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第1章

1-19一つ目の作戦

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「まあ聴け。今日はどう草壁と新城を近付けるかだ。改めて訊くが草壁の特徴はなんだと思う?」

 今日も当然のごとく草壁は非番だからこんな話をしている。櫓はここで働いてもいないのにシフト表を持っているのだろう。とは言え周りを気にしながら櫓からの質問に答えた。

「言い方は悪いけど図々しくて口調もきつくて……でも話してるといいところとか共感できるところもある……かな」

「のろけか……? 本格的に気持ち悪いぞ?」
 今度は僕が罪でも犯したかのような目で見られた。

「ごめんなさい。真面目に答えたつもりだったんです」

「そんな主観的なこと利用できるわけ無いだろう。もっと分かりやすいことだ」

「もしかして、成績のこと?」

「そう彼女は馬鹿だ」

「直球すぎません?」

 いや僕もほとんど同じこと言ったけど。

「とりあえず、それだったら利用できるの? どうするのか全く思い浮かばないけど……」

「まず君に草壁を週末にでも勉強に誘え。ここじゃ抵抗があるだろうから、ファミレスが丁度いい」

「校外でなきゃ駄目なの?」

「そうだ。そこで勉強をしているところで、新城が偶然を装って来てもらいたいからな」

「なるほど……そのあと新城が草壁に勉強を教える流れになれば距離が近付くわけか」

「その通り。その後は、二人が近付く様子が無ければそれぞれに働きかけてやればいい」

 二人を近付けさせることができれば、草壁の方は文句が無いことが自明だし、新城も振られた後だから喜ぶはずだ。二人を接近させる点においては隙が見当たらない。

「でも僕が聞き出したばかりなのに、勉強に誘うとかいういつもと違うことをして、しかもそんなことが起こったら出来過ぎで怪しまれない?」

「そこは君の腕次第だ。十分納得できる理由を付けられれば偶然を装えるし、それができなければ一回か二回慣らせばいいんじゃないのか」

「また難しいことを」

「彼女なら適当な理由でも下手な演技でも勢いで流せるかもな。と私は思う。可能性はある。少しかもしれないが」

「どんだけ予防線張るんですか」



 この話の後、意外にもすぐに誘い出す口実を思い付くことができた。来週は中間試験が三日間ある。しかも明日は金曜日で、週末にわざわざこっちまで来るかどうかは怪しいが、かなり自然に誘い出せるはずだ。
 一週間ぐだぐだしている甲斐があった。
 その一週間分で一回慣らしてより万全にできたのかな……。
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