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第1章

1-53キックオフ

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 前日は部員が各々に機材設置と委員会の撮影協力担当への説明を行い、
 どん曇りの中、体育祭当日を迎えた。
 校庭、体育館のいずれにおいても順調に競技が進められ、撮影も滞りがなかった。

 二年サッカー、その開催時刻を迎えた。

 僕のいる一組の最初の対戦相手は二組、新城と木庭のクラスだ。
 僕のポジションはディフェンダー。初戦なので全体的な方針は基本に忠実に、とされた。
 できる限り守った。
 抜き去られるときもあった。
 それで手一杯だったので攻めることができれば攻めてという点は開始二分で諦めた。

 試合時間の三分の二、十分を経過したころ、僕の方に突っ込んで来たのは……新城だ。
 今しがた、仲間のディフェンダー二人が相手のフォワードを阻止したが、そこからパスが渡ったのだ。手空き故に僕だけを相手取れば突破できるとの考えだろう。
 勝負は一瞬で着くだろうな~。粘って勝ち取れる気は全くしないしな~。
 そう思った矢先、新城はシュートした。
 なんで? それなら僕にでもクリアされて……
 ボールを蹴り込んだ先に、木庭がいた。
 難なく僕の手前で捉え、両脇から迫るディフェンダーをリフティングで躱し、放ったボールはキーパーを掠めるように飛び、ゴールネットを揺らした。
 僕が木庭に気付いてから反射的に駆け出し、ボールを狙って滑り、倒れゆくまでに起こった出来事だった。
 ……お見事。

 試合終了、勝利したのは二組。その組のみならず沸く女性の声もちらほら聞こえた。

 喜び合う彼らを見て、草壁が一言つぶやいた。
「なんで木庭と新城くんと同じクラスじゃないんだろう……」

「なんかそれ、木庭も草壁に対して言ってた気がする」

「ご、ごめん! 大丈夫だって、まだ四試合あるし!」

 二戦目の対五組では引き分けに持ち込むことができた。草壁の言う通り、まだ諦めるには早い。
 次の相手は三組だ。二組には負けているが、四組には勝ったため侮れない。
 さらに注意すべき点がもう一つ。油井が三組のチームにいることだ。彼を知る一組のメンバー数人も不確定要素や警戒すべき対象と考えていた。どんだけなの油井くん。
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