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1/19開催!〈文学フリマ京都9〉試し読み
第7作品「白狐様のお嫁さん」
しおりを挟む❁あらすじ
就活に頭を悩ませる日々の神木幸大は自分と同じ名前の神木神社に就職することになった。しかしそこで白狐様と出会い嫁の印を付けられてしまう。表の世界に出られぬまま幸大は白狐様と身を結ぶことになる。
そして幸大を狙う何者かを白狐様は許さない……。
❁登場人物
・神木 幸大
・神木 悠真
・白狐様(もこ様)九尾
・家来の狐たち(朱、紺、紫、若葉……)
❁施設
・神木神社
きつねが祀られている
幸福・健康・安全の神様
・高天原
・九尾の道
❁試し読み 10ぺージ
京都 神木神社
ここにはたくさんのきつねの神様が住んでいる。
僕は京都に引っ越しをしてきたのが小学六年生の時、近くの神木神社に訪れて覗くと鳥居の下にいたのは真っ白な尻尾をふわふわ浮かべていた白い狐の神様がいた。
目を離さずに神様を見ていた。
一緒にいたのは家来? 黄金色の大きな狐を二匹連れていた。
でも白い狐の神様をよく見ると僕と変らない人間の姿をしていた。
違うといえば頭の上に耳がついていたし目も鋭い気がする。
目があった瞬間、僕はお母さんに引っ張られ参拝に向かった。
あの白い狐の神様にもう一度会いたい。
そう思って何度も訪れたが残念ながらもう出会うことはなかった。
もちろんこのことはお母さん、お父さんにも報告した。
でも信じてはもらえなかった。
そして大学四年生になり、俺は大人になった。
って言っても就職……決まらなくて死ぬ……。
世界なんて爆発してしまえなんて常々思う。
「あー明日大地震でも起きて面接無くならないかな」
「いや、それは無理っしょ」
大学の購買で友人たちとたむろする。
「俺SPIで落とされたんだけど」
「うわぁー勉強不足」
「てかそもそもSPIっているのかよ、隠れた能力が俺に備わっているかもしれないじゃないか!! やっぱ見るのは学力なのか?」
「まぁ。そうなんじゃねぇだってどこの会社も取り入れてるし、俺らに隠れた能力があっても関係ないってことよ」
「ふぁー就活やだー、まだ学生がいい!!」
「それな」
ぼーっと購買の天井を見ながら俺は明日の面接の風景を思い浮かべていた。
その三日後、『残念ながら』のメールを受け取り……。
信号待ちで座り込む。
青になっても立ち上がらない俺に声をかけてきた。
「君、大丈夫かな?」
どこか不思議とその声に反応し顔をあげる。
男の人……この服なんて言うんだっけ。
装束っぽいやつ……。
「あっその看板……」
「ん? ああ、これ。僕神木神社の神主の神木って言います。もしかして就職活動中?」
「はい、あの受けることってできますか?」
俺は神木神社の言葉に惹かれた。
「うん、今から来られるかな」
「あ、えっと大丈夫です」
俺は大学をサボって神主さんの神木さんについていく。
友人には遅刻するか欠席するから代返よろしくと送っておいた。
怒りの返信がきたが既読無視しておこう。
鳥居を潜りふと風が吹いたのを感じた。
「いちをエントリーシート書いてもらいます」
「はい」
境内に案内され名前と住所と大学を記入する。
「あれ? 君も同じ名字なの?」
「あーっと読み方違くて神の木と書いてじんぎって読むんですよ」
「へーそうなんだ」
「だからかここに引っ越ししてきて俺と同じ名前の神社があった時は嬉しかったです。なんか守られている感じがして」
「それは良いことだね、それに神木幸大くん。とてもいい名前だね」
そっとエントリーシートに書かれた文字を指でなぞっていた。
不思議な行動に俺は疑問を浮かべたがさらに疑問を浮かべることになる。
