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第1章

1-12近くの席の女子と親しくなった時のこと

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「あっはっはっはっ」
 櫓がひとしきり大声で笑って、一旦口を閉じた。
 俯いて、結局吹き出す。たまらなかったんですね。

「楽しんでもらえたようで結構ですよ」

 僕はもう諦めたような笑顔を作るしかなかった。今日はもう女の子を二人も笑わすことができたことを誇りに思おう。
 草壁との会話から数時間後、放課後の映像部部室。また僕たちは長机を挟んで座っていた。

「い、いや。ふっ、ご苦労だった。困難を果たすのに犠牲は付き物だからな」

 そんなへらへらしながら励まされても。

「それで、結局新城ってことでいいのかな」

「そうなるな。相手は決まった。次はどうやってお互いを近づけるかだな」

 僕は途方に暮れた。
「草壁に訊くのに一週間かかったのに、そんなことやるなんてどのくらい時間がかかるか……」

「時間がかかることも君が甲斐性無しであることも最初から折り込み済みだよ」

「僕に直接訊くように提案して後悔してません?」

 この言葉に櫓は妖しく不適な笑みを返した。
 少し見とれてしまったが……ああ、はい、すみません、これからもうちょっと手早くやっていきますね。

「さて、これは最初から聴いておけば良かったのかもしれないが、君と彼女たちはどうやって親しくなったのか教えてもらえないか。何か手がかりになるはずだ」

「そうだね。じゃあまずは草壁から」



 僕と草壁が初めて会ったのは、丁度一年前、この高校に入学したとき。
 今と違って草壁の席は僕の右後ろで、初めのころは話をするような間柄じゃなかった。
 特にお互い気にすることなく過ごしていたと思う。そんな中草壁と話す機会が来た。

 中間試験の時期だ。
 思い返せばあの時の草壁はずいぶんと切羽詰まっていた。
 草壁の友人同士で協力していたけど、ところどころ間違いがあって手が足りていない様子を見かねて、僕も手伝うようになった。
 だから草壁と一対一で勉強していたつもりもなかった。なんとなく始まったから最初がなんの教科だったかも忘れた。
 その女子たちの中間試験は再試験を一、二回受けるだけで済んだと喜んでいた。……当時も思ったけど僕役に立ったのかな。もっと酷かったかもなんて言ってたけど。

 またこれも試験期間直前か直後か忘れてしまったけど、草壁が居眠りをしたらしかった。
 そのとき草壁からノート見せてもらえないかと頼まれたのだ。
 一番最初は懇願って感じだった。それまでにそんなことは無さそうで、その授業分一つ欠けるのも後で大変だろうと思い、僕は貸したんだ。

 以降の試験もそのグループに協力するようになった。でも、段々とグループ全員が集まらなくなっていった。僕も楽だから気にしてもいなかった。
 三学期ぐらいからは最近と大体同じ。ノートをずっと貸し与えてるし、一対一で勉強を教えていることが多い気もする。



「あんまり意識もしてなかったけど、集まりが悪くなったころも草壁って必ずいたのかな」

「そういうところなんだろうねえ。迸るたらし感は」

「それに対して僕は何を言えばいいんでしょうか……」

「西沖の方も聴かせてもらおうか」

「何も言う必要は無いようで良かったです
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