34 / 216
第1章
1-34動機 ☆
しおりを挟む
その放課後、例の映像部の部室に向かった。僕は既に解錠されていたドアを開け、座っていた櫓に向かって頭を下げた。
「すみませんでした!」
「座れ」
うわ……いつも通りなのが逆に怖い……。
僕は速やかに席に着く。と同時に、櫓から話題を切り出された。
「君の家庭について調べた。今日はその確認させてもらう」
「唐突になんで?」
「前にも言っただろ。この私が気になってしまったからだ。今回に関しては君自ら気になることを言ったからな」
「前にも訊いた気がするけど僕たちにプライバシーは無いの?」
「今回の一件を理解するのに必要だと判断したからな。しかし君は単純だ。君の両親は本当に離婚していたんだな」
「あ……はい」
「原因は不倫では無いようだがな。単純に不仲か」
「そうです。いやどうやって調べたんです?」
「割と簡単だったが?」
「そうですか……」
「六、七年前、そうして母子家庭となり、君の母はスーパーで働き始めた。間違いないか?」
「間違いないです」
恐るべし櫓の探求心と情報網。特に離婚理由は関係者以外は知らないはず……。
「さて、なら今回の件の動機は、好き合った同士仲良く、とでも」
すごく嫌そうに言う櫓に笑ってしまった。
「まあ結論から言うとそうだけど、どちらかと言うと周りに迷惑かけるなって方が強いかな」
櫓は一転して興味を持ったらしい。
「別れようと何しようと勝手にしてもらえばいいよ。でもその関係が長かったり深かったりしたら、別れた後、その二人の周りはこれまでとは違う環境で違う生き方を余儀なくされるかもしれない。結構困るんだよ、それって」
「苦労したって言いたいわけか。だが君も含めて高校生だぞ? そのころから付き合った人と一生添い遂げる奴なんてそうそういないだろ。純粋か」
「無いことは無いと思うけど。それに結局不仲で別れる人と付き合うぐらいなら、幸せでいられる人といてほしいと思うし、結果として別れることになっても、好きだと思える人が何人かいたなら次を見つけやすいだろうし」
「そうか。その本当に合っている人っていうのが君だったらどうするつもりだ?」
いつもの、こちらを見透かしそうな目つきで櫓は言った。
「……また冗談を」
「ああ、冗談だ。注文した物持ってこられないような人間だしな。口止め料とかは免じてやるから、絶対に月曜日はしくじるなよ」
許されてなかった。まあ、もう一回買ってくるので済むし誰にも言わないでいてくれるならいいか。今改めてこの人の恐ろしさが分かった……。
◇
夫婦が離婚した場合、その子どもも離婚する可能性が高いと言われる。海外ではその確率も算出されているらしい。
僕もそうだと思う。
親が取った行動を僕が取らないと、あのときからずっと否定することができない。
「すみませんでした!」
「座れ」
うわ……いつも通りなのが逆に怖い……。
僕は速やかに席に着く。と同時に、櫓から話題を切り出された。
「君の家庭について調べた。今日はその確認させてもらう」
「唐突になんで?」
「前にも言っただろ。この私が気になってしまったからだ。今回に関しては君自ら気になることを言ったからな」
「前にも訊いた気がするけど僕たちにプライバシーは無いの?」
「今回の一件を理解するのに必要だと判断したからな。しかし君は単純だ。君の両親は本当に離婚していたんだな」
「あ……はい」
「原因は不倫では無いようだがな。単純に不仲か」
「そうです。いやどうやって調べたんです?」
「割と簡単だったが?」
「そうですか……」
「六、七年前、そうして母子家庭となり、君の母はスーパーで働き始めた。間違いないか?」
「間違いないです」
恐るべし櫓の探求心と情報網。特に離婚理由は関係者以外は知らないはず……。
「さて、なら今回の件の動機は、好き合った同士仲良く、とでも」
すごく嫌そうに言う櫓に笑ってしまった。
「まあ結論から言うとそうだけど、どちらかと言うと周りに迷惑かけるなって方が強いかな」
櫓は一転して興味を持ったらしい。
「別れようと何しようと勝手にしてもらえばいいよ。でもその関係が長かったり深かったりしたら、別れた後、その二人の周りはこれまでとは違う環境で違う生き方を余儀なくされるかもしれない。結構困るんだよ、それって」
「苦労したって言いたいわけか。だが君も含めて高校生だぞ? そのころから付き合った人と一生添い遂げる奴なんてそうそういないだろ。純粋か」
「無いことは無いと思うけど。それに結局不仲で別れる人と付き合うぐらいなら、幸せでいられる人といてほしいと思うし、結果として別れることになっても、好きだと思える人が何人かいたなら次を見つけやすいだろうし」
「そうか。その本当に合っている人っていうのが君だったらどうするつもりだ?」
いつもの、こちらを見透かしそうな目つきで櫓は言った。
「……また冗談を」
「ああ、冗談だ。注文した物持ってこられないような人間だしな。口止め料とかは免じてやるから、絶対に月曜日はしくじるなよ」
許されてなかった。まあ、もう一回買ってくるので済むし誰にも言わないでいてくれるならいいか。今改めてこの人の恐ろしさが分かった……。
◇
夫婦が離婚した場合、その子どもも離婚する可能性が高いと言われる。海外ではその確率も算出されているらしい。
僕もそうだと思う。
親が取った行動を僕が取らないと、あのときからずっと否定することができない。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる