僕(じゃない人)が幸せにします。

暇魷フミユキ

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第2章

2-8清麗な人 ☆

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「そこで君島くんを選んだのは、あなた、幸恵、西沖幸恵と同じ部活でしょう? 私は彼女の話を聴いていて、知らないわけじゃなかったの」

 幸恵さんからだったのか。
 でも、そうなると……幸恵さんに対してまた同じことを繰り返すような……。

「私たち姉妹になんの義理も無いことも、迷惑で図々しく失礼この上ないことは分かっているわ。当然無理強いはしないし、負担も掛けさせない。それからできる限りお返しするわ。だからどうか協力してもらえないかしら」

 そう言って頭を下げた。
 僕は未だ困惑している。

 好機であることは確かだ。根本は同じ目的なのだから、深町さんと協力しあえるはずだ。
 けどこれは急に距離を取った内に入るような気がする。必ず幸恵さんに伝わるし、そうすれば絶対に配慮してくれる。それを寂しいと感じさせるのは不本意だ。
 でもこの形で僕が離れることはまどろっこしい状態の解消になって良いのか……?

 駄目だ。どうすれば良いか纏まらない。

「ごめん。今すぐには」

「そうよね。こちらこそごめんなさい。今の話は忘れてもらっても構わないわ」

 一礼して、彼女は振り返った。
 そういえば……。

「深町さん! ごめん、一つだけ訊いていい?」

「ええ。何かしら?」

 少し離れていたが、もう一度こちらを向いてくれた

「今の話をするために僕の後をつけたりした?」

「いいえ。いつのこと?」

「一昨日からだと思うけど」

「選挙活動で忙しかったし、明らかに私ではないわね」

「誰かを遣ったとか……あ、いやごめん! 僕も良く分からなくて」

 怪訝そうな顔が怖い……。

「深町さんに関係無いなら大丈夫。呼び止めたりしてごめん」

「そう。ただ、注意すべきかもしれないから他の人にも訊いてみるわ。気を付けて」

 あまり表情が変わったようには見えなかったのに怖さが抜けたように感じて、最後に向けられた眼差しはただ真剣だった。
 しっかりした人なんだ、本当に。

「ありがとう。じゃあまた、えっと……文化祭の会議では会うはずだから」

「ええ。よろしくね」

 僕は深町さんが歩き去っていくのを見届けた。その姿の清麗さに、今の話を唐突に持ち掛けられたということが信じられなくなった。
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