予約がとれない男娼

枝浬菰文庫

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学校生活

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柚の部屋には行かず自室に帰り一息つく。

ずるずると壁にもたりかかり顔を手で覆う。
ここの監視は全部がボスの部屋に通じている。

言葉も行動もこれから気をつけなければいけない。


--------------------------------------------------------


もぞもぞとベッドの上で動き目を覚ますと激痛ほどまではいかないが少し待たないと立てないことがわかった。

「うーー」

布団をまたかぶると
「起きないと、遅刻するぞ」
と声がかけられた。

蒼真さんがきていた。

「はい……」
ズキんといろんなところが痛むが
「ん??」
なにか穴に入ってる……。

もぞっと動きながらその正体を知るために指を穴にいれると
真っ赤なコットンが出てきた。

「え……」
ぞっとしながら蒼真さんを見ると

「治療だ、体は大丈夫か?」

「ああ、はい」

じとーと蒼真さんを見ていると
「私じゃない、専門の医者がやったんだ、痛い場合は毎晩入れるといいと薬瓶もらっておいたから」

蒼真さんが渡してきた。
「ああ、ありがとうございます」

でもいつもの蒼真さんではないことが分かった。
これはきっと僕のせいだ。
ペナルティーの発表があったのだろう、管理ができていなかった蒼真さんにも責任を問われると最初の契約で聞いたことがあった。

「あの……」と声をかけたが
「早く支度しろ」
と冷たくされてしまった。

ペナルティーさえ受ければ元通りになるはず……。


支度が終わり部屋を飛び出た。

学校につきカフェテリアで女子生徒と話をしていた瀬尾くんがこちらに来た。
「おはよう」
「おはよう」

「ああん、王子また美少年とこ行ったし……」
と残念がる声が聞こえた。

「具合悪そうだけど大丈夫かい?」
「え? そんな風に見える?」
「うん」
と優しく頭をポンポンとしてくれた。

「はよっす!」
「おはよう、鈴山くん」
鈴山くんとも合流したら目の前を女性たちに囲まれた男が通った。

「あんりゃ、珍しいな」
「なにが?」

「あれ、一つ上の先輩、瀬尾と同じで王子様……」
「王様じゃなかったけ?」
「そうそう、そういうあだ名がつけられた先輩」
「ふーん」

「興味なさそう!!」
と驚く鈴山くん

「え? だって男の人嫌いそうなイメージある」
「まぁたしかに、でもそれいうと瀬尾も似たような感じだろう」
「俺はどっちもいけるからね、むしろ、柚月がフリーなら俺は一瞬で喰うけどね」
ぐいっと引っ張られた。

その瞬間靴を踏んでしまい。
「わぁ!? ごめん」
「今のは瀬尾が悪いっしょ、気にするな」

二人になぜかポンポンとされた。

ちらっと目が合った王様、でもすぐに目をそらされ女性たちの会話に戻っていった。


昼時間はカフェテリアで2人と過ごす。

「次って柚違う授業とってるよな?」
「うん英国式って授業」

「柚は英国式に憧れてるんだよね?」
「うん、貴族とかかっこいいし」

「でもそれって他の国にもありそう」
「うん、でもやっぱり英国式がいいかなって僕は思ってるんだ」
教科書で顔を隠しながら微笑んでいると

「うわぁーもうごちだはお腹いっぱい」
「え?」

「可愛いってことだよ、他の男に喰われないように柚も気をつけるんだよ」

「……うん」
と暗い表情になってしまった。

もうすでに他の男たちによって身も心もドロドロの沼地に入ったかのように泥沼に足を取られ脱出できないでいる。

「どした?」
「授業遅れるよ?」

「うん、なんでもないよ、行ってくるね!」
2人は午後1の授業空き時間なので僕だけ教室に向かった。


関係ない2人にこれ以上僕の心境を伝えても巻き込むだけだから伝えられないし弱みだって見せられない。


考えながら廊下を歩いていると角で背の高い男性とぶつかってしまった。
「うわぁ!?」
尻餅をつくと全身に激痛が走った。

つはっ…………はぁはぁ「いたたた」
「うわぁごめんね」
といい手を差し出してくれたのでそれで立ち上がるとふわっと引き寄せられ

「てか君可愛い」
格好から見てガラの悪い連中だ。
しかも3人……。

昔から華奢な体型をしていたので女に勘違いされ、1人でも逃げるの必死なのにこれはもしかしなくても結構ピンチかも。


「あの、離してください!! 僕は男です」
「えー本当に?」
とTシャツをまくり上げてきた。

「うわぁキスマじゃん、エロ」

さすがに服の中までは隠しきれていなかった、恥ずかしいものは男たちの手によって暴かれた。

「てか乳首ピンク」
「舐めてぇ」

「ちょっやめてください!! 僕は男だって!!」
「いやいや、貧乳ってだけだろ?」

男たちに囲まれてどうしよう……。
2人に連絡取りたいけどこの状況でスマホなんか取り出したら取られるよね。

抵抗するが自分が非力すぎて泣けてくる。

「おい、そっち押さえ込め」

「口抑えろ」
「んっんっ」

パンと手を叩く大きな音が聞こえた。

そちらに全員振り向くと
「こんにちは、なにやら楽しい遊びをされていますね?」
にこっとした笑顔で質問してきた。

「ちっこいつにはかなわない、行こうぜ」

解放され座り込んだ。
「はぁ……」

「大丈夫かい?」
「あ、はい……」
僕は震えていた。
差し伸べてくる手を掴めないでいると男性は僕の隣に座ってくれた。

「手を出して」
と言われおどおどしていると掴んできてそれを男の口元に運んだ。

「もう大丈夫だよ、安心して」
彼の吐息がなぜかふっと心の不安を取り除いてくれた。
いったいこんな力がある人は誰なんだろうと恐る恐る彼の顔を見ると
今朝みたばかりのあの王様と呼ばれていた人だった。


この人もきっと僕のことは女の子と間違っているんだと思う。

じゃなきゃ男にこんな優しくしないよね。
ある意味ラッキーなのかもしれないと考え彼の力を少しもらうことにした。

「もう大丈夫そうだね?」
にこっと笑うとドキっとしてしまった。

「あ、はい」
こんな感覚久しぶりだ。

顔が真っ赤になってることが自分でも分かった。
きっと女のこだったらこっから恋をして発展していくんだよね。
僕はもう汚い体だから誰かになんて考えられない。

これからもっといっぱい恋愛して幸せになっていくのっていいな。
僕には遠い存在だ。

ふっと悲しい表情をしてしまうと
「もう少し一緒にいる?」
と言われたがチャイムで現実に引き戻された。

「あ!!」
「3限目終わってしまったね、授業入ってたのかい?」
「入ってました……受けたい授業だったのにショック」
と伝えると

「なんの授業だい?」
「英国式の授業です」

「それなら私が教えてあげられるよ」
「え?」

「私は英国式の授業の元先生をしていたからね、まぁ特別授業の時だけだけど」
僕は一瞬にしてぱぁああああっと明るくなったが4限目の授業開チャイムがなり
先輩に

「ありがとうございます、今度またお話聞かせてください」と立ち上がり
「僕の名前は木島柚月です」と伝えぺこっとお辞儀をして先輩と別れた。

「……かわいい」


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