僕(じゃない人)が幸せにします。

暇魷フミユキ

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第1章

1-23元気な三人、疲れた三人

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「終わった~じゃなんか頼も」

 えぇ……。できればもう帰ってほしいな~。こっちは疲れ切って一点見詰めちゃってるんですから。
 無意識で取った小首をかしげるような格好のまま目だけを動かした。
 新城はテーブルの上に重ねた両腕に額を当て、首との間で頭の橋を架けるような体勢だった。顔は見えないが、あれも多分床の一点見詰めていると思う。もっと言うと呻いているか何か言い続けているかしているかもしれない。
 草壁は元々隅に座っていたのだが、体はひねられてそのパーティションの角に顔は嵌まっていた。体がねじれて脚が横を向いている。
 対して元気な三人娘たちは元気に談笑していた。どうやら前に違うメンバーでここに来たときの話らしい。その中には新城に負けず劣らずの人気の男子がいたようだけど、関わりがあまり無いし疲れ果てているしでそれが誰かは聞きそびれた。

「――でね、その娘がメロンソーダ持ってきててさ。うわ、媚びてるわ~って」

 あと二人は笑いながらも「うんうん」、「確かに」と納得している様子だった。
 ……分からん。いや、共感できないのは僕の頭が回っていないからなのだろう。

「コーラとかならまだいいけどさ~」

 そうなの? 何が違うか分からないからもう僕は寝るか糖分取るかした方がいいのかもしれない。

「それ。くだもの好きみたいのがなんかね」

 やっぱり変じゃない? 果物好きってこと分かったところでどうだって言うの……?
 その後彼女らはそれぞれが頼んだケーキを食べ終えるのだった。僕は半ば寝ていたので帰り支度を始めるころまでどうだったかは見ていない。授業中いつも寝ている草壁の気持ちが分かった気がした。

 各々が別れなり感謝なり告げて、三人は相も変わらず騒がしく話しながら帰っていった。
 外を見ると日が伸びたもので、十七時半を過ぎても結構明るい。草壁が電車で来ているのでもう少し早く切り上げるつもりだったのだけど……。

「ごめん。かなり遅くなったのにあまりできなかったよね」

「え? これ以上勉強させるつもりだったの? 鬼?」
 青ざめる草壁。

「いや今やっておかないと後に響くよ?」

「まあいいんじゃない? これだけやって忘れなければまあまあ取れると思うし」
 そう言って新城はコップを持って席を立った。

「そうそう。ある程度でいいよある程度で」

「ある程度で済まなくなったときどうにかするのは誰なんでしょうか」

「あ、あはは。……よろしくお願いいたします」

「でも、僕より新城の方がいいんじゃない?」

「……そうだね。新城くんの方が君島より優しくて教えるの上手いからね!」
 語気を荒らげて言われた。

 ふと、こんな感じで段々と僕から離れていくのだろうと思った。草壁との関係からして喧嘩別れもあり得そうかな。

「そんな高く買ってくれているなんてうれしいね~。遠慮なく頼ってよ草壁さん」
 ドリンクバーから戻ってきた新城が言った。

「あ、うん」

 なんか恥ずかしがっている草壁もいいな。
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