23 / 204
第1章
1-23元気な三人、疲れた三人
しおりを挟む
「終わった~じゃなんか頼も」
えぇ……。できればもう帰ってほしいな~。こっちは疲れ切って一点見詰めちゃってるんですから。
無意識で取った小首をかしげるような格好のまま目だけを動かした。
新城はテーブルの上に重ねた両腕に額を当て、首との間で頭の橋を架けるような体勢だった。顔は見えないが、あれも多分床の一点見詰めていると思う。もっと言うと呻いているか何か言い続けているかしているかもしれない。
草壁は元々隅に座っていたのだが、体はひねられてそのパーティションの角に顔は嵌まっていた。体がねじれて脚が横を向いている。
対して元気な三人娘たちは元気に談笑していた。どうやら前に違うメンバーでここに来たときの話らしい。その中には新城に負けず劣らずの人気の男子がいたようだけど、関わりがあまり無いし疲れ果てているしでそれが誰かは聞きそびれた。
「――でね、その娘がメロンソーダ持ってきててさ。うわ、媚びてるわ~って」
あと二人は笑いながらも「うんうん」、「確かに」と納得している様子だった。
……分からん。いや、共感できないのは僕の頭が回っていないからなのだろう。
「コーラとかならまだいいけどさ~」
そうなの? 何が違うか分からないからもう僕は寝るか糖分取るかした方がいいのかもしれない。
「それ。くだもの好きみたいのがなんかね」
やっぱり変じゃない? 果物好きってこと分かったところでどうだって言うの……?
その後彼女らはそれぞれが頼んだケーキを食べ終えるのだった。僕は半ば寝ていたので帰り支度を始めるころまでどうだったかは見ていない。授業中いつも寝ている草壁の気持ちが分かった気がした。
各々が別れなり感謝なり告げて、三人は相も変わらず騒がしく話しながら帰っていった。
外を見ると日が伸びたもので、十七時半を過ぎても結構明るい。草壁が電車で来ているのでもう少し早く切り上げるつもりだったのだけど……。
「ごめん。かなり遅くなったのにあまりできなかったよね」
「え? これ以上勉強させるつもりだったの? 鬼?」
青ざめる草壁。
「いや今やっておかないと後に響くよ?」
「まあいいんじゃない? これだけやって忘れなければまあまあ取れると思うし」
そう言って新城はコップを持って席を立った。
「そうそう。ある程度でいいよある程度で」
「ある程度で済まなくなったときどうにかするのは誰なんでしょうか」
「あ、あはは。……よろしくお願いいたします」
「でも、僕より新城の方がいいんじゃない?」
「……そうだね。新城くんの方が君島より優しくて教えるの上手いからね!」
語気を荒らげて言われた。
ふと、こんな感じで段々と僕から離れていくのだろうと思った。草壁との関係からして喧嘩別れもあり得そうかな。
「そんな高く買ってくれているなんてうれしいね~。遠慮なく頼ってよ草壁さん」
ドリンクバーから戻ってきた新城が言った。
「あ、うん」
なんか恥ずかしがっている草壁もいいな。
えぇ……。できればもう帰ってほしいな~。こっちは疲れ切って一点見詰めちゃってるんですから。
無意識で取った小首をかしげるような格好のまま目だけを動かした。
新城はテーブルの上に重ねた両腕に額を当て、首との間で頭の橋を架けるような体勢だった。顔は見えないが、あれも多分床の一点見詰めていると思う。もっと言うと呻いているか何か言い続けているかしているかもしれない。
草壁は元々隅に座っていたのだが、体はひねられてそのパーティションの角に顔は嵌まっていた。体がねじれて脚が横を向いている。
対して元気な三人娘たちは元気に談笑していた。どうやら前に違うメンバーでここに来たときの話らしい。その中には新城に負けず劣らずの人気の男子がいたようだけど、関わりがあまり無いし疲れ果てているしでそれが誰かは聞きそびれた。
「――でね、その娘がメロンソーダ持ってきててさ。うわ、媚びてるわ~って」
あと二人は笑いながらも「うんうん」、「確かに」と納得している様子だった。
……分からん。いや、共感できないのは僕の頭が回っていないからなのだろう。
「コーラとかならまだいいけどさ~」
そうなの? 何が違うか分からないからもう僕は寝るか糖分取るかした方がいいのかもしれない。
「それ。くだもの好きみたいのがなんかね」
やっぱり変じゃない? 果物好きってこと分かったところでどうだって言うの……?
その後彼女らはそれぞれが頼んだケーキを食べ終えるのだった。僕は半ば寝ていたので帰り支度を始めるころまでどうだったかは見ていない。授業中いつも寝ている草壁の気持ちが分かった気がした。
各々が別れなり感謝なり告げて、三人は相も変わらず騒がしく話しながら帰っていった。
外を見ると日が伸びたもので、十七時半を過ぎても結構明るい。草壁が電車で来ているのでもう少し早く切り上げるつもりだったのだけど……。
「ごめん。かなり遅くなったのにあまりできなかったよね」
「え? これ以上勉強させるつもりだったの? 鬼?」
青ざめる草壁。
「いや今やっておかないと後に響くよ?」
「まあいいんじゃない? これだけやって忘れなければまあまあ取れると思うし」
そう言って新城はコップを持って席を立った。
「そうそう。ある程度でいいよある程度で」
「ある程度で済まなくなったときどうにかするのは誰なんでしょうか」
「あ、あはは。……よろしくお願いいたします」
「でも、僕より新城の方がいいんじゃない?」
「……そうだね。新城くんの方が君島より優しくて教えるの上手いからね!」
語気を荒らげて言われた。
ふと、こんな感じで段々と僕から離れていくのだろうと思った。草壁との関係からして喧嘩別れもあり得そうかな。
「そんな高く買ってくれているなんてうれしいね~。遠慮なく頼ってよ草壁さん」
ドリンクバーから戻ってきた新城が言った。
「あ、うん」
なんか恥ずかしがっている草壁もいいな。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる