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12/1開催!〈文学フリマ東京39〉試し読み
第5作品「君が選ぶベッドは最高級だ。」
しおりを挟む❁あらすじ
俺は心地よい快眠を求めるために今の会社に入社し早8年がたった。
一流のプロにしかできない【特別営業】1対1で接客を行い、お客様の望む者を叶えるべき仕事につくことができた。そこで出会ったのは爽やかイケメンの地域マネージャー服部だった。
❁試し読み 10ページ
俺の名前は高嶺暁。
快眠だけを求めオーダーメイドを作る株式会社高級サロンの入社を決め早八年が経った。
この会社で主に取り扱うものはマットレス、枕、掛け布団といった寝具だ。
新入社員ではベッド一式の知識をたたき込まれたのち配属されたのは一流ホテルのベッドメーキングだった。
雑用と言われてもおかしくはないがホテルに寄って取り扱うマットレスは違い、温もりや弾力そういうものを知ることができた。
年月がたち俺はようやく【特別営業】につくことができた。
この特別営業というのは社員の中でも一流を極めていてなおかつお客様の心情や素振りなどでよりよいものを選択しなければいけない仕事なのだ。
誰でも慣れるわけではない。
社長、部長、地域マネージャーの試験に合格をしないと慣れない特別な仕事だ。
そして今お客様としてお見えになっているのが地域マネージャーである服部さんだ。
この方は社内でも人気のあるイケメンで、一言でいうと高身長の爽やかイケメン、さらっとした髪にほのかな笑みをこぼし女性社員を顎くいしただけでその場の女性を虜にしてしまう男なのだ。
「服部様、こちらのマットレスはいかがでしょうか」
「今日は仕事で来ているから敬称はいらないよ」
「かしこまりました」
そう言われても、目上の人だ、素振りには気をつけていないと。
「では服部さんいかがでしょうか」
「うん、少し柔らかいかな、私はもう少し硬いほうが好き」
「かしこまりました、では十四番はどうでしょうか?」
と服部さんを十四番のマットレスに連れて行った。
特別営業が使用している建物には六階から八階までを仕事場としてマットレスから枕、掛け布団などいくつもの種類が並べられている。
お客様の体にフィットしたものを選択し一日かけてでも快眠ベッドを探すのをお手伝いする仕事だ。
「うん、これは中々寝心地がいいな、少し反発してくるあたりとてもいい」
「ではマットレスは十四番にします」
「うん」
「ですが社員寮の俺のベッドのほうが硬さはフィットしていますね」
「おや、これはなにかの牽制なのかな?」
「あ、いえ申し訳ございません、快眠ベッドとなるとこちらも燃えてしまって……」
「ふふっ君は面白いな、でもお客様に失礼をしてはいけないよ」
「はい……」
やってしまった。
だってこの硬さのベッドは俺の部屋のほうが本当に気持ち良いし、廃盤になったから紹介はできないけど……。
「あ、仕事に戻らないと」
「では、またお時間がございます時に枕選びをしましょう!」
「うん、そうだね」
服部さんは帰って行った。
ひとまず十四番のマットレスの手配をしないといけないから六階から社員寮の十二階へと移動する。
事務作業は全て社員寮で行っている、仕事の時は全室開放するのがルールで定時になるまではお互い見張りをしながら仕事をしていた。
そろそろ夕会も始まる頃か、イヤホンを耳につけた。
『お疲れ様です』
『お疲れ様』
夕会に参加しているのは十三人、多いと言えば多いかもしれない。
事務作業メインと特別営業は同じグループだ。
夕会が後半にさしかかったところで俺の部屋には誰かがやってきたのだ、追加の書類かと横を振り向いたとたん後ろをすっと通り寝室のほうに向かうではないか。
「え?」
『高嶺くんなにか意見かな?』
「えええええ!!」
と俺は猛烈に反応してしまった、こればかりは夕会に参加している全員は驚きを隠せず全員無言になった。
それよりも俺は来客した人が俺のベッド脇に立っていることがなによりも驚きだった。
「あの、は……服部さん、ご用はなんでしょうか?」
『え、服部マネージャー?』
この声は俺には聞こえていない。
しかし俺の声と服部さんの声ははっきりとみんなの耳に届いているという状況だ。
「さっき言っていたでしょ、俺の部屋のベッドのほうが心地いいって、だから試しに来たの」
「はい??」
一日着ていた服のまま俺のベッドにインするなんて考えられない、どんなイケメンでもそれはやめて、俺の快眠ベッドなのだから!!!
座る瞬間に俺は服部さんに抱きついた。
「どうしたの?」
「し、失礼します!!」
と俺は目の前の人のスーツを脱がせ嗅いだのだった。
「えっと……」さすがに動揺するよな、でもこれは俺には重要なことで
匂いチェックだ、汗臭くない……。香水は? 臭くない。
え、イケメンって無臭なの?
「高嶺くん? もしかしなくてもベッドに乗られるのは嫌だ?」
「はい、一日着ていた服で寝られるのは常識的に嫌です」
そうはっきり伝えた。
そしたらパソコンからイヤホンの線を抜いた。
『みんな、お疲れ様、今ね、高嶺くんの部屋にお邪魔しているんだけど』
『ちょっ、なに喋っているんですか? むぐっ』口元を抑えられた。
『今日高嶺くんに特別営業してもらったんだけど自分の部屋のほうが快眠ベッドですって言い切られちゃったから試しに来たんだけど、彼面白いね』そう告げた。
反応に困る告げ方をしてみんな困ってるだろ!!
『あ、はい高嶺、実は面白いんですよ』と発言したのは岬だった。
元東京地区の特別営業として活躍していた女性社員だ。
とある事情で事務作業メインに移ったのだが俺の面白いネタを持っていると言っているかのようだった。
『岬、今度聞かせてくれる?』
『もちろんです』
女性社員からしたら服部のアプローチは最高に嬉しいだろ、でもこの岬は他の女性社員とは少し違う。
『あ、横溝くんもいるじゃん、元気してた?』
『は、はひっ元気であります』
みんな服部さんに対して面白い反応で少し笑ってしまった。
「なに、一人で笑ってるの?」
「いえ、なんでもありません」
「そう、じゃぁ私はもういくね」
「はい」
服部さんが部屋から出た後の夕会は盛り上がった。
「ふぅー今日も疲れた、寝て明日にしよ」
俺の睡眠時間は八時間だ、これは絶対に揺らがないようにしている。
しかしお客様がご宿泊になった時は身のまわりのお世話をしなければならないのでそう我が儘も言ってられない、なかなかいないけど。
次の日
六階の呼び鈴が鳴ったので降りてみると
「やぁ」と服部さんは来ていた。
「た、たしか十五時からのお約束では?」
「うん、そうなんだけど少し早めに来ちゃった、仕事平気?」
「事務作業なので問題ないですが十五分ほどこちらでお待ち頂いても問題ありませんか?」
「うん、いいよ」
「珈琲はブラックですか?」
「ああ、甘党でさ、砂糖は四つお願いします」
「かしこまりました」と丁寧に珈琲を入れお出しした。
「ミルクと砂糖はこちらにございますので」と立ち去る。
部屋に戻り事務作業をしていた仕事を一度切り上げる、もちろんそれをチャットで伝え六階に戻った。
「君は珈琲入れる天才なのか?」
「お客様には秘密ですがドリップ珈琲ですよ」
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