53 / 64
上級高等学校
怪しい生徒会
しおりを挟む――3か月後
桜が綺麗に咲く季節がやってくる。
私は無事2年生に進級した。
新学期初日、今日から私の新しいクラスとなる2年3組の教室。
その扉の前で私は深呼吸を繰り返しながら緊張した面持ちで立っていると、ふいに後ろから声を掛けられる。
「ねぇあんた、そこ邪魔なんだけど」
「あ、ごめんなさい!」
入り口の扉を塞いでしまっていた私は慌てて声の主に謝罪をしながら振り返る。
「げ、あんた……」
振り返った私の頭上からは、何だかとても嫌そうな声が聞こえてきて、私は「え?」と顔を上げた。
するとそこにはどこか見覚えのある、懐かしい人物が立っていて。
「……え……えぇ? 先輩? えっと確か……月岡佑樹先輩!」
胸元につけられた名札をチラリと見ながら私はその人の名前を呼んだ。
その人は去年の秋、まだ私がクラスに馴染めなかった頃に何度かお世話になった1学年上の先輩で、階段から落ちかけた私を偶然にも助けてくれた人だった。
「え?どうして先輩が2年の教室に?」
「どうしてって……見りゃ分かるだろ。ここが今日から俺のクラスだからだよ」
「えぇ?!どうしてですか? だって先輩は先輩のはずじゃ……」
「るっせーな。留年したからに決まってんだろ」
「えぇ~留年?!」
「バカ、大声だすな」
恥ずかしそうに周りをキョロキョロ見ながら月岡先輩は慌てた様子で私の口を塞ぐ。
「ご、ごめんなさい。でも、どうして留年なんて?」
「単位が足りなかったんだよ。去年9月に事故にあって、今までずっと入院してたからな」
「えぇ……そうだったんですか。それは大変でしたね……」
「哀れんだ目で見るな。むかつく。それよりあんたは? その後どうだったんだよ。まだいじめられてるのか?」
「あ、そのせつは色々とお世話になりまして――」
私が先輩に近況を報告しようとした丁度その時、後ろから声を掛けられ振り返る。
そこには安藤さんと石川さんの姿があった。
「ちょ、ちょっと葵葉?! そのイケメン誰?!」
「あ、安藤さん。おはようございます」
「あれ、こいつ、お前のこと階段から突き落と――」
先輩が言いかけた言葉を何となく察して、今度は私が先輩の口を両手で塞いだ。
「どうしたの、葵葉?」
「いえ、何でも」
突然の私の行動に驚いた顔の二人に軽く咳払いしてみせながら、私は先輩と安藤さん達お互いの自己紹介をした。
「えっと、お二人にご紹介しますね。こちらは月岡佑樹先輩って言って、前に何度かお世話になった方なんです。で先輩、こちらは安藤さんと石川さん。今日から先輩のクラスメイトになる方達ですよ」
「ど、どうも。私達この子の友達で安藤可奈子って言います」
「私は石川咲良です。宜しく~」
二人が月岡先輩に向けて自己紹介している内容を聞きながら、私は不意に自分の顔がかぁと赤くなるのを感じた。
安藤さんが口にした“友達”の言葉が嬉しくて。
そんな私の姿を見ながら、先輩は何かを察したようのに「ふ~ん」と溢しながら私達を交互に見比べていた。
「なるほどね。案外楽しそうじゃん、今のあんた。良かったな」
そしてそれだけ言い残すと先輩は、私の頭をポンと一度叩きながら、教室へと入って行った。
桜が綺麗に咲く季節がやってくる。
私は無事2年生に進級した。
新学期初日、今日から私の新しいクラスとなる2年3組の教室。
その扉の前で私は深呼吸を繰り返しながら緊張した面持ちで立っていると、ふいに後ろから声を掛けられる。
「ねぇあんた、そこ邪魔なんだけど」
「あ、ごめんなさい!」
入り口の扉を塞いでしまっていた私は慌てて声の主に謝罪をしながら振り返る。
「げ、あんた……」
振り返った私の頭上からは、何だかとても嫌そうな声が聞こえてきて、私は「え?」と顔を上げた。
するとそこにはどこか見覚えのある、懐かしい人物が立っていて。
「……え……えぇ? 先輩? えっと確か……月岡佑樹先輩!」
胸元につけられた名札をチラリと見ながら私はその人の名前を呼んだ。
その人は去年の秋、まだ私がクラスに馴染めなかった頃に何度かお世話になった1学年上の先輩で、階段から落ちかけた私を偶然にも助けてくれた人だった。
「え?どうして先輩が2年の教室に?」
「どうしてって……見りゃ分かるだろ。ここが今日から俺のクラスだからだよ」
「えぇ?!どうしてですか? だって先輩は先輩のはずじゃ……」
「るっせーな。留年したからに決まってんだろ」
「えぇ~留年?!」
「バカ、大声だすな」
恥ずかしそうに周りをキョロキョロ見ながら月岡先輩は慌てた様子で私の口を塞ぐ。
「ご、ごめんなさい。でも、どうして留年なんて?」
「単位が足りなかったんだよ。去年9月に事故にあって、今までずっと入院してたからな」
「えぇ……そうだったんですか。それは大変でしたね……」
「哀れんだ目で見るな。むかつく。それよりあんたは? その後どうだったんだよ。まだいじめられてるのか?」
「あ、そのせつは色々とお世話になりまして――」
私が先輩に近況を報告しようとした丁度その時、後ろから声を掛けられ振り返る。
そこには安藤さんと石川さんの姿があった。
「ちょ、ちょっと葵葉?! そのイケメン誰?!」
「あ、安藤さん。おはようございます」
「あれ、こいつ、お前のこと階段から突き落と――」
先輩が言いかけた言葉を何となく察して、今度は私が先輩の口を両手で塞いだ。
「どうしたの、葵葉?」
「いえ、何でも」
突然の私の行動に驚いた顔の二人に軽く咳払いしてみせながら、私は先輩と安藤さん達お互いの自己紹介をした。
「えっと、お二人にご紹介しますね。こちらは月岡佑樹先輩って言って、前に何度かお世話になった方なんです。で先輩、こちらは安藤さんと石川さん。今日から先輩のクラスメイトになる方達ですよ」
「ど、どうも。私達この子の友達で安藤可奈子って言います」
「私は石川咲良です。宜しく~」
二人が月岡先輩に向けて自己紹介している内容を聞きながら、私は不意に自分の顔がかぁと赤くなるのを感じた。
安藤さんが口にした“友達”の言葉が嬉しくて。
そんな私の姿を見ながら、先輩は何かを察したようのに「ふ~ん」と溢しながら私達を交互に見比べていた。
「なるほどね。案外楽しそうじゃん、今のあんた。良かったな」
そしてそれだけ言い残すと先輩は、私の頭をポンと一度叩きながら、教室へと入って行った。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる