僕(じゃない人)が幸せにします。

暇魷フミユキ

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第1章

1-15今しかない

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「そっか。そんな簡単に見つからないよね」

「見たいの?」

「気にならない? なんで来てるんだろうとか、なんで見るだけとか」

「ああ、そういう。理由かあ……。牛が被害に遭うのは昔から有名だから、標本とか?」

「確かに牛って可愛いもんね……」

 本気だ。幸恵さんは本気で言っている。僕も牛は可愛いと思うけどね。とりあえず僕はミューティレーション――身体の部位的な切除や血液の抽出――という事例については触れないでおこうと心に決めた。
 ふと幸恵さんの胸が僕の視界に入った。
 いやそうじゃない……。
 可愛くないってわけじゃなくて……。
 何を考えてるんだ……。

「どうかした?」

「あ、いや大丈夫あとほら、女性なら子ども身ごもるっていう話も聞いたことあるよ」

 咄嗟に口に出したことを後悔した。
 かなり引いていた。そうだよね。こんな話怖いし知っている僕は気持ち悪いよね。

「気持ち悪いこと言ってすみません。今度UFO見つけたら僕が解剖されに行くから許してください」

「奏向くんが妊娠するの?」

「かなり予想外だよ? まあ……男性が出産した事例もあるらしいけどそこまで面倒なことしないんじゃないかな」

「うーん、どうなのかな。あまりに普通と違いすぎるから何が起こるか分からないよね」

 確かにあらゆる可能性を考えておくことは大事だ。僕も鼻からスイカ一玉出す痛み想像しておくね。気絶しかねないね。

「どっちにしろ今いないんなら戻ろっか」

 改めて周りに意識を向ける。ここは玄関を出てすぐの場所。放課後で、部活に向かう人や帰宅する人がいるが、僕らの会話まで気にしている人はいなさそうだった。

 今しかない。

「ちょっと待ってもらえないかな?」

 幸恵さんは振り返ってくれた。

「訊きたいことがあったんだけど、なかなか後輩たちとか人前だと訊きづらくて」

「どんなこと?」

 そういえば草壁の時は実際口に出して訊かなかった。
 偶然人の数が減っていって、ついに周りに誰もいなくなった。

「幸恵さんってどんな人が好き……なのかな」

 口に出して改めて思う。すごい質問だこれ。なんてことを訊いているんだ。僕に好意があると幸恵さんが思ったら告白となんら変わらない。
 いても立ってもいられず、焦って話を繋いだ。

「いや、なんか最近気になっちゃってさ。一意見として幸恵さんに訊きたいなって」

「具体的な人?」

 しかし、幸恵さんはもう僕の話を聴いていない。完全に考え込んでいる状態だった。
 良かった。真面目に考えてもらえて助かります。
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