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第2章
2-10聴いてください! ☆
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「……じゃあ訊かせてもらうね。なんで尾行していたの?」
すると凛紗さんは、より強張った声で答えた。
「話しかけたかったんです」
「声を掛ける機会を窺ってたってこと?」
「そうです! 本当にごめんなさい! 始めて会う人に話しかけるようなことをそんなにしたことなくて!」
「ああ、異性ならなおさらね。僕で良かったよ。いつもぞんざいに扱われたり突拍子もないこと言われたりするからこのくらい気にしないよ。でもさっきの行動は罪に問われかねないからね」
「申し訳ありません……」
「それで、何を僕に?」
僕の質問に凛紗さんは初めてこちらを向いた。
その顔は、横から見るよりも染め上がっていた。
こんなの何度だって緊張する。でもこれ、もしかして……?
「あのっ!」
ここまでで一番大きい凛紗さんの声で、僕の思考は真っ白になってしまった。
「聴いてください!」
「はいっ!?」
「付き合ってほしいんです!!」
ああ……当たってた? い、いや、冷静になるんだ。今度こそどこかに着いていってほしいんだろう!
「どこでも――」
「夏休み中!」
やっぱり?
「ご、ごめんなさい。やっぱり無理ですよね。今名前も知ったばかりの尾行してきた女なんて」
「引き下がるの早いよ。話ぐらいなら聴くから」
「本当ですか? ありがとうございます。その……姉の好きな人と、私が、仲良さそうだと姉に勘違いされてしまって。だから他の相手がいるって見せれば、姉は私に気を遣わずにいてくれるかと思いまして」
双子ってここまで考えること一緒なの!? え、別人と思ったけど騙されているのかな? 本当のところは言動も見た目も変えた同一人物だったりする?
「……話して今更自分でおぞましく感じてきました……。うう、でも……」
「――そうだ、なんで僕にしたの?」
「あ、それは卯月さんに相談したら君島さんを教えてくださって。同級生の人が卯月さんと昔から親しくしていたなんて知らなかったです」
今度は卯月さんか。
最近は草壁を中心とした僕、木庭、新城の関係を静観していると思ったんだけどな。
「ご、ごめんなさい。私から提案しておいて勝手ですけど、一旦考えさせてください。本当にごめんなさい!」
そう言って頭を下げた。
僕はまた困惑した。
提案を引き揚げたことじゃない。この話をどうするかだ。
もう良く分からない。複雑すぎて思考が追い付かない。どうするのがいいんだろう?
たださっき持ち帰って正しかったことは分かる。
「うん、僕も考えておく」
「ごめんなさい! ありがとうございます!」
彼女は立ち上がって、何度も頭を下げた。
「お気をつけて! う……尾行した身でこんなこと言う筋合い無いですよね。本当に申し訳ありませんでした!」
「もう気にしなくて大丈夫だから! また学校かリュヌで」
「あ……はい! ありがとうございます! 失礼します!」
過剰な感じだけど、悪い人じゃないな。
喋りの勢いそのままにそそくさと帰る凛紗さんを僕は見送った。今の|一時(いっとき)が嵐のようだとすれば、その姿は吹き飛ばされる雛鳥を思わせた。
すると凛紗さんは、より強張った声で答えた。
「話しかけたかったんです」
「声を掛ける機会を窺ってたってこと?」
「そうです! 本当にごめんなさい! 始めて会う人に話しかけるようなことをそんなにしたことなくて!」
「ああ、異性ならなおさらね。僕で良かったよ。いつもぞんざいに扱われたり突拍子もないこと言われたりするからこのくらい気にしないよ。でもさっきの行動は罪に問われかねないからね」
「申し訳ありません……」
「それで、何を僕に?」
僕の質問に凛紗さんは初めてこちらを向いた。
その顔は、横から見るよりも染め上がっていた。
こんなの何度だって緊張する。でもこれ、もしかして……?
「あのっ!」
ここまでで一番大きい凛紗さんの声で、僕の思考は真っ白になってしまった。
「聴いてください!」
「はいっ!?」
「付き合ってほしいんです!!」
ああ……当たってた? い、いや、冷静になるんだ。今度こそどこかに着いていってほしいんだろう!
「どこでも――」
「夏休み中!」
やっぱり?
「ご、ごめんなさい。やっぱり無理ですよね。今名前も知ったばかりの尾行してきた女なんて」
「引き下がるの早いよ。話ぐらいなら聴くから」
「本当ですか? ありがとうございます。その……姉の好きな人と、私が、仲良さそうだと姉に勘違いされてしまって。だから他の相手がいるって見せれば、姉は私に気を遣わずにいてくれるかと思いまして」
双子ってここまで考えること一緒なの!? え、別人と思ったけど騙されているのかな? 本当のところは言動も見た目も変えた同一人物だったりする?
「……話して今更自分でおぞましく感じてきました……。うう、でも……」
「――そうだ、なんで僕にしたの?」
「あ、それは卯月さんに相談したら君島さんを教えてくださって。同級生の人が卯月さんと昔から親しくしていたなんて知らなかったです」
今度は卯月さんか。
最近は草壁を中心とした僕、木庭、新城の関係を静観していると思ったんだけどな。
「ご、ごめんなさい。私から提案しておいて勝手ですけど、一旦考えさせてください。本当にごめんなさい!」
そう言って頭を下げた。
僕はまた困惑した。
提案を引き揚げたことじゃない。この話をどうするかだ。
もう良く分からない。複雑すぎて思考が追い付かない。どうするのがいいんだろう?
たださっき持ち帰って正しかったことは分かる。
「うん、僕も考えておく」
「ごめんなさい! ありがとうございます!」
彼女は立ち上がって、何度も頭を下げた。
「お気をつけて! う……尾行した身でこんなこと言う筋合い無いですよね。本当に申し訳ありませんでした!」
「もう気にしなくて大丈夫だから! また学校かリュヌで」
「あ……はい! ありがとうございます! 失礼します!」
過剰な感じだけど、悪い人じゃないな。
喋りの勢いそのままにそそくさと帰る凛紗さんを僕は見送った。今の|一時(いっとき)が嵐のようだとすれば、その姿は吹き飛ばされる雛鳥を思わせた。
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