『うん、分かってるよ、すぐに連れていくから』と話をしていた。
? 電話じゃないよな、無線とか?? 俺が見ていることに気がついた神主さんの神木さんはあたふたしていた。
「あっえっとごめんね、境内見学して仕事内容説明した後に紹介しようと思ってたんだけど君に会いたいみたいだから。このシート書き終わったら案内するね」
「あ……はい」
誰にですか? って聞こうと思ったけどなぜか聞けずにエントリーシートを回収されて境内を歩く。
神木さん俺よりも少し背が高い、一七七センチくらいかな。俺は一七二くらいだから。
少し見上げる感じだ。
境内を歩いて裏庭を通り過ぎたくらいで赤い鳥居がいくつも続いていて神木さんが手前で二回手を叩くと鳥居を潜った。
「あの、俺は叩かなくても平気ですか?」
「うん、大丈夫だよ」
鳥居を抜けると大きなかやぶき屋根の屋敷があった。
「ここは……」
「えっといちをこの神木神社の神様の住処です」
「え!?」
そう言われて襖を開けると真っ白なふさふさした尻尾がゆらゆらと浮いていた。そして囲むように黄金色のきつね達がいた。
これって昔みた光景に似ている。
「いちを聞いておくけど真ん中にいる大きな白い狐は見える?」
『おい! てめぇ我をなんだと!!』
「あ、はい」白い狐の人めちゃくちゃ怒っている。
「そしたらその周りを囲んでいる大きな黄金色のきつねも見える?」
「はい、えっと四匹いますね」
「うん、じゃぁ、その下にいる中くらいの黄金色のきつねは見える?」
「えっと、一、五……八匹います」
「じゃぁ、それのさらに下にいる小さなきつねは見える?」
「えっと、二十匹以上ですかね」
「じゃぁ、この掌サイズの子狐は見える?」
「はい……って可愛いサイズ……」
本当に掌サイズの子狐だった。
『逸材だな』
「幸大くん君、すごいね」
「な、何がですか? もしかして見てはいけないものですか?」
「あーまぁうん」ぎこちない返事をもらいつつ俺は ? を浮かべていた。
神木さんが困っていると白い尻尾は俺の腰に巻き付き引き寄せられる。
「え!! ちょっと待ってどういうことですか?」
「あーもう乱暴したらダメだよ」
『分かっている』そう聞こえた気がした。
『お主……我が見えるなどいい眼を持っておる、それにこの匂い……』
そう言うと顔と匂いを嗅がれる。
『前に会った小僧だな』
!? 前に会ったって……。
「もこ様が昔話していた子どもですか?」
もこ様……可愛い名前だ。
『ああ、そうだ、初めはたまたまだと思っていたが俺が歩くと目線を合わせてきやがった。くそ生意気なガキかと思ったがこりゃ立派に成長しとるな~』
立派ってなにが??
『それにお主、名前に守られているな』
「名前に?」
「神木幸大くん、この神社と同じ名前と幸大って名前がそもそも最高級の名前なんだよ、君は間違いなく選ばれし者だ」
「……はぁ」なにこれ、能力的ななにかか?
理解ができぬままもこ様は俺の服を捲り上げた。
『悠真、いいよな、こいつを俺の嫁にする』
「え? 今なんていいました?」
「うん、もこ様が決めたことだから良いと思うよ」
「え、え……待って俺の意思は??」
「ごめんね、昔、君がもこ様を見てしまったのが始まりだから」
「え!! そんな理不尽な……そもそも俺、男だし!!」
もこ様の右手の指が光った。
『一つに名誉 二つに幸福 三つに健康 四つに開運 五つに災難、今ここに刻む!!』
そう大きな声で言うと黄金色のきつねが遠ざかり俺のへそあたりに印をつけられた。
「ぐふっ……」
結構の衝撃に俺は思わず身を屈める。
続きは文学フリマ京都9にて!
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