向日葵と先生と僕

枝浬菰

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新学期

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4月後輩となる1年生が入学してきた。

「先生、園芸部入部の子いますかね?」
「どうだろうな、陽向が入ってくる前はいなかったんだよ、だから去年部員が入らなかったらなくなる予定だった」
「え? うそ本当に?」

昼休み、花壇の近くのベンチで先生とこうして話をする。
廊下にはたわいない話をしている生徒がいる。

でも、ここは2人の世界。


「うん、だから陽向が入ってきてくれてうれしかった」

ベンチの上で足を抱えこちらを向く先生に少しドキっとした。
もしここが学校じゃなかったらキスしてたかも。

…。
なにも返せない僕に先生は手を繋いできた。

「え?」
「大丈夫、ここ見えないから」

見えないならキスも?
って思ったけどそれはさすがにまずいよね。

「陽向、好き」
「うっ…」

先生の不意打ちの好き好きアピールにたじろぐ。

ぼしゅーと赤面していると
「やばい、煽るな、キスしたくなる」
「先生が先に煽ってるじゃないですか」

「じゃぁ、俺の部屋行く?」
これは誘いだ。

先生の部屋というのは1階の花壇の近くにある教室だ。
隅っこの教室だから滅多に人はこないし、カーテンを閉めてしまえば本当にみられない。

Ωの匂いだけはしちゃうかもしれないけど、教室との間に学食の厨房があるから食べ物に匂いで消される。はず

「でも、もう少しで昼休み終わっちゃうから…」
「そうだね、ごめん」

んーと伸びしていた先生は「またな」といいどこかへ。

僕もトイレで顔を洗い、教室に戻った。



「そういえば1年になんか女垂らしがいるらしいぜ」
「それ、俺も見た、ちょーイケメンでしかも女引き連れてるのまじ笑った」
「優秀なα様ってことだろ、俺βだし関係ねぇや」

「そうなんだ」
「陽向は見てないの?」
「うん、部活いってたから」

「そうか、相変わらず櫻井先生なんだね」
「う、うん」

「てか春休みの宿題終わってないんだ、朝比奈助けて」
「えーもうちゃんとやらないと」

放課後
数学の提出物を集め運んでいると校庭の花壇に1人の男子生徒がいた。
なにかをずっと見ている。

「どうしたんですか?」
ちらっとこちらを見てきた。

だけどなにも言わず去っていく。

…?

あの場所ってたしか去年向日葵が咲いていた場所。
もしなにかされていたら…と思い、急いで提出物を運んで花壇に戻った。

特になにもされていなかった。

なにを見ていたのだろうか。
今年またここに向日葵が咲く。

少しもやっと嫌な気持ちになった。
向日葵は先生の失恋の思い出が強い、できれば咲いてほしくない。

土を触り見ていたら
「先輩…」
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