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第1章

5-2.フガイの森探索 ~道中は楽勝です!~

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 薄々気づいてはいた。小さい頃、義姉さんを助ける時に大男に殴りかかったことがあった。
 少しでも義姉さんが逃げれる隙ができればと思って怪我する覚悟で拳を前に出したんだ。
 僕の拳が大男に当たった瞬間、

『クリティカルヒット!!』

 という機械のような声が響き渡ったかと思ったら、

「なんでだぁぁ!」

 という叫び声とともに大男は空へと飛んで行った。
 最初、幻聴かと思ってアルマンにお祓いしてもらうように頼んだんだ。
 だってあの時、僕にしかあの機械の声聞こえてなかったし、8歳が大男吹っ飛ばしたんだよ?怖くない?
 まぁアルマンじいちゃんは聞きいってくれなかったけど…。逆に反省文書かされたよ…。

 それからあまり目立った行動をとらないようにしてたけど、今回の初戦闘で転生ボーナスの1つ目が分かった。
 僕はスキルを確認した。そこには新しく『EX スキル』と書かれていて、

『会心必中:必ずクリティカルが出る。クリティカルが出た場合の効果やダメージ量は百倍になる。』

 …ハーティさん、いくらなんでもやりすぎだって…。
 というかあの大男、無事なのかな…。数年前のことだけど不安になって来た…。

 まぁまだ僕幼かったし、小さい子どもの百倍の力ならきっと大丈夫だろう!

 うん…きっと大丈夫……。大丈夫だよね?

 とりあえず僕は今更ながら大男に手を合わせた。もし生きていたなら思い切り謝ろう……。

 ん?……なんか追加で書いてある…。

『なお、攻撃・効果の際の声は消えることはない。』

 はぁ?これ何……転生ボーナスの代償きつくない?

 僕一生この声に付き合わなきゃいけないの?

 まぁ仕方がないか……実際今回の戦闘で僕のEX スキルがなければやられていたし、義姉さんも助けれたから良しとしよう。

 ん?……そういえば僕は転生ボーナスを試すために魔法を放ったけど、たしか魔法が使えるのって……

「ワーくん!」

 考えている時にエミリスから手を握られた。

「やっぱりすごいよ!化けきのこ数匹を1人で倒しちゃうなんて…。でもどうして魔法が使えるの?しかも無詠唱で……普通どの職業でも魔法を覚えるにはレベル3にならないといけないんだよ…。」

 ……魔法を覚えるにはレベル3にならないといけない?

 僕はすぐにスキルを確認した。ある…全部ある。初級魔法だけでなく、中級・上級・極級・神級、全属性すべての魔法がプレートに書かれていた。

「うそ?…神級までの魔法全部ある…これ全部獲得するのにレベル100まで上げないといけないのに…」

 もしかしてこれが2つ目なのか…魔法全部使えるって女神さんもいい人じゃないか!
 これなら強い敵も最強の魔法で一掃できる!
 次の戦闘も楽しみだな♪

 ルンルン気分だった僕はステータスを見た。

「あれ?」

 魔法で消費するMPと僕のMPを見比べる。

 僕のMP……少なすぎない?それにはエミリスも気づいた。

「あっでもMP少ないね。これだと中級一発分くらいかな…。上級の魔法を使うにはまだまだ先のことかもね。」

 そんな……

「これも"はずれ職"と言われる所以だね。私たちみたいな基本職はステータスが一定で決まってるけど、"はずれ職"はバラバラで決まってないの。だからワーくんはMPが極端に少ないんだよね。」

 これほどまで"はずれ職"を恨んだことはないよ…。

 というか女神さん!こういう転生ボーナスつけるならもうちょっとまともな職業にしてよ!

 魔法連発で打てないし、攻撃する度にでかい声聞かなきゃいけないしさ!

 まぁ仕方ない。ペナルティはあるけど戦闘では役に立つから付き合っていくしかないか。

「そんなことより見て私のレベル!さっきワーくんが倒してくれたおかげでレベルが6まで上がったよ!これで私も魔法が打てるから安心して!」

 ……化けきのこ数匹で1レベルしか上がってないのにエミリスは5レベル……これも"はずれ職"だからか……。

「じゃあ引き続き探索をしましょう。僕が前衛で攻撃するので義姉さんは後衛でカバーをお願いします。」
「うん!分かった!」

 その後の道中は楽勝だった。一振すれば敵はたちまち倒れていき、レベルの高い魔物も僕の一撃で倒せるため、エミリスの活躍はあまりなかった。魔物を倒せば倒すほどエミリスの機嫌が悪くなった。あとスライムをこれでもかというほど狩った(ポーションの材料になるから)。
 気づけば、僕のレベルは10まで上がっていた。ちなみに義姉さんのレベルは18になった。

 本当に"はずれ職"って理不尽過ぎる…。

 レベル差で悩んでいる中、エミリスはむすくれた顔して僕を見ていた。

「ワーくんだけずるい…。私も活躍したかったのに…」

 まずい…。義姉さん、これ以上機嫌損ねると後々面倒だからなぁ。ここは宥めておこう。

「ごめんなさい...。どうしてもこの能力は加減ができなくて……。でも次の探索ではあまり目立たないようにするので義姉さんの魔法、期待しています。」

 僕の言葉でエミリスの目がキラキラ輝く。

「うん、そうだね!明日は魔法ガンガン使うから、応援してね!」
「はい!それで明日なんですけど、ある程度レベルを上げたらダンジョンに行こうと思うんです。」
「ダンジョン?あぁ、フガイの森の奥にあるやつ?でもあそこはたくさんの冒険者が探索してるから何もないと思うよ。」

 フガイの森にあるダンジョン…。この世界のダンジョンは通常はボスを倒した後、霧となって消え、別の場所に出現する。
 しかしここのダンジョンは数十年前に冒険者が攻略した後もなぜか消えずに残っているのだ。国の人が調査に来たが原因は分からずじまいだった。
 結局、何かしらの不備があって消えずに残っているという結論に至ったが、僕の鑑定眼で確認した時に

『ダンジョン:残り宝箱1』

 と表示されていたのだ。何か隠されたお宝があるに違いない!

「もしかしたら他の冒険者でも見つけられなかったお宝が眠ってあると思ったんですが…。」
「うん!ワーくんがそう言うなら明日、行ってみようよ!」

 えっ、決断早っ!普通もうちょっと考えないかな?

 まぁ、義姉さんが行くって言ってくれたなら安心だよ。

「ありがとうございます。まずは手に入れた素材を村に持って行って装備やアイテムなどを買って、探索の準備をしましょう。」
「レベルをある程度って言ってたけどどのくらいあげるの?」
「そうですね…。あと5レベルほど上げたら、ダンジョンに挑もうと思います。」

 鑑定眼では推奨レベル15って書いてたからな、その間もエミリスのレベルはどんどん上がるけど、推奨より高いレベルの人がいたら楽々進めるだろう。

 ……本当は嫌なんだけど…。

「分かった!じゃあさっそく準備しに村に戻りましょう。」

 こうして僕たちは村に戻った。

 そしてその夜……アルマンからなぜか説教をくらい、

「あのダンジョンには行くな…。」

 と言われた。

 ……じいちゃん、そりゃないよ…。
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