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第2章

2-4笑う、焦る、荒らげる

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「あの~、何度も話してるけど、どうしても勉強教えてもらえないかと」

「何度も話しているが俺は忙しい」

「ごめん! でも頼れるの優哉だけなんだよ! 文系科目教えてほしいんだけど、新城くんはあたしと同じくらいだし、君島は選択科目違うし」

「……じゃあ自分で頑張――いや、無理言って悪い」

「ちょっと傷付くよ!? 頑張って駄目だったんだから!」

 なぜか優哉は何も言い返してこなかった。電波が悪くなったわけでもない。
 さらに待っても何も言わない。

「なに? どうかした?」
 焦ったせいで強めの声が出てしまった。

「「ごめん」」
 そのこと謝ろうとした声が優哉の声と重なった。

「……ふふっ、あははっ!」

 それが可笑しかったし嬉しかった。
 気が合うんだってことが。めちゃくちゃ素直に謝ってきたことが。「悪い」とかじゃなくて「ごめん」だったことが。小さいときってこうだったなって思い出せたことが。

「そんなに笑うか……?」

「ふふっ。ごめんごめん! ごめんね、強く言いすぎて」

「いや、いきなり黙った俺が謝るところだろ」

「それもそうだね」

「まあ、点取れなかった美頼が一番悪いんだけどな」

「あ、そうでした!」「忘れんなよ」

「で、何してたの?」

「はぁ……お前が変わったって考えてたんだよ」

「え?」

「気にするな。とりあえず平日は時間合わないし、週末はバイトで時間ないぞ」

「え……?」

「なんだよ」

「いいの!?」

「いや、まだ良いとは」「だって店長週末でもいいって言ってたよ」「いやそれ建前……とも思えないな、卯月店長なら」

「じゃあ今度の土曜か日曜ね!」

「分かった分かった。土曜にさせてくれ。それで場所は?」

「あ~……。うちとかどう?」

「え」

 たった一音で自分が言ったことの意味に気付いた。

「いやっ、別に意味があるわけじゃないし!? お互いに知ってて声出してもいい場所ってうちぐらいかな~って! 逆に何考えてんの!?」

 声出してもいいって何!?

「うるせえなこっちは散らかってる所に行きたくねえし時間があるなら片付けとかに使わないで勉強とかで大切に使った方が良いって話だよ馬鹿!」

 一息で言った中で馬鹿にしたり心配したりしないでよ!

「は!? 元から綺麗だし! っていうかそっちの方が汚かったじゃん! あたしが掃除してあげようか~?」

 ああ~なんで今度は優哉の部屋に行こうとしてんの~??

「要らん! 上等だ行ってやるよお前の部屋!」

 なんか分からんけど約束できた!
 「切るぞ!」って言った後に向こうが切って通話が終わった。
 振り返ると店長がいた。最後の方声大きかったもんね……。

「……ケンカップル」「やめてください!」



 その日のうちにメッセージが届いた。

>すみませんでした。
>場所はファミレスにしないか?

>いいと思う。
>こちらこそすみません。
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