に影響しないはずがないのだから考えてしまう。場合によっては上手く離れられそうだけど、あの様子を見るに今まで通りのままの可能性も充分にある。

 とにかく手がかりが無いものか……。
 双子姉妹の関係性に違和感があったし、明日お互いのことを訊いてみようかな。
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