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第1章
1-24緑と赤 ☆
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「ところでそれ」
「メロンソーダだな」
「あの話を聞いて? 僕ほとんど寝てたけど」
「そう。なんか飲みたくなった。別にいいだろ。うまいし」
新城の行動に意外そうな顔をしていた草壁は笑い出して、コップを持って立ち上がった。
「じゃあうちも持ってこよ~。君島もいっしょでいい?」
「え、あ、うん」
何か勢いに乗せられて僕はコップを差し出していた。
草壁がおつかいしてきてくれたのは、間違えることなく透き通った緑色の中で気泡が立ち上る液体。
僕たちは、高校生にもなってこぞってメロンソーダを飲む異様な三人組となった。まずこのお茶とも異なる透明な緑というのが風変わりな印象を与える。
けど飲んでみるとただ甘いだけでなく、炭酸とも相まってメロンの香りがするのがおいしい。本当に久しぶりに飲んだが、好きな人は多いはずだと思える味だった。
「うん。普通においしい」
「だよな。おいしいから持ってくるんじゃだめか?」
「あ~……。でもみんななんか色々あるみたいだし」
草壁の答えは気を配っているような渋さがあった。
「そうか」
新城は食い下がることも問いただすこともなく自然に流した。
「まあ色々大変だよね。草壁も」
僕も新城も近くにいる状態は、あるいは友人関係に不和をもたらすかもしれないと思うと申し訳なかった。
「え? ま、まあ? うちの隣の席の人は鬼だし?」
「あ、まだ学力の話します? 明日もここに集まってもいいよ?」
「他人の予定勝手に決めないでよね!」
「そっか、俺は明日来てもいいかなって思ったんだけど」
「あ、えっと、さすがに明日は、ちょっと」
反応違いすぎません?
十八時も過ぎ、何かを注文している暇もないので僕たちは解散することにした。新城が草壁を駅まで送ってくれるらしい。ここまで近づいてくれるとは僕としてもありがたい限りだ。
先に店から出ていた僕のところに草壁が近づいて来た。
「今日はありがとう。私のために」
「そうだったね。草壁のためだったんだよね」
色々あって完全に名目とか吹っ飛んだよね。
「何その言い方。何か、してほしいわけ?」
「別にそういう――」
僕の横に来ていた草壁にちゃんと向き合って、言葉に詰まった。
頬が赤かったのは、夕日に照らされていたからかもしれない。
瞳が潤んでいたのは、夕日がまぶしかったからかもしれない。
草壁が僕を真剣に見つめて、まるで僕のどんな要求にでも応えようとしたかに見えたのは、夕日のせいかもしれない。
何かのせいにしなければ、目的を見失いそうだった。
「おまたせ」
新城が出てきて、二人同時に目を向けた。
「どうした?」
「いや、じゃあまた」
「おう。数学の時間にでも」
草壁は何も言わなかった。
僕は何も言えなかった。
「メロンソーダだな」
「あの話を聞いて? 僕ほとんど寝てたけど」
「そう。なんか飲みたくなった。別にいいだろ。うまいし」
新城の行動に意外そうな顔をしていた草壁は笑い出して、コップを持って立ち上がった。
「じゃあうちも持ってこよ~。君島もいっしょでいい?」
「え、あ、うん」
何か勢いに乗せられて僕はコップを差し出していた。
草壁がおつかいしてきてくれたのは、間違えることなく透き通った緑色の中で気泡が立ち上る液体。
僕たちは、高校生にもなってこぞってメロンソーダを飲む異様な三人組となった。まずこのお茶とも異なる透明な緑というのが風変わりな印象を与える。
けど飲んでみるとただ甘いだけでなく、炭酸とも相まってメロンの香りがするのがおいしい。本当に久しぶりに飲んだが、好きな人は多いはずだと思える味だった。
「うん。普通においしい」
「だよな。おいしいから持ってくるんじゃだめか?」
「あ~……。でもみんななんか色々あるみたいだし」
草壁の答えは気を配っているような渋さがあった。
「そうか」
新城は食い下がることも問いただすこともなく自然に流した。
「まあ色々大変だよね。草壁も」
僕も新城も近くにいる状態は、あるいは友人関係に不和をもたらすかもしれないと思うと申し訳なかった。
「え? ま、まあ? うちの隣の席の人は鬼だし?」
「あ、まだ学力の話します? 明日もここに集まってもいいよ?」
「他人の予定勝手に決めないでよね!」
「そっか、俺は明日来てもいいかなって思ったんだけど」
「あ、えっと、さすがに明日は、ちょっと」
反応違いすぎません?
十八時も過ぎ、何かを注文している暇もないので僕たちは解散することにした。新城が草壁を駅まで送ってくれるらしい。ここまで近づいてくれるとは僕としてもありがたい限りだ。
先に店から出ていた僕のところに草壁が近づいて来た。
「今日はありがとう。私のために」
「そうだったね。草壁のためだったんだよね」
色々あって完全に名目とか吹っ飛んだよね。
「何その言い方。何か、してほしいわけ?」
「別にそういう――」
僕の横に来ていた草壁にちゃんと向き合って、言葉に詰まった。
頬が赤かったのは、夕日に照らされていたからかもしれない。
瞳が潤んでいたのは、夕日がまぶしかったからかもしれない。
草壁が僕を真剣に見つめて、まるで僕のどんな要求にでも応えようとしたかに見えたのは、夕日のせいかもしれない。
何かのせいにしなければ、目的を見失いそうだった。
「おまたせ」
新城が出てきて、二人同時に目を向けた。
「どうした?」
「いや、じゃあまた」
「おう。数学の時間にでも」
草壁は何も言わなかった。
僕は何も言えなかった。
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