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伊都屋唯斗 過去編⑩

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足がそちらのほうに向いて
保健室を覗くと先生がいた。

裏庭から入ったので窓を叩くと先生が気づいてくれた。

「あれ? どうしたの?」

「あ……あの絆創膏もらえたりしますか?」


「絆創膏? どっか怪我したの?」
保健室の中に入ると体操服を着た、数人の生徒がいた。
部活かな?


「ちょっと待っててね」
部活の人たちは手当てして出て行った。

「お待たせ、絆創膏の前に君、学年と名前教えて」
「2年の伊都屋です」


「怪我の原因とかは?」
……。父親に暴力振舞われました。なんて口が裂けても言えないよな……。
言ったところでだし。

「ちょっと河川敷で遊んでいたら引っかいちゃって」
「どれどれ?」
と脇腹の傷を見せた。

「これは……」
先生が俺の顔を見る。

「伊都屋くん、顔色悪いけどどうしたの?」

「ふざけて遊んでたら、階段から転げ落ちたりいろいろしちゃって、アハハ」
と誤魔化した。

だけど先生は
「明らか、刃物のようなものの傷だね、それに体についてる痣すごいよ」

痣の存在を忘れていた。

「あ、あのもう大丈夫です」
と立ち上がるがふらっと意識が遠のいた。

慌てて先生に助けられた。

ガタッ

「伊都屋くん! 伊都屋くん!」
と先生の必至な声が聞こえた。

黒いもやもやが目にかかり、先生の顔がよく見えない。
所謂、貧血の症状だ。

先生の腕をつかむと
「伊都屋くん、大丈夫?」

「あ、はい」
抱えられ、保健室のベッドに寝かせられた。


「先生に言えることある?」

ここで話をしたらちょっとは気分が楽になるのかな?


「あの……聞いて…くれますか?」
「うん、聞くよ」

俺は母親からの暴力と義父からの暴力について話した。
それを虐待という言葉で現さないように。

今さらあの人達を庇ってもしょうがないが、後1年だけ待ってほしい、俺が高校生を卒業するまでは……。

ちゃんと話せたのかな? 

思った以上に傷が体の負荷と心の気持ちが大きく、もう自分ではどうすることもできなくなっていた。
だからなのか全部話してしまった気がする。


午後、先生がいない隙にバイトに向かった。
月曜日呼び出しかな……。

体には包帯と治療をしたのか縫った後があった。
あそこに手術なような治療器具は見当たらなかったが……。




土曜日だというのにお客さんが少なかった。
21時をまわった頃には外も人通りが少なくなっていた。
後30分


時計をぼーっと見る。
品出しをしているのは大学生の人で、とてもやさしい方。
店長は奥にいて、賞味期限切れるお弁当あったら安くしてもらえないかな。

さすがにもう気力の限界だ。

缶コーヒーを手にしたお客さんがレジに来た。
「お預かりします」

というと腕を引っ張られて
「あっ」

お金を渡された。
でもなんだか手に違和感がドロッとしたものが手に付着していた。

な……なにこれ……。

フードで顔を隠した男? はそのまま缶コーヒーを持って出て行った。
120円、お金はあるがレジに通していない。

それにこのぬめぬめしているものは?
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