僕(じゃない人)が幸せにします。

暇魷フミユキ

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第1章

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 翌日、相変わらずひと気の無い廊下へ櫓を連れて来た。

「どうしたのかな? こんな所に連れ込んで。私にどんなことをするつもりだい?」
 櫓は目を細めて僕を下からのぞき込む。

「う……やめてくださいよ。話を。話をしたいです。昨日くれたメールについて」

「なんだ。帰らせてもらおうかな」

 そう言うと一瞬で真顔に戻り、本当に振り返って元来た道を戻ろうとした。櫓は今日も情けが無い。

 何かを言っても戻ってくるとは思えず、背中に向かって質問した。
「昨日送ってくれたあれ、なんで櫓が来るの?」

「なんだ? あれじゃ不満か?」
 櫓は立ち止まってこちらを向いてくれた。

「全くそんなこと。幸恵さんに油井のことをしっかり見てもらえるし、一緒にいられる時間ができて仲も深められるし、これ以上無いよ。その上で櫓は何かするつもりなのかなーって」

「特に私がすることは無い。男女比調整ぐらいだな」

「じゃあ幸恵さんと仲が良さそうな人の方がいいんじゃない?」

「それだと油井に目が向きにくくなるかもしれない」

「なら、できるだけ人が少ない方がいい気がする。幸恵さん気を使うと思うし」

「君がいない方がいいかもな」

「一番よく分からない組み合わせになってない!?」

 これに櫓は応えなかった。
 少しの沈黙の間に、頭に思い浮かぶものがあった。
 あれ、もしかして……。

「確かに、一緒に来てくれることは心強いけどね」

「そうだろう。君は私の考えの元動くのだからな」

「こういう脱出ゲームってやったことないのにあの二人に頼るわけにもいかないっていうのもあるから、そういうところでも助かるよ」

「私も無いがな。まあ私に頼って西沖にふがいない姿を見せるとよりいいんじゃないか」

 そう言って、今度こそ元来た道を戻っていった。
 多分だけど……櫓さん、結構楽しみにしてる?



 櫓のメールには、チケットを僕が購入し、偶然手に入った体で二人を誘うよう提案、もとい指示されていた。家族が集まれなかったってことにしておくかな。日程は期末試験も終わった今週末。出費は一万円弱。二人が来てくれなかったらどうしよう……。

 そんな心配から僕は突き動かされるように幸恵さんを誘った。
 でもそれは一切不要だったようで、幸恵さんは二つ返事で受け入れてくれた。
 予定を訊いても「特に無いよ」、あと二人来ること、そのうち一人が櫓であることを伝えても「楽しそうだね」と答え、むしろ僕の家族が集まれなかったことを心配してくれた。
 本当に優しいな、幸恵さんは。騙すようなことしてごめん。
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