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第1章

1-35月曜日の昼下がり

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 やっとパシりも終えられた月曜日の昼下がりのことだった。
 授業の終わりに相も変わらず隣はノートを要求……何か様子がおかしい。
 顔色が悪い。息が荒い。揺れているのは眠いからではなさそうだった。

「大丈夫? 具合悪そうだけど」

「うん……ノート、お願い」
 絶え絶えにそう言って、草壁は立ち上がろうとした。

 しかしその膝は崩れるように曲がり、僕に向かって倒れた。僕はなんとか草壁の両肩を掴んで受け止めた。

「うわ! 草壁!? しっかり!」

 それには答えずただ呼吸をより荒くするのみだった。
 間近で見ると整った顔立ちだな。肌も綺麗で……。じゃなくて。その肌も血色が悪い。かなりまずい感じだ。
 僕は草壁の腕を肩に回して保健室へと向かった。



「もう大丈夫?」

「うん。ごめん。びっくりさせたし運んでもらっちゃったし」

「いや……」

 その日の放課後、草壁の様子を見にきた。傍目には倒れたときよりは良くなっていそうだけど、今なお平常時よりは顔色が悪い。先生によれば疲れが出たらしいとのこと。病気では無さそうなのは一応安心したけど……。

「最近、何かしてるの?」

 僕には原因の見当も着かず、草壁の心当たりを聴かせてもらえるかも分からず、漠然とした質問をするしかなかった。

「また早く寝ろとか言うつもり? それはできないって何度も」「そうじゃなくて。なんで遅くなるのか教えてもらえないかなって」
「う……」

 言葉を詰まらせ、顔は背けられた。確かに何度か居眠りの話はしたけど、理由については聴いていなかった。ここまで来ると、言いたくなかったとしても訊かないわけにはいかないだろう。

 少しして、背けたまま小声で話してくれた。
「バイト、してるから」

「バイト? リュヌ?」

 草壁は頷いた。
 原因は卯月さん? けどあの人がブラックバイトにするとは考えられない。なら人間関係だろうか……。
 次に何を訊くべきか思索しているところで、保健室の引き戸が開いた。

「草壁ちゃん」

「新城くん!? 部活は!?」

「あー……ちょっとしたら戻らなきゃだけど、大丈夫!」
 新城はサムズアップ。

 大丈夫なのかな。あの部うるさい上級生がいたような。抜け出したこともその理由も隠し通せればいいな……。

「君島もありがとうな。もしいてくれなかったら……」

「そんな大袈裟な。僕じゃなくても運んでくれたでしょ。たまたま隣、だっただけだから」

 僕に向かって倒れたことは言わないでおこう。草壁、「隣」の後確かに少し間を空けたから思い出させちゃったかもしれないけど、そんな赤くならないで? 勘づかれちゃうって。
 新城が来たなら僕はいるべきではないだろう。

「じゃあ帰ります。お大事に」

「うん。ありがと」
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